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【読書メモ】表現する認知科学

1. 読もうと思ったきっかけ

先日、行ってきたNTTインターコミュニケーション・センター(略称:ICC)の展示がとてもおもしろく、そこでこの本の紹介もあったので、図書館で借りて読んでみた。

2. 全体の感想

「認知科学のススメ」シリーズの中の1冊ということで読みやすい内容、分量で書かれている。研究者とサイエンスライター(ファシリテーター)が協同で書いているという点も特徴とのこと。
 扱うテーマの性質上、読むだけでは理解するのが難しい。今回、ICCの展示を見た後で、この本を読み、その中に会場にあった展示の説明もあったので理解できる部分も多かった。この本は、展覧会やワークショップ会場にある簡単な説明のフルバージョンという印象。これを読んで実際に展覧会、ワークショップに参加できると理解が深まると思う。

3.メモ

1章 認知と表現

認知:一人の人間がどのように環境を知覚、分類し意味付けているか、その過程やあり方
認知の過程には「意識的」なものと「意識下」にものがある。
表現:何らかの認知や意味を別の人間に生じさせるための「身体の反応や動き、またはそのために創られた物体のパターン」

2章 テクノロジーによる自分の感覚や身体の自分事化

過去のプロジェクト展示の理論的な背景が説明されている。
・サッカード(眼球運動)
・手の探索運動
・触覚のセンサーは他の五感と異なり、センサーが体中に存在する
・感度の高い部分と低い部分がある。(手、唇>背中)

3章  触/身体感覚のデザイン

・触/身体感覚に関する語はHaptics.
・触覚の物理・生理・心理にまたがる「触れることの学問」
・物体の表面形状や粗さ、温度を認知する感覚を「皮膚感覚(Cutaneous Sense)
*「肌感覚」という言葉もあるが使い方は全く違うな
・手や足といった身体部位がどこにあるのか、その部位にどのくらいの力が加わっているのかしるための筋肉や腱の状態についての感覚を「自己受容感覚(Proprioceptive Sense)
・皮膚感覚、自己受容感覚、痛みなどを合わせた感覚を「体性感覚(Haptic Sense)」
・材質感は「凹凸感」「粗さ感」「摩擦感」「硬軟感」「温冷感」の5つが基本的な感覚
・オノマトペによる触りごごちの可視化http://furue.ilab.ntt.co.jp/book/201610/contents3.html

・聴覚や視覚は離れた対象の認知なのに対し、触覚は直接触れる(実感)する感覚
・触れることで相手を安心させ、親しみや信頼を生み出す「情感」がある
・数字だけではわからないことを実感と関わる言語表現で理解する(例:Youtubeを1万人の人が見ている(実感しにくい)、Youtubeを満員の両国国技館のお客さんが見ている)
・触/身体感覚を生み出すための言語表現
多くの昔話は
1. 時間や空間、状況が設定
2. 人が現れ
3.  行動が始まり
4. 事件が起こる
これにより、読み手の心の中に具体的な状況のイメージが作られる。この順番を変えると、心の動きが変わる(疑問を抱える等)
江国香織の小説による具体例

4章  意識下の自分との協働

・意識下の反応は自分の一部でありながら自分の意識では制御できない。「最も身近な他人」。
・瞳孔の拡大、心拍の増加といった情動反応
・ベンジャミン・リベットの実験:運動の決定はその意思が意識されるよりも早く意識下の別のところで行われ、それに基づいて筋肉の運動信号が送られている
・ジョハリの窓はジョセフとハリーの2人の心理学者の名前から取られている(ジョハリさんかと思っていた)
・意識はわかることを求める。それにより未来を予測する。一方、意識下の活動はわかることができない。この時、意識は「わからなさ」を感じ、自分の認知モデルを作り直す。
・意識は「わかる」ことで思考を停止しがち。最終的には「わからなさ」を担保しつつ対象と関わり続けいる態度をとることが重要(例:芸術作品の鑑賞)

*写真はICCにあった作品《公衆触覚伝話》 [2019]“Public Booth for Vibrotactile Communication”


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