大人が考えた「学ぶべき順番」よりも、子どもが考えた「学びたい順番」の方が大切な時もある【Aflevering.72】
昨日、日本から送ってもらった荷物が我が家に届きました。その中には、日本語教室で使おうと思っていた「将棋セット」も入っていました。そこで早速、授業終盤の自由時間で将棋好きの生徒たちに見せてみました。
生徒たちは嬉しそうな表情を見せて、それぞれ木の駒を持って打ち方の練習をしたりしていました。
夏休みを利用して日本に帰る生徒が、日本にいる祖父と将棋をしてみたいから授業に取り入れてほしいという要望がありました。そのため、授業の一部を将棋かつ漢字の学習として取り入れています。
将棋の駒の読み方と漢字をノートに書いてみる
将棋が好きな子は、常にどの駒がどう動くのかを聞いてきます。まずは駒の読み方と動き方を覚えるために、ノートに駒の名前と読み方を書くことにしました。
この時も私が順番を決めるのではなく、子どもたちにどの駒から書いていくのかを聞いていきます。
写真に載せているのは、ある7歳の生徒(第1言語は英語)が書いたノートです。
本当は、漢字を書いてその下に読み方を大きな字で書いていこうと思っていたのですが、「まずは漢字だけでノートにきれいにおさまるように書きたい!」とのことだったので、こんな感じになりました。
動き方を書くアイデアは生徒から出されたものです。
重要なのは、ワクワクしながら書いたことが記憶に残っているため、駒の読み方が段々と自分で分かるようになってきたり、漢字も簡単なものであれば書くことができるようになっていることです。
これまでの授業で習った1年生で習う漢字も、身の回りのものをあらわすものが多く、生徒の学習したいタイミングでイラストを見せながら取り入れたので、今でも忘れずに書くことができます。そのため、興味を持って書いた文字は、印象に残りやすく覚えやすいのかもしれません。
漢字を学ぶ順番も本人の興味のあるものから
子どもからすると、どの漢字が何年生で習うものなのかはあまり関係ありません。自分の生活に密接しているものから学ぶことで、漢字を覚えていけるのだと思います。
だからこそ、私の日本語教室では学習の順番にあまりこだわり過ぎず、子どもたちの興味・関心のあることも学習内容に活かすようにしています。
あおぞら教室での活動も漢字で書いてみることで、生徒には記憶に残りやすくなると思って振り返りをしています。
生徒の興味・関心「も」学習に活かす
授業を作る前に、私はいつも教室に来るまでの子どもたちが見ている世界を想像しています。
朝起きて、ご飯を食べて身支度を整えて学校へ行く。学校に着いたら勉強したり友達と遊んだり、時には喧嘩をして悔しい思いをしたり、友達と楽しくて大笑いする。
いろんなことを学び、ものすごいエネルギーを使って帰ってくる。
さあ、これから日本語教室。
子どもたちはどんな気持ちになるのでしょうか。
「めんどくさい。行きたくないな。」と思っているのか、
「よし!今日は日本語教室!今日は何をやるのかな〜。」と思っているのか。
子どもにとって好奇心は学びの原動力です。退屈だと思っている時の子どもたちの表情はてんで何も吸収していないように感じます。しかし、自分の興味のあることはグングンと吸収していきます。
例えば、少し無理矢理気味に取り組んだ「カタカナ」よりも、子どもたちが自分からやりたい!と言った「漢字」はよく覚えています。また、ノートの書いている時も「あの漢字何だっけ?」と言いながら、自分でかける字は漢字で嬉しそうに書いています。
その一方で、学校で全部自分の好きなことだけを学ぶというのは難しい面もあると思います。私も公立高校の教員でしたが、他の人と社会生活をしていくために必要な読み書き計算(高校はもう少し複雑な科目になりますが)などのスキルは、嫌でも身につけないといけないものです。
しかし、私の今の立場は学校の教員とは少し立場の違う日本語講師です。
学校ではない場所で学ぶ場合、子どもにとっては「なんで学ばないといけないのか」という疑問が常に付きまとうはずです。
もし、子どもたちが「つまらない」と感じてしまっていたとしたら、子どもたちの日本語学習もその時間すらも無駄になってしまいます。
もちろん私の授業では、教科書を読んでノートに内容をまとめたり、日本語スキルを伸ばすためのトレーニングは必ず行いますが、自分たちが日本語で活躍できるためのちょっとした実験や遊びの時間を大切にすることによって、子どもたちはいきいきと学ぶことができると考えています。
だからこそ、子どもたちが日本語で興味があることを活かし、それを日本語学習に繋げるようにしています。今回の将棋に関しても、同じことが言えると思っています。
学びを広げる準備を
今の漢字学習は、生徒が興味のあるものに限定されており、複雑な漢字はまだ学習していません。
興味関心だけで学習を進めてしまうと、子どもの世界を広げられないこともあり、時には周りからの働きかけで世界を広げることも必要です。
漢字学習について言えば、今後の課題はどの生徒にも小学生で学習する漢字を習得してもらうことが目標です。
そのために、漢字の成り立ちや漢字のつくりに注目して、それぞれの漢字に表されている意味を理解して、他の難しい形の漢字の理解につなげていけるような学習サポートをしたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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