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【いちごる読書note】問いこそが答えだ
繰り返し読みたい本リストの中の1冊。『問いこそが答えだ』(ハル・グレガーセン)。この本は、別のnoteで取り上げた『イノベーションのDNA』において紹介されていた本である。
『イノベーションのDNA』では、 イノベーティブな発想をしていく上での重要な要素として「質問力」を指摘している。同書においても、「いかに問うべきか」についての方法論は解説されているが、それをさらに突き詰めたものがこちらの『問いこそが答えだ』。
1.この本を読もうと思った理由~いちごる的選定基準~
この本を読もうと思ったのは、上述の通り、他の本でも非常に有益な示唆を得たクリステンセン氏のおススメであることは一つの大きな理由ではある。
そしてもう一つの理由は、「はじめに」の類の部分の内容である。個人的にはここに、最後まで読むべきか否かの判断ポイントがあると思っている。
この本についていえば、プロローグの最初に、以下の記載がある。
人が本を書きたいという衝動に駆られるのは、見ず知らずの人たちに何時間もかけて何万語もの言葉を読んでもらうに値するだけの重大な発見をしたと思うときだろう。そしてその発見に世の中のほとんどの人が気づいていなさそうだと、感じられるときだ
このような記述をしている本は、さほど多くないように思っている。
この中の「その発見に世の中のほとんどの人が気づいてなさそうだ」というのは、
ピーター・ティール氏の『Zero to One』で述べられていた彼の採用面接時の質問である「世の中のほとんどの人が賛成しない、大切な真実はなんだろう」と同じ意味合いだと思われる。また、クリステンセン氏の『ジョブ理論』では、「天動説と地動説くらい違う」という表現になる。
これらは表現の仕方は違えど、本質的に同じことを言っており、そういった主張があるか否かは僕にとっての読むべき本を選定する基準となっている。
2.この本の主張
【いちごる読書note】の趣旨は、その本の要約を残すことにはないが、それでも自分自身の備忘のためにも、この本の主張がまとまった以下を引用する。
本書の核をなしているのは、よりよい問いが生まれるかどうかは―仕事でも私生活でも―環境に左右されるという主張だ。問いの生まれやすさが環境で決まるのなら、積極的にまちがうこと、不快な場にあえて出ていくこと、黙って熟考することのたいせつさはつねに忘れないほうがいい。ふだんより確信が持てず、ふだんより不快で、ふだんより口をつぐんでいなくてはならない状況に身を置くことで、心の奥から湧いてくる問いを増やせる。
要は、よりよい問いによってこれまでと違った「ものの見方」ができるようになるし、そのためには「問いやすい」環境が必要で、その方策として、上記の通り3つの観点が示されているのである。。(太字部分)
また、問いが大切なのは新たな「ものの見方(洞察)」が得られると言うだけでなく、以下の引用にある通り、それを実行、実現していく局面でも、他者の協力を得る上で有効だと言う点も、普段から自覚しておく必要があると思った。
問いは、助けを求める誠実なものと受け止められるならば、支援をよびかける単なるキャンペーンではなく、問題を共に真剣に考えるという協力を他者から引き出すことが出来る。・・・中略・・・人間はある問題を自分と関わりがあるものと認知すると、その問題の解決に積極的に励むようになるからだ。わたしたちが私生活や仕事で直面する問題のほとんどは、自分ひとりでは解決できない。だから他者から協力を引き出す手段を持つことが欠かせない。その最良の手段となるのが、よい問いだ。
3.耳が痛い話だからこそあえてnoteに残しておきたいポイント
本書でも書かれている、新しいものの見方を得るために「〈知らないことを知らない〉を自覚する」ことや、「メンタルモデルに意識的に疑問を持つ」ことの大切さを噛み締めるため、僕にとっては「耳の痛い話」についても敢えて残しておく。
《「多弁な人」について》
あることが正しいと決めてかかり、けっして問おうとしない人ほど、多弁だ。しゃべるばかりにで聞かず、さらなるインプットを求めない。逆に、問う人は、情報の「送信」よりも「受信」を務めて強化しようとする。
自分自身の傾向として、ついつい必要以上に話してしまいがちなので、それは新たな発想を得るための障害となっているのだろう。本書で紹介されていたセールスフォースのサイモン・マルカーヒー氏の以下の言葉を胸に刻んでおこう。
つねに流れているBGMのように、「話さず、問え、話さず、問え」と頭の中で唱えています
《問いの資本にかかわる話》
視点を変える問いを提起しながら、それを掘り下げたり、答えを見つけようとしたりしない人はどこにでもいる。それらの人はいったことを実行しないせいで、問いをまったく口にしない場合よりも、周りのみんなを落胆させてしまう。そればかりか、場合によっては、問いによって計画に遅れを生じさせたり、ほかの人の時間をむだにしたりしていることもある。
当たり前といえば当たり前のことなのだが、要は「結果を出してからものを言え」ということ。問いを発し、新しい世界を夢想することは変革の1歩目としては必要だが、実現のために2歩目、3歩目と歩みを進めることが大切。特に自分自身の場合は、夢想家になりがちなので、「前に進めているか?前に進めるにはどうしたらいいか?」を自問することとしよう。
4.その他ココロに響いたフレーズ集
どんな分野でも、最初に基礎知識-疑問の余地がないことがはっきりしている土台となる知識-を身につけてからでないと、自分で探求や洞察を深めることはできない
⇒問うことも大切だが、その「土台も必要」という、忘れてはならない事実。これが、コーチングの対象の以前と以後を分けるのでは。
新しい情報はときに、「誤った知識」を正すことがある。その場合の学習は、「概念の変化」をもたらすものになる。自分のまちがいがわかって、修正を求められる学習ということだ。このような学習を楽しむのはむずかしい。些細なことでも気分を害するものだ。・・・中略・・・しかしもっと根本的な理解の次元で、まちがいが明らかになれば―ミシェリン・チーの言葉では「カテゴリーの誤り」があらわになれば―ショックはそれよりはるかに大きい。
⇒メンタルモデルに疑問を持つことの大切さを説く一節。p145~p149をどのように実践していくか。
わたしの仕事は大多数の人々の役に立つことだと思っています。どうすれば、一般の人たちが何を欲しているかや、何がいちばん一般の人たちのためになるかを突き止められるのか。その問いへのわたしの答えは、ふつうの人たちの近くにいるということに尽きます。そもそもわたし自身が、本来はそのひとりなのですから。
⇒『イノベーションのDNA 』でいうところの 「観察力」が大切ということ。
変化を起こしたいときには、「相手がものごとをどのように見ているか、どういうことに共感するかを見きわめることで、労を厭わぬ協力を引き出せる」ということだ。そのときに肝心なのは、「じっくりと相手の話に耳を傾けて、相手が何を必要とし、何を優先し、何を動機にしているかをりかいすること」だ。
⇒「セールス/マーケティングの本質」にもつながる話。
わたしたちは往々にして、相手の考え方に対する先入観だとか、相手の過去の言動だとかに縛られて、相手が伝えようとしていることを正しく理解していない
⇒人と話していても、こちらの話に傾聴してもらっている、と感じることは意外と少ない。逆に、自分自身も他の人と会話する時、傾聴することを心がけたい。
写真術には喩えに使える概念がたくさんある。例えば、ピント(焦点)とか、フレーミング(構図)とか、被写界深度とかがそうだ。しかし単なる喩えに留まらず、「構図を決めて、じっと待つ」のを学ぶことは、一定の時間、意識的に黙って不快さを感じ、自分がまちがっている可能性があることを認めることに通じる。それはよい問いをたてるという目的に直接役立つ教えだ。
⇒趣味の写真撮影のスキルが、「問いをたてる」というイノベーションの重要なスキルと本質的に同じものであることは、興味深い。もの事の本質を突き詰めれば、それはほかのことに応用可能だということの証左。ゴルフスキルも、ゴルフを教えるスキルも、突き詰めればいろいろな点で役に立つものだと確信しているし、「ゴルフを楽しむ方法」だけでなく、もっと広く、深いスキルを提供できるようになりたい。
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