【短歌】笹井宏之さんの「えーえんとくちから」を読んで
2011年発行のこちらの書籍は笹井宏之さんが亡くなられて3回忌の際に発行され、2019年に文庫化されたベスト歌集です。
えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力をください
「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい
葉桜を愛でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある
蜂蜜のうごきの鈍ささえ冬のよろこびとして眺めておりぬ
タイトルになっているえーえんとくちからとは、永遠解く力なんですね。他の書籍などでお見かけするたびに気になっていました。すごく惹きつけられます。
蜂蜜の一首は、ゆっくりと流れていく蜂蜜を見つめている、こんなひとときがあることでまず幸せを実感していること。母の少女の一面を見る微笑みが伝わってきます。
切れやすい糸でむすんでおきましょう いつかくるさようならのために
次々と涙のつぶを押し出してしまうまぶたのちから かなしい
ふわふわを、つかんだことのかなしみの あれはおそらくしあわせでした
今夜から月がふたつになるような気がしませんか 気がしませんか
笹井さんの選ばれる言葉はどれも優しさがあり、浸透力がある気がしていて、じんわり沁みてクセになります。
笹井宏之さんは第一歌集「ひとさらい」を発行された2008年のわずか一年後に亡くなられています。発行されたその年にはすでに10年の療養生活をされていたようです。
こちらの書籍は短歌の他にも笹井さんが残された詩、エッセイ、俳句も収録されています。
私の中で繰り返し読みたい本の中のひとつになりました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ではまた