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【詩】ある晩秋の朝に
澄み渡る晩秋の朝
空には刷毛で履いた薄い雲がかかる
透明水彩で描かれた空だ
たっぷりの水で溶いた絵の具の青
心がどこまでも吸い込まれていく
高く、遠く
頬を刺す空気の冷たさを感じながら颯爽と歩く
乾いた靴音が心地よい
色づいた木の葉が敷き詰められた遊歩道は
絹糸で織りあげられたタピストリーになり
木立の陰に角を持った美しい幻獣が
見え隠れしている
その蹄の音
その息づかい
獣のたてがみが揺れる時の
金色の残像がふと見えた気がした
つめたい朝の玲瓏な空気は
重なり合った次元の向こう側を垣間見せる
ヴェールに覆われた向こう側の世界が
沼をかすめる魚影のように
束の間浮かび上がって消えてゆく
なにかふしぎなかたちを心に描いて、
天の高いところに吸い込まれていった
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