52ヘルツのクジラたち【読書のきろく】
声なき声に耳を傾けたくなる、自分の心の声に耳をすませたくなる
全国の書店員がいちばん売りたい本を投票で選ぶ「2021年本屋大賞」、今年の大賞受賞作、読みました。
本屋大賞は気にしてるけど、いつも受賞作が決まってすぐ読んでいるわけではありません。「本」は、出会いも楽しくて、紹介してくれる人や見かけたきっかけで、読む優先順位が決まります。
今回の受賞、そして、作家の町田そのこさんのことを知ったのは、4月16日に届いたメールでした。マヤ暦を学んだ、シンクロニシティ研究会が発行するメルマガです。
小中学生時代にいじめに遭い、辛かった時に小説に救われた。だから、自分も小説で誰かの後押しがしたい。そんな想いが根底にあり、大好きだった作家の死で、本格的に小説を書くようになった。
そんなインタビュー記事を引用しながら、町田さんの印象が読み解かれていました。作品の背景にある作家の生き様を知ると、興味が深まります。しかも、同級生で、福岡県在住。さらに、マヤ暦で読み解いた本人の特性とこの作品が生まれたタイミングが、僕との関係性が強く、さらに惹かれていきました。きっかけや、ご縁のおもしろさを感じます。
この『52ヘルツのクジラたち』でも、「縁」やきっかけは、物語の重要なカギとなります。いい意味でも、悪い意味でも。
心と身体に大きな傷をつける虐待をするのも人、そこから救ってくれるのも人。助けてと、救いを求める声を発することができるのか、その声は聴いてくれる誰かのもとに届くのか。
タイトルになっている「52ヘルツ」は、クジラの鳴き声の周波数のこと。通常のクジラは39ヘルツの高さでコミュニケーションを取っているため、52ヘルツの声は他のクジラには聞き取ることができないそうです。52ヘルツでどれだけ叫んでも、誰にも届かないし、相手の声も聞こえない。普通に生活している空間では、想像もできないほどの孤独感だと思います。
閉ざされた家庭の中で繰り返される虐待や、心に抱えた傷は、周りからは気づきにくい。この作品は、52ヘルツのクジラの声に乗せて、声なき声を届けてくれます。世の中に実在しているその声を受け取るには、まずはその存在を知ることが必要です。そして、聴こうとすること。
同時に、自分自身が抱える心の声にも、耳をすませて、まずは自分が気づいてあげたくなる。
そんな作品でした。
どんな人たちが、どんな出会いを経て、何を感じていくのか。ぜひ、物語の中で、人の雰囲気や土地の空気と一緒に味わってみてください。
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2021年本屋大賞にまつわるインタビュー記事は、こちらです。
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