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吉村トチオ
2020年7月15日 21:20
真っ白な部屋があった窓が1つ ドアが1つ窓からは駐車場と向かいのマンションが見えるドアはずっと閉ざされたまま窓をずっと眺めていた駐車場で遊ぶ子供や いろいろな車や 夕日や 雨や夜には こそこそと泥棒があらわれる僕だけが泥棒を見ているのが愉快だったいつまでもこのままだと思っていたこれまではなにも起こらなかったからだ夜 泥棒と目が合った驚いた当たり前だけ
2020年5月12日 20:15
朝 起きる一階へ降りて 様子を窺う母は 昨日と 変わりなかった黒い砂塵が姿を覆い顔が見えない 手足が見えない どこも見えないしかし いつものようにふるまう朝食を準備している自分の姿にも気づかず 今日は早いのね声をかけられたどう返答したものか わからず黙る食べないの声をかけられているそんなもの 食べられたものではない皿の上には 黒い砂
2020年5月11日 21:23
2つがあった2つは1つと1つになり 憎しみを以て対立した乙は憎まれ 甲は憎んだ憎み憎まれの末 乙は火となった乙は手あたりしだいに焼き尽くし 甲を滅ぼそうとしたその企ては しかし うまくはいかず他の因果で 甲は消えた火となった乙は しかし 存在をつづけた彼は 甲の子供たちを ねらうことにした時は流れ 子供たちは 沢山となったいまだ憎しみはおさまらぬリビング
2020年5月10日 17:46
林に分け入り 1本の樹をみるごつごつとした表面に 手をはわせる清潔とはいえないが いやなものではない耳をそっとあててみる柔らかな肉びらが 樹の曲面にそって形をかえる硬くてもろい心地がする音は なにもきこえないしばらくしてから首を曲げてはなそうとするが どういうわけかはなれない両手でつっぱねようとするだめだ両手もはなれなくなったどういうつもりだ
2020年5月10日 17:43
風が好きだ夏に吹く涼風ではなく南国の楽園に吹く風ではなく荒々しく咆哮する風が好きだ心地よさはいらない安心はいらない気の抜けた背に絶望を吹きつける風が好きだ高速道路で夏の夜電気を帯びて吹きつける怒号混じりの風が好きだいつ止むともしれない風が夏の長草を切り裂いて 冷たい雨粒を蹴散らして生温い街の外灯を吹き消してそうしたときにはあなたはとう