「異年齢学習」から子どもたちが学んでいること【Aflevering.162】
今回は、海外で日本語を学ぶ子どもたちの学習サポートにおいて、異年齢で学ぶ魅力について記しておきたいと思います。そもそも海外での日本語学習というのは、同じ年齢であってもそれぞれの日本語の習得度が異なるため、学校での学び方とは違う学習形態が求められます。
そのため、私の日本語教室では年齢の近い子どもが同じ時間に学ぶ「小集団での異年齢学習」を取り入れています。それは、元々子どもの数が少ないということもありますが、限られた時間の中でなるべく広いつながり持ってほしいとも考えているからです。
以前、少人数学習のメリットをまとめました。少人数学習で大切にしていることについては、以下の記事を参考にしていただければと思います。
小学生1・2年生が一緒に学んでいるクラス
私の日本語教室では、日本語レベルが近いけれど年齢が異なる子ども同士が一緒に学んでいるクラスがあります。この異年齢で学ぶクラスでは、子どもたちの年齢に関係なく、漢字や読み書きの得意・不得意もバラバラです。
かつて私が日本語学習のサポートを始めて気づいたことがありました。それは、同じ年齢の子どもであっても、海外生活の年数や日本語に触れている時間が異なるため、「この年齢だからこのぐらいの日本語力かな?」という指標はほとんど合わないということです。そのため、子どもたち一人ひとりをよく観察して、どんなサポートが必要なのかを考えていく必要があります。
私の日本語教室は、主に6〜8歳の子どもが通ってくれています。そして小学校低学年のクラスでは、6〜8歳の子どもたちが一緒に学んでいます。例えば小学2年生の年齢で、漢字だけはズバ抜けて読み書きができるけれど、1年生の教科書を読むのが苦手な子がいます。また、小学1年生の年齢で、読むのがとても上手だけれど書くのが苦手な子もいます。さらに子どもたちが通っている学校が、オランダ現地校やインターナショナルスクールなど多岐にわたります。こういった、学校も日本の習得度も異なる多様なクラスの中で、むしろその多様性をうまく子どもたちの成長につなげたいと思いながらサポートをしています。
実際の授業の流れ
子どもたちが教室に入ってくると、私が宿題のチェックをします。それぞれの子どもにはそれぞれの宿題が出されているので、ひとつひとつチェックしていきます。この時点で、子どもたちは自分と違うことを学んでいる子がどんな宿題が出ているのかに興味があるようです。同じ宿題を点検する時よりも、他の子の宿題を見て「この宿題は何?」とか「この漢字は読める?」など、興味を持って話しているのが分かります。
次に日付や曜日の確認、学校であったことなどを簡単に話してもらいます。その後は、それぞれの習得度に合わせた学習(漢字や日本語の表現)をして、最後は一緒に教科書や別教材の文章を一緒に読み、その内容についてまとめます。
私の授業では、「国語の教科書」を使った学習と日本語のスキルを高める「スキルアップトレーニング」を主に取り組んでいます。それぞれの学年でどんなことを学ぶのかは、あらかじめ定められた学年ごとのカリキュラム表に合わせて進めていきます。そうすることで、日本語の学習を積み重ねた成果が子どもに目に見えて分かるので、継続的にコツコツと続けることが大切だということを感じてもらいたいと思っています。
子どもたちは今日何をやるのかを確認し、漢字の学習や日本語の表現力を高めるためのトレーニング問題に取り組みます。その時間に取り組むべきことが明確になっているので、子どもたちは自分のやるべき課題に取り組み、助けが必要であれば私に質問します。低学年の場合は、基本的にどちらかにつきっきりになりますが、子どもたちも少しずつ慣れてきて、やがて必要な時以外は自分で課題に取り組めるようになっていきます。
先日の授業では、小学2年生のA君は、1年生の漢字の確認が一通り済んだということで、2年生の漢字にステップアップしました。その子は、その日の授業からの帰る時、嬉しそうに保護者にそのことを伝えていました。私はその姿を見て、これからの日本語学習の自信に少しでもつながればと思いました。A君は、教科書についてはまだ1年生のものを読むのが精一杯ですが、漢字学習が進んでいることが支えとなり、今でも一生懸命文字を追いかけながら音読の練習をしています。また、それを見ている小学1年生のS君も、A君の勉強する姿勢を見て学習方法を学んだり、読めない漢字を教えてもらったりしています。時には、S君の方が読むのが得意なので、読むことに関してはA君の音読を助けてくれたりしています。
このように、年齢に関わらず「自分の得意とするところで助け合える」こと、また、「自分が苦手なところは素直に助けてもらえる」ことが子どもたちの素晴らしいところだと思いながら授業を進めています。
時には、異年齢であるが故に学習がうまく進まないことや、低学年ならではのちょっと騒がしくなったりすることも多々ありますが、その都度今何をするべき時なのかを確認し、学習に向かえるように声かけをしています。
みんなそれぞれの得意・不得意は違うという経験
同じ年齢で学んでいると、つい「漢字は自分の方ができる」とか、「自分の方が上手に読めている」など、マウンティングをしたがる時があります。しかし、年齢と日本語の力が異なる日本語教室の空間では、他の人と違うところがたくさんあります。むしろ、違いが当たり前にありすぎて他の誰かと比較することも難しいようです。また、比較したがる子に対しては、「みんな得意・不得意なところは違うし、それで良いんだ」と何度も何度も伝えます。すると、子どもたちは徐々にその考えが馴染んでいき、違うことをむしろ学びに活かそうとしてきます。それが先述した、得意なところで積極的に助け、不得意なところは素直に助けを求めるという行動につながっているように感じています。
漢字が得意な子もいれば読むのが得意な子、字を丁寧に書くことができる子など、いろんな子がいて良いのです。たとえ日本語全般が苦手でも、みんなをまとめるのが上手な子、工作が得意な子、面白い遊びを自ら作り出せる子、日本語の能力以外をとってみてもみんなそもそも違うのです。みんな一人一人違うんだから、人より苦手なことがあっても良いし、むしろみんな自分の得意なことで助け合ってほしいと常に伝えています。
そういった多様性の一部として異年齢である学習形態も効果は大きいと考えています。子どもたちの日本語で接する幅も広がり、その子自身の社会性も育む手助けになっていると思います。
まだまだ授業のマネジメントには課題もあり、私自身スキルアップを求められているところも多々ありますが、これからも精進して子どもたちの学習をサポートしていきたいです。
Eduble日本語教室の日本語学習についてご興味のある方は、以下の「Eduble探究型日本語教室の紹介」も参考にしていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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