金城一紀『GO』
初めて金城一紀氏の本を読んだのは、自分は少し賢いと勘違いして、物憂げな子を演じようとして、それでいて人を笑かそうとして落ち着かない中学三年生のときだった気がする。
この本は、ぼう、っとした目ではなく、一点をみつめることを厭わない姿を見せた人に、読んでみるといいよと薦めている本だ。一言添えて。
「かっこよくて、ギラついてて、きっと痺れるよ」
何度も何度も読む。苦しいときも、ぐんと背伸びしたいときも、まだまだだと言い聞かせるときも、読み返そうと思う本の中にこの一冊がある。
彼の目をいつか見たいと、ずっと思っていた。自分の足の大きさや長さ、話のうまさばかりを唱える人が多いなかで、そこじゃないと大声をだすこともなく、呼吸をすることで自分に染み込ませているような彼の目を、見たいと思っていた。
進むべき場所がわからずとも、道順を知らずとも、ひとは歩くことができる。それを「下らない」と、「つまらない」と吐き捨てるような人間を精一杯見下して、「ばかみたいだよね」といいながらも「でもやってみるわあ」と歩いていくひとを、ひととして頷いてやりたい。
題名も、彼のことも、きっと私は一生好きだ。
彼の目を見ることは叶わずとも、あの本を読むとき、私は自分の目が熱くなっていることにちゃんと気づいている。
いいなと思ったら応援しよう!
やったー!