食べ物の恨みは根深い
ペヤングソース焼きそばの湯切りが難しい。
湯切りをするとき、幾度もなく、うっかりと蓋が外れて、麺が排水口に吸い込まれそうになる。
カップ焼きそばの濃厚なソースの匂いを頭で想像しながら、もう少しで食べられるところまで行っておきながら、その希望が直前で潰える。
食べる直前まで行っているという事実が残酷である。
正直な話、ぼくはペヤングをあまり食べない。
湯切りが怖いからである。
だからカップ焼きそばが食べたくなったとき、普段はU.F.Oとか一平ちゃんを購入する。
どうなのだろう。これはぼくが不器用だからペヤングを選択できないのだろうか。皆さんはどうですか。
先日、びっくりドンキーでテイクアウトを利用した。
家からそのお店まで約5キロ弱あり、大きめのリュックを背負って自転車で向かう。
電話でオーダーをし、お店に到着するとすでに料理がパック詰めされていた。
「袋詰めはご自身でお願いします」
なるほど。ご時世だし、そうだよな。
淡々と持参した買い物袋にパック詰めされたハンバーグやサイドメニューを入れていく。
そしてそれをリュックにしまう。
(「ああ、パックが意外と大きい」)
(「家に着くまでどうにか平らな状態を保ってくれ」)
心の中では色々なことは思いつつも、それを全て飲み込んで、とにかく丁寧な運転を心がけて、再び5キロの道のりを自転車で帰る。
帰り道には夕飯の匂いが漂ってくる。
その度にリュックの中でハンバーグが飛び出しているんじゃないかと不安になり、リュックの底面を手で触れて、湿り気がないかを探る。
残念ながらぼくのリュックは防水なので、内側で肉汁が漏れていようが確認のしようがない。
しかしそれでも気休めは必要なのだ。
家に到着する。ものすごく不安である。
結果として、ハンバーグがひっくり返り、ハンバーグの上に乗ったチーズと肉汁が飛び出してしまっていた。
せっかくのチーズトッピングは完全に機能停止である。
食べる直前に訪れた地獄。
もうすぐ食べられるという期待への裏切り。
どうしてお店のひとはセロテープくらい貼ってくれなかったのか。
食べ物の恨みはやはり根深いらしい。最近とても意識している“気持ちの切り替え”が全く機能しなかった。
はあ。ぼくはもうペヤングを食べるつもりはないし、びっくりドンキーのテイクアウトも利用できなくなってしまった。悲しい。
ペヤングの湯切りが簡単になったら、びっくりドンキーのテイクアウトがセロテープで固定されるようになったら、ぼくに教えてください。
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