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『地磁気逆転と「チバニアン」』(菅沼悠介 著 講談社 2020)読書感想文

地質年代に千葉を冠した「チバニアン」という名称が付けられたことは記憶に新しい。本書は「チバニアン」の申請チームの中核メンバーであった研究者による一冊だ。

どうしても「チバニアン」に目が行ってしまうが、本書の大部分は地磁気に関する解説に割かれている。第1章「磁石が指す先には」、第2章「地磁気の起源」、第3章「地磁気逆転の発見」、第4章「変動する地磁気」は地磁気に関する基礎知識や周辺知識について地球科学の歴史に沿って書かれている。地球内部の姿が地震波の研究からどのように明らかにされていったのか、地磁気の逆転がどのように発見されたのか、といった歴史は面白かった。

第5章「宇宙からの手紙」と第6章「地磁気逆転の謎は解けるのか」では、「チバニアン」認定へと繋がる著者・菅沼氏の研究について書かれている。ここでは特に、ベリリウム10などを用いた残留磁化や年代測定に関する著者らの先端的な研究について述べられており、研究現場の迫力が伝わる内容だった。

第7章「地磁気逆転とチバニアン」では、「チバニアン」申請・認定の経緯が記されている。この章で最も印象に残っているのは、「チバニアン」申請に関わる諸活動へ抗議し続けた「団体」の存在だ。その「団体」による抗議活動は申請の障壁となったらしい。著者は「団体」について、「また別の機会に記録に残したい」と書いており、詳細は語られていないが、本章の中で何度も言及されているので、だいぶ揉めたのだと推察する。

「チバニアン」というセンセーショナルなトピックスを通して、地磁気について学べる一冊であった。地球科学に興味のある方にはおすすめ。

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