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【いちごる読書note】ピクサー流創造するちから
『ピクサー流創造するちから』
この本との出会いは、やはり『ジョブ理論』(クレイトン・M・クリステンセン氏)にて。
『ジョブ理論』の中で、イノベーティブな事業を創出していく上でのプロセスについて、ピクサーの例を挙げて説明されており、本書が参照されていた。
『ジョブ理論』と同様、僕にとっては座右の書と言ってもよいほど示唆に富む内容であり、その良さを端的に伝えるのは難しい。
それでも、以下に拙い内容紹介と僕自身共感した点のいくつかを記載してみたので、少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本を手に取って通読することをおススメします!
1.簡単な内容紹介
『ピクサー流創造するちから』は、ピクサーの創業者であるエド・キャットマル氏がピクサーの創業前後からの経験を振り返りながら、クリエイティブな集団において、その創造性を発揮するためのチームビルディングやマネジメントのあり方について論じたもの。
創業者自伝の類にはなるけれど、筆者は自身の経験してきた組織運営について、(おそらく)書籍や学者との対話を通じた理論と実践の往復を繰り返しながら、その本質を探究してきたのではないだろうか。
単なる成功体験に留まることなく、その体験を深い洞察をもとに、形式知としてしたためている。
それに加えて、ピクサー運営上の同志たち、とりわけスティーブ・ジョブスとのエピソードは感動にあふれるストーリーとなっている。
また、筆者が辿り着いた、映画製作において卓越した作品をアウトプットし続けるための本質は、僕自身がゴルフコーチをする中で、目の前のゴルファーに質の高いゴルフスキルを習得してもらうために大切だと思っていたことと通じる部分があったことに、共感を覚えた。
いくつもあるが、ここでは2つほど、僕自身の取り組みとの関連を残しておく。
2.共感ポイント①~失敗の捉え方~
エド氏は、メンバーに創造性を豊かに発揮してもらうためには、失敗の捉え方を変える必要があると言っている。
私は、社員が失敗を嫌い、何とか回避しようとするのをずっと見てきた。何を言ってもだめで、間違いを恥ずかしいものと思い込んでいる。本能的に失敗すれば傷つく反応になっている。
そのため、失敗に対する見方を変える必要がある。言い古されていることだが、失敗は、対処のしかた次第で成長するチャンスになる。
なるほど、これはよく言われていそうなことではあるが、実際にこれが出来る人はそう多くはない。
僕がそう思うのは、それが単なる趣味であるはずのゴルフにおいてもそうだからだ。
何事もそうだが、新しく何か(仕事や趣味など)を始める場合に、失敗なしでそれを習得することはない。
ただ、エド氏が述べているように、どういうわけか僕らは「失敗はダメなもの」という価値観を植え付けられやすい環境にあるようで(エド氏曰く、学校教育がその源泉)、それが創造性を発揮したり、何かのスキルを身につける場合の成長を阻害しているように思われる。
ゴルフにおいては、ピンポン玉くらいの小さなボールを、それと大して変わらない大きさの打面のクラブで打つのだから、最初は大きなミスをすることも多いし、当たらないことすらある。
けれども、多くの方は完成品(プロの技術)と比べたりするものだから、ミスに対する許容範囲を狭めてしまい、どんどん動きに自由度のない、窮屈なスイングになってしまい、それが一層ミスを誘発するのである。
だから、僕自身は初中級者ゴルファーに効果的・効率的にゴルフのスキルを身につけてもらうために、「ミスをどのように評価するべきか」のマインドチェンジを促すようにしている。(「今のはミスしたかのように思われるかもしれないけれど、○○な理由から、この段階ではそんなに気にしなくてもよいんですよ~」など)
なお、これと矛盾するようだが、エド氏は次のようにも言う。
これだけ失敗を受け入れることの大切さを説いてきたが、作品が適切なスピードで改善されていない場合には、どこかに問題がある
これもその通りで、ゴルフのスイングづくり(例えば練習)においても、ゲーム作り(ラウンド)でも、ミスは最初はつきものであるが、正しい方法で取り組んでいれば、ミスショットの幅も落ち着いてくるし、スコアもある程度整っていくはずである。
そうなっていない場合は、やり方に問題がある可能性が高い。
3.共感ポイント②~親鳥はひな鳥をいつ巣立たせるか~
またもう一つ、共感ポイントを挙げるなら以下である。
では、保護から採用に移行する魔法の瞬間はいつなのか。それは、母鳥にいつ子供を巣から追い出すのかを聞くのに似ている。子は自力で飛ぶことができるだろうか。翼を上手に使って降下できるだろうか。それとも地面に激突してしまうだろうか。
これは、エド氏は映画製作において、制作初期の原案は、必ずと言ってよいほど駄作(突っ込みどころ満載)であることから、一定期間の保護を必要としている点を強調している。
駄作と表現しているが、監督などが自身の体験などから生み出したその作品は、ダイヤの原石みたいなもの。
これを最初の段階から、マーケティングや制作といった多くの関係者にさらしてしまうと、当然に指摘を受けてしまい、光るものも光らなくなる。
こういったことを防ぐため、一定期間は一部の関係者のみで試行錯誤し、アイディアを磨くことでやがて光り輝くダイヤのような作品となっていく。
こうなって初めて映画製作上必要とされるその他の関係部署と共有し、ひな鳥を巣から羽ばたかせることとなる。
これと似たような形で、ゴルフレッスンも進んでいく。
僕のレッスンの特徴は、「終わりのあるレッスン」である。
これは、「一定の基礎と自信が身につけた後は、レッスンを離れて、自分自身の足で心行くまでゴルフを楽しめるようになってもらう」、そういったコンセプトであることを意味している。
映画製作上は、聴衆の感動するような作品を創造することが一つの大きなテーマだと思われるが、僕は「ゴルフを楽しんでいくための技術的な礎を築き、ゴルファーに確固たる自信を根付かせること」が大きなテーマであり、その本質は似ている(映画作品には感動を吹き込まれ、ゴルファーにはゴルフを楽しむためのマインドセットとスキルを吹き込まれる)。
必ずしも10回でカンペキになるわけではないけれど、多くの方は一連のプロセスを経て一つの到達点には達してくれていると思っている。
(またゼロからの未経験者も含めれば、10回での成長を強要することは得策ではないこともあり、必要に応じてもっと時間をかけることもある)
映画の原案が駄作と表現されながらもダイヤの原石であるのと同様、初心者のゴルフスイングは粗削りながらも、その方の個性が光る部分は必ずと言ってもよいほどある。
巣から羽ばたかせても地面に落ちてしまわないか、注意深く見守りながら、それをより洗練し、
「ゴルフが上達するってこういうことか!これで一生楽しめる!」
という確信を得てもらうための手助けをしていきたい。
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