02 西加奈子『きりこについて』を読んで
野暮な質問ですが、本を読んで声を上げて泣いたことはありますか、私はあります。はい、と答えた方なら、それは頁をめくる手が止まったときでしょうか、最後の一文を読み終えたときでしょうか、それが私の場合、どうしたことか、すべて読み終えて、裏表紙にもそっと目をやって、いちばん初めに見たはずの表紙にもういちど寄り添って、そうして小さなこの文庫本を木目調の机に置いたときでした。表紙の猫の目がこちらをみていました。それだけで、不意に心を包んだこのうすい膜のようなきもちを受け止めて泣く理由に