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【そもそも~】ねぇ、タイミングって知ってる?:5
これはどこにでも落ちてる、本当にありふれたラブストーリーのはずだった。まさかこれから十数年続くなんて誰が予想しただろう。シナリオ考えた人は今すぐ名乗って下さい。早急に。話があります。
Nに抱きしめられたあの日から、夜中にちょくちょく電話が来るようになった。マンションの窓辺に座って、夜景を見ながら話すのが好きだった。外の景色の中でNの声を聞くと、あの日の夜を思い出して幸せに包まれるから。そして私は少しでもN近付きたくてMr.Childrenを聴きまくった。それをNに話すと嬉しそうにCD今度持っていくわと言った。
また夜中にNからの着信。
「なぁ、今からお前ん家行っていい?」
「...は???」
日本語なのに何を言っているのか理解するまで数十秒はかかったと思う。
「聞いてる?行っていい?」
「すっぴんやし無理」
「誰がそんなん気にするねん。
30分で着くから。じゃ後で」
一体何が起こってる。30分で着くから?今から?どういう事?え?は?ちょっと意味がわからない。ショート寸前とは良く言ったものだ。すっぴんは仕方ない。いや、仕方なくは無いが。髪、そうだこのくせ毛でクルクルしてる髪をどうにかしなければ!!!なんで風呂上がりやねん!!!髪乾かさなあかんやん!!!バタバタとしていたらもう何も仕上がらないままインターホンが鳴った。
...タイムオーバー。
すっぴんでクルクルした髪のまま出迎える。
「...お前幼すぎるやろ」
「わざわざそれ言うために来たんか!!」
とりあえず家に入れる。ナチュラルに家に来たけどなんなんこれ。というか家に男の人入れるん初めてなんだが...。展開が早すぎて渦中にいるのにもはや私だけが蚊帳の外。
「ミスチルのCD持ってきた。
持って帰れる量ちゃうし」
そう言って大量のCDを目の前に置かれた。そういえば貸すって言ってたな。覚えててくれたんだ。顔が少し綻ぶ。それからミスチルの話を嬉しそうに話すNをずっと見ていた。もう少し近付いてもいいかな。そう思って手に触れてみた。Nと目が合う。あ、これ知ってる。そう思った時にはもう抱き寄せられていた。思わず下を向く。
「こっち向いて」
知ってる。これ知ってる。上を向いたら...。
もう知るか。知るか知るか知るか。なるようにしかならない。私は理性を豪速球で窓から投げ捨てた。ゆっくりと上を向く。目の前にある大好きな顔。自然と目を瞑る。この日初めてNとキスをした。そしてNはこう言った。
「俺、彼女いるねん」
瞬きをしたら世界が変わっていた。それも史上最悪な形で。最高と最悪を同時に味わって頭が割れそうだった。
前回のお話。
新しく連載始めました。