京都で会いましょう~前編~
昨夜、実写の『BLACK JACK』を観て、慌てて本棚から『BLACK JACK 1』を出して来て読んだところ、恐ろしいことに漫画のブラック・ジャックが高橋一生にみえてしまって、そんばかな!露伴先生以外にブラック・ジャックにも見えるだなどと、あってはならない高橋一生、と愕然とし懊悩している吉穂です。
私のブラック・ジャックの脳内再生はずっと大塚明夫さん(声だけ)だったのに……なんということ。アッチョンブリケ!!
京都の話です。
6月某日、「京都サミット」が開催されました。
「京都サミット」というのは、参加者がその特別な日につけていた呼称で、我々はそれはそれは、その日を楽しみにしていました。
集結した首脳陣(笑)は、dekoさん、Ryéさん、ホシガラスさん、そして初日の夕食に参加してくださった穂音さん、私。
旅行に際し、尽力してくださったのは主にdekoさんとRyéさんです。dekoさんはお住まいが比較的京都のお近くで京都の土地柄にも慣れ親しんでいらっしゃる関係から、Ryéさんも京都にはご縁があったとのことで、おふたりがアテンドを買って出て下さり、宿泊先決定や日程調整、各位への連絡等々、細々したお気遣いをしてくださいました。Ryéさんはすばらしい旅のしおりを作成してくださって、感激ひとしおでした。
ホシガラスさんも京都には時折いらっしゃるご用事があるということで、京都に馴染みがないのは私・吉穂だけ、という状態。
私は京都・・・おそらく20年以上ぶり。
魔境・京都でさっそく迷子
当日。梅雨入りしたばかりの京都駅に降り立ち、集合場所へ、と思って駅の外に出たとたん、もうそこは魔境でした。
なんとなれば、私のスマホの地図と、駅の立て看板の地図が全く違っていたからです。よくある話ですが、スマホの地図は方位が逆になっていることがありまして、南北が逆になっていたため完全に方向を見失った私。
京都は碁盤の目になっているはず。歩いていけばなんとかなるんじゃね?と思い、少し歩いてみたのですが、やはり道を間違え、入っては出、出ては入ってを繰り返すうちに、時間ばかりが過ぎ、結局みなさんに迎えに来ていただきました。なんてこった。
dekoさんとRyéさんとは、吉穂堂でお会いしたことがありましたが、ホシガラスさんとは初めてお会いします。迷子になって遅れての登場ということもあり、大変申し訳ないことをしました。
なんとか会うことができ、荷物をホテルに預けてさっそく出発です。
最初の行き先は、昼ご飯。四条方面にある『ちもと』です。
noteでやり取りがあると言っても、普段から会っているわけではないメンバーなのに、もう昔からこうして会っていたかのようにいきなり話が盛り上がります。昔ながらの町家風のお店の風情も良く、昼懐石も美味しいのだけれど、とにかく会話が弾んでとまりません。
いつまでも話していたいところですが、移動することになりました。
まずはさっそく、この旅のメインイベント、「恵文社」さんへ出発です。
「恵文社」で夢心地
ことの起こりは、この出会い。
dekoさんが吉穂堂にいらしてくださったとき、「実はRyéさんとお会いしたんですよ。京都に恵文社さんという本屋さんがあってね、そこに行ったんです。ここ(PASSAGE)に雰囲気が似ているお店で。ぜひみらいさんと一緒に行きたいです」と言ってくださいました。
PASSAGEに雰囲気が似ている、というのですが、共同書店ではなく、れっきとした書店だと言います。共同書店ではないのに、PASSAGEに似ているってどういうことなんだろう、と興味津々でした。しかも京都市内の目立つような場所ではなく、郊外にぽつんとあるというではありませんか。どんなところだろうと胸を高鳴らせました。
次にRyéさんがいらしてくださってお会いした時にもその話になり「そうなんですよ!とっても楽しかったですよ。ぜひとも一緒に行きましょう!」ということになり、そこは旅の専門家&企画立案に長けたおふたり。さっそく日時を決めましょう!と、あれよあれよと「京都サミット」の開催が決まりました。日時のご都合がつきそうな方に声をかけてもくださって、ホシガラスさんも参加いただけることになり、感激ひとしおです。
お話を聞いて恵文社さんに行ってみたい、と憧れたけれど、おふたりが計画してくださらなかったら、実現しなかったと思います。
そして「恵文社さんに行く」というのが最大の目的、という、noteの創作仲間ならではの旅行が実現しました。
本屋さんに行くためだけに京都に行く、ってなかなかないぞ。うん。笑
「恵文社」さんは、京都でも京大などが近い学生さんが多いエリアにあります。Ryeさんは京都のカルチェラタンっぽい場所、と表現されていました。さすが語学の達人、Ryéさん。
京都の中心部からは、電車を乗り継ぎます。
ふつうの本屋さんとなにがそんなに違うのか、と申しますと、まず、本の並びが独特です。
普通の本屋さんは、文庫、単行本、雑誌、絵本、参考書、などと分類されていて、文庫などは基本作家名の「あ」から並べたりわかりやすいように配置されているものですが、そういう分類は一切なし。
特集コーナーには書店が選んだ本が置かれ、それも今世間で売れている本などではなく、テーマ別だったり、個人(書店員さん?)の選書だったり、バラバラです。たとえば「天文学」という棚には、文庫も単行本も雑誌も、天文学に関係しそうな書籍が、新旧取り混ぜておかれています。
学生街らしく、おそらく大学で参考文献に使うであろう本も棚に紛れ込んでいます。棚にも平台にも、本当に趣味で集めたとしか思えない選書だったり、個人で作った本、いわゆる文フリで売っているような本が普通の本と同じように並べられています。
個人出版や小さな出版社の本も商業出版の本の隣に普通に置かれていて、とにかく「商業出版本」だけではない、本屋さん。
なるほど、これが「PASSAGEに似てる」の所以なのですね。納得。
感動したのは、私のバイブル・河合隼雄先生の『中空構造日本の深層』の増補版の新刊本が平積みで目立つ位置に置かれていたこと(ごくごく最近、この旅の前々日くらいに出たんです)。マジか!横浜の本屋では目立つところにはなかったぞ!さすが京都だぞ(河合先生は京大卒、京大教授)!
他にも、選び抜かれた渋い漫画が集められていて、なんと『PINK』が平積み、そして岡崎京子の漫画がほぼ網羅。さらにはなぜか三島由紀夫の文庫本がずらっと勢ぞろいしていたり(三島だけ・・・)。他にも「これって絶版本じゃないのか…?」と思う本が普通に売られているなど、いったいどこからどう集めてきたら、こんなラインナップになるんだ、と叫びたくなる、私にとっては超アミューズメントパークでありました。
絵本も、なじみ深いものから見たことのない絵本まで、バラエティに富んだラインナップ。京都にまつわる本だけを集めたコーナーもあり、地元色にも溢れています。
なんなん!このオリジナリティ!
しかも、ところどころに置かれている雑貨がこれまた可愛すぎる・・・
今思い出しても興奮冷めやらぬ本屋さんでした。1日居たい、いや、1週間通い詰めたい素晴らしさでした。
いやあ、すごい本屋さんだった。
夢見てるみたいだった。笑
おおまかな集合時間を決めて、それぞれに本屋さんを回りました。
ぐるぐる回遊する私と出会ったみなさんが、口をそろえて「みらいさん、目がキラッキラしてますね!」とおっしゃいました。
でも私ばかりではなく、目と目が合うとみんな、夢から覚めたみたいな顔をしていましたよ。笑 ホシガラスさんは、書店の中で会った時にはすでに沢山本をゲットされていました!
さぞかし沢山本を買ったんでしょう、と思われたと思いますが、私は迷い過ぎて、そして本屋さんじたいが楽しすぎて、買ったのは1冊だけでした。
最初に設定した時間を過ぎても、もう少し見ていたい気分だった我々は、時間を延長して待ち合わせ時間を再設定。
いつまでもいたいとはいえ、そうもいっていられず、名残を惜しみながら恵文社さんを後にしました。
京都に行く前、私はこーんなことを書いていました。
すまスパの収録でも、燃え尽きていて何もやる気が出ない、みたいな話をしていたのですが、この日、この本屋さんに行ったことで、気持ちがずいぶん変わりました。
実は文フリの後、買い物のついでにぶらりと書店を訪れたりすると、こんな風に思うようになっていたのです。
「ああ、本がたくさん並んでる。日本だけでもこんなにたくさんの作家さんがいて、こんなにたくさんの作品を書いて、活躍しているんだ。
たまたま自分の本をつくりたいと思って作り、それを売り、買っていただくなどという僥倖に恵まれたけれど、この本物の世界には入り込む隙間もない。私がやっていることは、自己満足の極致。それでいいと思っていたし、それでいいけど、なんだか虚しさも感じるな」
なんとなく「ここに置いてある本以外は仲間外れだよ」と言われているような気がしていたのです。
でも、恵文社さんに行った時、そこにあったのは「本が好きだ!自分も表現したい!それでいい!それがいい!」という全肯定のエネルギーでした。そのエネルギーをこんなふうに受け止めてくれる場所がある、ということに、得も言われぬ感動を覚えました。仲間はずれがいなかったのです。
PASSAGEもそういう場所なのですが、普通の書店さんでも、こんなふうに書いた人と読む人が直接つながるような書店というのがあるんだと知り、ものすごいパワーをいただきました。
吉穂、復活。
旅はするものですね。
前編/了
まだまだ旅は続きますが「前編」はこれにて。