やっとのこと乗り越えた今日は、ものがたりの始まりである【WEBライターの読書レビュー】
毎日いったい、なにしてる?
はずかしながら、中学生の頃から小説家をめざしていた。
高校生、大学生、社会人と年齢を経てもあきらめきれない。もちろん、今でも。
ひまさえあれば、ネタを書きため、文章をつむいだ。
大勢と交わり、人間関係を築くのが苦手で、マイペースでゆったりと本と向き合っている時間は幸せだった。
本を作りたいと思ったのは一体いつのことだったか……。
読む側から創作側になりたいと思ったのは、本の虫となってわりとすぐの頃だ。
物語のつくりかた
ストーリーテリング
ストーリー思考
ものがたりと名前のつくものは読みたくてしかたなかった。
わたしのつたない文章が少しでも上達するのではないか。
そんな淡い期待をこめて読みあさっていた。
本書『『物語』の見つけ方』は駅近の大型書店でタイトルに惹かれて手に取った。
はじめにを少し読み、胸がつまった。
毎日がただひたすらに忙しい。
でも今日なにした?と考えると答えられない。
色々したけど、これといっては……。
ああ、楽しかった!と思って今日を締めくくるために。
本書から夢中になれる方法を学ぶことにした。
今までのできごとを振り返るには時間がかかる
はたして、今のわたしに本書のレビューが書けるのか。
わたしにとって、過去を振り返る行為はものすごくハードルが高い。
本書は物語を通して、自分の人生と向き合う考え深い本。
ものがたりに必須の目的設定の方法、構成、キャラクターなど複数の要素から自分の人生を全力で無我夢中で生きていく方向を指し示す羅針盤。
読みやすい文章だが、内容が深い。
今までの人生と照らし合わせながら読み進めるため、読了まで時間がかかった。
慌ただしい日々に読み進めるのはもったいない。
思わずため息をつきたくなるような雨の日。
予定がキャンセルされてしまってぽっかり空いたなにもない日。
落ち着いた夜。
ゆったりとコーヒーでも飲みながら、じっくりと今までの日々と向き合うのにふさわしい本だ。
点と点をつなげて線にする。迷っていた人生のかたちが見えてくるかも
おもわず唸る文章と出会った。
今まで、こんな仕事をしてきましたよ。
今はこんなポジションにいます。
過去や現時点は、星のまたたきである。
キラリと輝くが、単体であちこちで散らばって光っている。
一貫性がなく、つながりに見えない。
美しく光るいくつもの星をひとつなぎにしてようやく星座となる。
そしてものがたりがついてくる。
そう、ものがたりは後づけなのだ。
わたしたちの人生においても同じで、
過去、様々に
がんばったこと
やりきったこと
中途半端に終わってしまったもの
失敗して二度と挑戦したくないこと
すべてはわたしたちの人生という夜空で星として輝いている。
今は、あちこちで光り輝くただの星たちを、これから意味づけ、独自の星座に作り替えて、ものがたりを与えていく。
異次元の技ではあるが、他の誰にもできない。
あなたにしかできない最大の仕事だ。
毎日を夢中になって生きていくとは、
自分だけの世界を創造していくこと。
とても大きな気づきを得た。
今日、何してたっけ?はいつか財産になる
なんのために生きているのかわからない。
理不尽に怒られるために仕事してるんじゃない。
仲のいい友人たちとビールを飲んで愚痴を言い合うのがいい人生?
二日酔いの朝は最悪で、もうお酒なんか飲まない!と毎回誓うのに……
これからの未来に不安を持つ方たちに読んでほしい本書。
あの日の苦しみも悲しみも消化されて、今になる。
立ち上がることもできずに、
べこべこにへこんだ夜だって、
思わぬ嬉しい知らせに飛び上がって喜んだあの日だって。
忘れた頃に全部役に立って、
ああ、わたしの人生思わぬところで繋がったなと感じる。
もしかしたら、その感覚を味わいたくて、
わたしたちは毎日必死に生きているのかもしれません。
<評者/よしの>
【書誌情報】
「物語」の見つけ方 夢中になれる人生を描く思考法
たちばな やすひと(著)
インプレス
2021年11月
著者note