吉穂堂で会いましょう#7 吉穂堂を飛び出して~日本現代美術私観/落語『北斎の娘』を聴く会~
dekoさんとお会いしました!
京都でもお会いしましたが、吉穂堂に来てくださったのは、ほぼ1年ぶり。
今回の最大の目的はこれ。
落語が好きだけれど観に行ったことのなかった「エセ落語好き」の私。その思いのたけはこちらにも。
こちらの記事で公言していた通り、ついに「ナアジマさんのお身内の落語を聴きに行く機会」が訪れた、というわけです。
dekoさんが公演に行くとお聞きし、ぜひご一緒に、ということで、だいぶ前からチケットを取って楽しみにしていました。
当日、昼頃東京駅に着いたdekoさんと待ち合わせ、19時からの公演までに、吉穂堂とMOT(東京都現代美術館)に行くことにしていました。公演のある深川江戸資料館に最寄りの美術館で、ちょうど「高橋龍太郎コレクション」をしているので観たい、とdekoさんが提案してくださったのです。
前の日から楽しみで眠れなかった私。遠足の前の日はいつもそうです。結局は寝るんですけど、あれこれ考えて寝付けないタイプ。
最も懸念していたのは、そう、あれ。
極度の方向音痴。
京都でもいきなり迷子になったお話をしたことがありますが、地図が読めない、というより方向感覚がおかしい。笑・・・いや!笑いごとではありません。京都であれだけしっかりとアテンドしてくださったdekoさんに恩返しをしたいのに、うまく街歩きができるでしょうか。内心、それが心配でした。
当日は、dekoさんと会った瞬間からお話止まらず、とにかくずっと喋っていました。いつも、話せば話すほど話したくなる不思議。
昼食後、SOLIDAとBisに行き、カフェでお茶をして、その後、清澄白河に向かいました。吉穂堂のある神保町からは半蔵門線で10分。いい感じの流れです。
荷物を置くためMOTの前にホテルに寄ることにしていましたが、土地勘がないってほんとに恐ろしいことです。地図上では近く見えますし、ホテルが半蔵門線の清澄白河から15分、東西線の東陽町から7分、という立地だったため、清澄白河からも行ける、と思ってしまったのが良くなかった。場所のわからない15分は結構あります。やはりまっすぐ東陽町に向かうべきでした。これは本当に反省です。dekoさん、ごめんなさいね。
ひとまずホテルに荷物を置き、それからMOTに向かいました。
東京都現代美術館MOT「高橋龍之介コレクション~現代美術私観展」
dekoさんに「この美術展が観たいな」と提案していただいたときの私は、開演まで時間があるし、ちょっとスキマ時間にちょうど良い、くらいの気持ちだったのですが、おいおいおい(笑)。とんでもないことでした。見応えたっぷり、いつまでも観ていたいような展示でした。草間彌生や李禹煥、会田誠、奈良美智、村上隆、山口晃・・・名前を知っている方はわずかでしたが、新進気鋭の芸術家たちの作品がずらりと並んでいます。
写真がOKだったのです。しかし、写真を撮ることも忘れて見入っていました。高橋龍太郎さんのことを、私は寡聞にも存じ上げませんでしたが、精神科医で日本現代アートのコレクションをされている方だそう。「1990年代以降の日本現代アートを中心に、主要な作家の作品はほぼ網羅され、所蔵作品は2000点以上となる」(ウィキペディアより)。
美術展というと、古いものや有名なものにばかり目がいきがちですが、現代の美術、今まだ生きていて活躍している人の芸術を観る機会がなかったので、本当に新鮮で素晴らしく思いました。現代美術を蒐集することって勇気がいると思うのです。それがどれだけの価値をもつものか、見極める目が試されるわけですから、怖いことだろうと思います。そしてなにより、この作品を普段どうやって保管しているのか、気になるところでした。進撃の巨人の像のような巨大な木の彫像(組み立てらしい)もありましたし、部屋いっぱいの革布に描かれた絵や、天井まで届く像、車、そういったものが迫力満点に展示してありました。
しかしなにより私の目をひいたのは、実は、鑑賞に来ていたお客様です。
芸術を志しているかたなのでありましょうか、服装がアートだったりアヴァンギャルドだったり。全身黒服なのに芸術家のオーラに包まれていたり、絵を観る立ち姿が美しかったり。そんな男女がひしめいていました。これもまた現代美術の展示の一部なのかと思ったほどです。
そして素人目の感想ですが、「震災」が与える影響、自然災害の中でも日本における地震というものが芸術に与える影響が多大だということに、瞠目しました。直接体験してもしなくても、日常を破壊し、自身と世界が崩壊すること、再生することが、芸術家の感受性に与える影響は、甚だしいものだと知りました。コロナ禍も大きな影響があったと思いますが、考えてみれば東大寺の大仏などの仏像や建築物もまた、災害や飢饉といった人間の力ではどうにもならない事象に対する祈り、鎮魂や再生への祈りと言ったものからできています。人間の力の及ばぬ事象が芸術に密接に繋がっていることを強く感じました。
前知識や先入観なく観たために、気づいたこともありました。私が「おお、これはいいなあ」と思う作品、思う作家さんは、生年や活躍期をみると、なんと自分の年齢に比較的近い方だったのです。逆に「自分とは少し感覚が違うな」と思うのが、今20代や30代で活躍されている若い方の作品が多かったのです。
ああ、私はやっぱり、年寄りなんだ!とはっきりくっきり絶望しました。
それは「慣れ」なのかもしれません。「見慣れ」ていること、その「馴染み」に引っ張られる自分。
最後に、全体を通して時代を経ていき今に近くなるにつれ、「身体」がどんどん失われていっていることと、「食べる」ことへの感覚、違和感が際立っているように感じました。面白かったです。
さて、思いがけず新鮮な芸術を摂取して満足し、そろそろ当初の目的である公演に向かいましたが、美術館を出るころには日が暮れていて、会場周辺でも道に迷い(ごめんなさい!)、結局dekoさんに導かれて、会場に到着。周辺にカフェがあったら一服、と期待しましたが、カフェの終わる時間も早かったようで、レストランは予約なしは無理。
結局、こちらでレモネードをいただきました。
レモネードがとっても美味しかったです!
閉店間際だというのに、お客さんが次々訪れ、珍しい蜂蜜をご購入されていました。知る人ぞ知る店だったのでしょう。なんか無暗に「東京」を感じました。
林家あんこ『第二回北斎の娘を聴く会』
完売御礼、満席でした。
実は、開演前にramさんと志麻さん親子に会えたらと思っていたのです。
先日ついにオープンしたおふたりのハンドメイドのお店で、狙っていた「ラタンキャリー」を購入。その受け渡しが出来たら、と思っていたのですが・・・
レモネードの後、到着がギリギリになってしまって、あたふたと席に向かい、開演前にはお会いできず。
途中休憩の間にお会いして、無事、受け取ることが出来ました(写真はのちほど)。
さて、『北斎の娘』。
私は今回、ほとんど前知識なしで臨みました。
しいて言えば、昨年のgeekさんのこの記事を読んで、密かに憧れの念を募らせていたので、どのようなものかは漠然と思い描いてはいました。
が。百聞は一見に如かず。
やはり本物の迫力というものは、観なければわからない、伝わらないんだなと思いました。
実は、翌日に開催されていたX(旧Twitter)の「スペース」であんこさんがお話されていたのもこっそり聴きましたが、第一回目の時は三部構成だったものを、登場人物などを絞り込むなどして前後編にブラッシュアップしたのだそうです。
私は第一回は聴いていませんが、途中に休憩が1回というのは、ちょうどよいように感じました(勝手な素人の感想です)。
聞きやすい声、聴く人を離さない笑いと話術。そしてなんと申しますか、「迫力」がありました。「気迫」というのでしょうか。
凛としていて、でも親しみのある江戸っ子であり、プロ意識確かなオフィシャルな「応為」と、もうちょっと粘りのあるプライベートの「お栄」が絡み合って絶妙でした。素晴らしかったです。
そしてまた、私はここでも聴衆に注目。
江戸の落語、江戸の観客。ごひいきのお客さまによって育まれている文化というものを感じました。
田舎者からすると、墨田区でも江東区でも「さして変わりなく江戸の風情を残したエリア」という感覚なのですが、そこは全く違うトコ。田舎モノが叱られ馬鹿にされるポイントなのだなと心しました。
そしてなにより、本当に落語が好きな方がいらしているんだなと、改めて感じ入りました。情感が豊かで、物語に入り込み、素直に笑い、泣くという「感情をありのままに」受け止める感受性の強いお客様が多いこと。私も存分に心を動かされて渦の中だったのですが、面白い場面では屈託なく笑い、ラストに感動しすすり泣く声に、非常に感銘を受けました。
そして、三味線の「小すみ」さんがまた素晴らしかったです。弦楽器、打楽器、管楽器でもあるとおっしゃる三味線の音色を堪能させていただきました。尺八の第九も味わいがありました。私は三味線のことは全くわかりませんが、軽妙なお話を差しはさみつつの演目に、ひとつ残らず心惹きつけられました。
いつまでも終わらなければいいのに、と思う会もついにお開きとなり、ロビーでgeekさんといぬいゆうたさんにご挨拶できました。おふたりにお気遣いいただいたのにわたしときたらぼんやりで、大変失礼いたしました。
余韻冷めやらぬまま、ホテルに戻るdekoさんを見送り、ramさんと志麻さんと途中までご一緒しながら帰りました。いやこの帰り道でも同世代ramさんと思いがけない少女小説話に花が咲き、すっかり盛り上がってしまったのですけれども。
ramさん、志麻さん、ありがとうございます!
なんとも、盛りだくさんな1日でした。
dekoさんは翌日、本当はこの日合うはずでしたがご都合が悪くなってしまったローローさんと、お会いすることができたとのこと。良かった✨
dekoさん、沢山お話しできて、一緒にいろんな種類の感動を味わえて、本当に嬉しかったです。
ありがとうございます!!
また、お会いできる日を楽しみにしております・・・!!