吉祥寺ZINEフェスとおばあちゃん家みたいな珈琲屋
吉祥寺PARCOの屋上で開催された「吉祥寺ZINEフェスティバル」に足を運んだ。個人やサークルが発行した小冊子を販売するイベント。内容はエッセイや小説、イラストに写真集とさまざま。
文学フリマ出店まで2か月を切り、「創作エネルギーを存分に浴びてくるぞい!」という気持ちで参加した。
文学フリマと比べると、規模は小さくて「フリーマーケット感」が強い。ジャンルで店の順番が決まっているわけでもないので、自由にお店をぐるぐる回った。
というわけで、購入した作品のご紹介!
買ったもの
◼︎秋海まり子
『さくらももこになれなくて』
「よさくの本をもらう会」にお越しいただいた、秋海まり子さん。その際にも「ZINEを出す予定」とお聞きしており、楽しみにしていた。
あとがきに書かれていた、この文章が好きだ。
わかる。ぼくもnoteを始める前と後で、世界の見方が変わった。楽しいことも辛いことも、「しめしめ、文章の材料になるわい」と思う魔女のような心持ちで生き抜けるようになった。
ブースでまり子さんと、ぼくのエッセイ本についての話もした。お互いの作品を楽しみにするような友だちが文章でできるなんて、過去の自分に話したらビックリするだろうなあ。
◼︎haruna kwge「 」
『今日こんなことがあってさ、』
ブースの看板に「北海道から上京」と書いてあり、ぼくの北国センサーが反応した。目が合うと、ハルナさんがとっても気さくに話しかけてくれたので、ついつい聞き入ってしまう。
こちらは20代前半から5年間の日記を300日分集めた作品。コロナの流行と就活に直面しながらも、移りゆく感情と日常を逃さずに記録し続けている。
作品を読んで、あらためて「なんで大学時代に日記書かなかったんだ自分〜!もったいない〜!」という気持ちになった。大学生は感情の宝庫。子供と大人の狭間ならではの心の揺れ動きが、あったはずなのだ。
ハルナさんはブースに3年日記とスケジュール帳も持ってきていて、日常の厚みを感じた。noteもされていて、親近感!
◼︎hana tsukamoto
『地味夢vol.2』
夢日記。ハナさんいわく、めっちゃ地味な夢ばかり見るとのこと。そのワンシーンたちをかき集めた作品。
「マグロが猛スピードで目の前を横切り、モーターボートがそれを追いかける」など、夢特有の「そうはならんやろ」感が詰め込まれている。
そして、「奇抜なストーリーなのに突然終結を迎える」という夢ならではの味わいを楽しめる。あの不思議だけどなぜか切迫感のある世界を捉えていて、フワフワとした気持ちになった。
人の夢を覗き見るなんて、はじめての体験かも。
◼︎フカフカフー
似顔絵(with不思議な生きもの)とリソグラフカード
不思議な生きものと一緒にゆるい似顔絵を描いていただいた。この独特の世界観、めちゃんこかわいい。ぼくの頭と肩にはトゲトゲ頭の子たちが乗っかっているらしい。
◼︎犬ノ畝のぼる
似顔絵(with実家のワンコ)とフリーペーパー
わんちゃんの絵がお得意ということで、実家のワンコと一緒に描いていただいた。最高にキュート。家族に見せたい。
よさくのイラストは特徴を捉えながら、6割増でイケメンにしていただいている。文学フリマ東京では、こちらの男性が店頭でお待ちしています(嘘)。
即売会で、お店の人と話す時間が好きだ。作品への想いをフィルターなく受け取ることができるから。
一方で、話している間にぼくは「自分に時間を割いてもらって申し訳ない」という気持ちが働いてしまう。なので、他のお客さんの気配を察知すると「タイムリミットだ!」とその場を離れようとする。
万が一、昨日お話しした方が「この人、楽しく話してたのに急に切り上げた?」と感じていたとしたら、お邪魔にならないようにしたためです(本人まで届かないと思いますが、伝われ…)。
なんにせよ、どの作品も、作り手の愛を感じるものばかりだった。自分で作って、自分の手で渡す。そんなシンプルな行為が、心の引き金を動かすエネルギーに変わる。そんな一瞬一瞬が盛り込まれたイベントだった。
文学フリマ東京に向けて、また一段とギアが入った。ぼくもいつかは、誰かの感情を突き動かせますように。
*
(おまけ)
会場を後にして、購入した作品を読むために喫茶店を探す。プラプラと歩いていると、こんなお店が。
正直、昔ながらすぎて入りにくい。しかし、「この店はただものじゃない」というセンサーがビンビンに反応したので入店。
エプロン姿のおばちゃんが「1人かい?ど〜ぞ〜」と迎い入れてくれた。
店内がおばあちゃん家すぎる。「どこで手に入れたんだろう?」という独特のレトロ感と、和風と見せかけて多国籍なグッズが置いてあるところが、まさにそう。
良心的な価格なのに、なぜか「カフェノーア」だけ1500円で浮いている。おばちゃんいわく、何杯分ものコーヒーを抽出した、苦味の強い飲み物らしい。
「赤坂だったらこの値段で飲むかもしんないけど、ここで飲まないよね〜!」
おばちゃんはヒャッヒャと笑っていた。他人事である。
店内には控えめのボリュームでラジオが流れている。自分が今、東京にいるという感覚をだんだんと薄れさせてくれる。
しばらくすると、席にお皿が置かれた。
「ど〜ぞ〜」
流石におばあちゃん家じゃん。こんなん、反則だよ。
「ミント黒糖」というお菓子をいただくと、独特な味わいがした。そこも含めて、祖父母テイスト。
ZINEフェスで購入した作品を楽しんでいると、お客さんがぼくだけになった。おもむろに、おばちゃんが話しだす。
「今日はどっから来たの?」
そこからは、ゆっくりとおしゃべりを楽しんだ。すでにお店にいるという感覚がなかったので、身の丈をつらつらと話し出す自分がいた。
おばちゃんの話もたくさん聞いた。父から阿佐ヶ谷のお店を継いで、15年前に移転したこと。彼女も昔、札幌に住んでいたこと。1人のお客さんにお菓子の盛り合わせを半分食べられて、ギョッとしたこと。周りはチェーンのコーヒーショップばかりで、なかなかお客さんが来ないこと。一方で、1人で切り盛りしているから来すぎても困ること。今日の夕飯の献立を考えるのがめんどくさいこと。
もう、最後に関しては「店員と客」の会話ではない。「おばちゃんとよさく」である。(関係ないけど、ガラケー時代に「おばちゃんと毛虫」というゲームが流行った)
こんな時間を、ぼくは大切にしたい。石油ストーブの音がやたらに聞こえて、家の暖かさが強調されるようなひととき。
おばちゃん、東京にもこんなお店があるんだね。続けてくれて、ありがとう。
「正直、吉祥寺にあんまり用事はないんですけど、また来ます」
そう伝えてお店を後にした。
吉祥寺は、ぼくの好きな街になった。
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