仕事の肝「神は細部に宿る」
髪を切りに行った。私のhair cutは一通りであれば10分で済むはずだが美容師さんは20分以上の時間をかける。
一旦切り終わった私の頭を幾度となく違う角度から見ては、はさみで丁寧に調整していく。そしてシャンプー後にももう一度と念入りである。
少し離れて全体を俯瞰的に見たり、近づいて細部を見たりする様子からプロとしてのこだわりを感じた。
この姿を見て「神は細部に宿る」を思い出した。
私はこの言葉を20年ほど前に当時のD社長から言われ、それ以来いつも意識するようになった。
今回はこの言葉に関して、私の経験と解釈をご紹介します。
D社長について
これらがD社長就任の知らせを聞いた時のグループ他社の経営企画スタッフの言葉でした。実際に、いくつもの「〇〇ハラ」で問題になりそうな人でしたが。
その当時私は経営計画課長。毎日のように社長室に呼ばれ、組織、制度、課題、方針について聞かれ、毎回3つ以上の指示が出されました。いつも2時間ぐらいは「拘束」されていました。
「神は細部に宿る」とは?
ある課題の推進計画の説明をしたときです。
説明の途中からD社長のイライラ感が伝わってきます。癖の〇〇揺すりが目立つようになってきました。
私は予想される質問への回答に頭フル回転でしたが、開口一番が
と答えたものの、それでどこがどう良くないのかピンときませんでした。
持ち帰ってじっくり考えた結果、「全体的な完成度が低い」という解釈に至りました。
ひとつの物事を実行するとき、大義名分や方向性が合っていることは当然としても、細かくても大切なポイントが多数あり、それらへの思考が行き届いてないことを指摘されたのです。
その結果、D社長には仕事のレベルとして低く見えたのでしょう。
物事を実現するとき、最初から予想される点よりも、むしろちょっと引っ掛かる程度の小さなことがネックとなることがあります。
それは、反対する人にとって格好の指摘材料になってしまいます。
社長は物事をやり切るまでのプロセスを読んだうえで「詰め切れているのか」どうかを見ていました。
自分が物事を進めたいのであれば、もっと細部に目を向けなさい。それは責任や覚悟といったマインドに対する指摘でもあったと解釈しました。
細部に目を向けるってどうすればいいの?
では細部に目を向けるために私が行っている具体的行動を紹介します。
①自分自身で何度も繰り返し問題点を探す
これが細部に目を向ける基本作業になります。最低3回、いや5回、6回と繰り返します。
②仕事を実現するまでのプロセスをよりリアルに想像する
企画案などの場合、その実現までをより明確にイメージします。イメージできない部分は詰めが足りない箇所と言えます。
③反対意見、お客様や顧客の反応を予想する
反対意見や反応に対する想定問答を考えていきます。そこからそれまで気づかなかった問題点が見えてくることがあります。
④枝葉が幹と整合しているか確認する
統合的に組まれていると思っていても、つじつまの合わない部分が出てくることもあります。どこかで思考に矛盾が生じている場合もあります。
⑤事前にレビューをする
自分の力だけではなく他者の目で見てもらうことは効果大です。
スピード感が落ちるのでは?
細部にこだわると時間がかかることへの対処は以下の通りです。
①細部への詰めに時間を使えるスケジュールを組む
部下に対して私が最低3回は見ることを前提にするよう指導していました。自分の案ができた→一度見てもらえばその次のステップという予定は現実的ではないです。
②スピード優先の改題を明確にする
突発事項、期限が急に決まったものについては、成果物を出すことが最優先になります。完成度50%~60%、または、3日でできる範囲など時間を区切ることも必要です。
③細部の詰めと時間の両方を目指す
細部への拘りのポイントがわかるようになると、スピードとの両立が可能となります。気をつけるべき点や注意して見る角度を身につけるだけでもスピードが変わってきます。
以上、「神は細部に宿る」についての、私の経験と具体的な行動について述べてきました。
ここで余談ですが、D社長に対して私がどう思っていたかについて少し触れておきます。
私にとっては尊敬する人でした。切れ者で厳しく、きつく言われることも多くありましたが、人に対して情の深い方でした。
当社に来て2年後には「うちの経営企画は他社に引けを取らない」と言われ自身にもなりました。
最後に、この記事が「神が細部に宿っている」のかどうかいささか不安で、自分でハードルを高くしてしまったことを、書きながら後悔しています。
髪を切りに行った話のおまけとして、至らぬ点などご容赦くださいませ。