林柏和「たとえその愛は孤独だとしても」一言感想文
作者は中国福建省出身で、日本語ネイティブではない。しかし、だからこそできる表現がある。日本語として違和感を感じるところもあるが、ならば良くないかというと、とても、いい。その言葉でしか成しえなかった表現がそこにある。日本語の「正しさ」に潔癖になっていては、得られない魅力だ。人は時に言葉の正しさを求めるがゆえに、言葉の可能性を奪ってしまうことがある。作者の言葉の感性は、この「正しさ」から解き放たれ、言葉の本来持ちうる豊かな意味を復活させることに成功している。本の冒頭は「愛」についての一節から始まる。作者の日本語との出会いを描く、詩的な文章である。エッセイ「たとえその愛は孤独だとしても」は、沖縄を訪れた作者が、故郷と異郷の交錯する中にいる。素朴な旅の情景であるようで、同時に日本、沖縄、中国が重なりあって、幻想的な雰囲気を感じさせる。小説「手のひらに、明かり。」は、短編ながら日常の中の特別な一瞬をあたたかく描いている。
この本は文学フリマ東京38で手に入れた。
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