#72 この本の内容、早すぎないかな……? どんどん広がる読書を安心して見守れる心構え
こちらは一部のみの書き起こしです。 読書のコツが満載の「お悩み相談コーナー」は、Podcast限定でお届けしています。
▽本編ではこんなお悩みにも回答中
この本、読ませていいのか悩む……
ミカタラジオでは以前、こんな保護者さまの声を紹介したことがありました。
「まだこの本は早すぎるのではないか」「興味の幅が広がるのはいいけれど、心配でもある」と、大人向けの本との境界線についてお悩みの保護者さまは多いです。
本に限らず「お子さんに、どんな情報にいつ触れてもらうか」は、保護者さまが一度は悩むテーマではないでしょうか。
虐待、貧困といった社会問題や、恋愛ものなども、タイミングに迷うかもしれません。
しかし、「こうしたテーマに触れてもらうタイミングを見極めたい」という保護者さまの願いとは反対に、知らないところでお子さんの世界は広がっていくものです。
同級生や年上のお友だちから聞く、YouTubeのレコメンドから偶然知る、テレビやWebニュースから知る、そして本から偶然知ることもあるでしょう。
電子機器のフィルタリングなどの機能を使っていても、お子さんと四六時中一緒にいるわけではない以上、いつどこで新たな情報に触れるかわかりません。
情報の種類によっては「まだあまり触れてほしくない……」ということもある一方で、完全なコントロールはなかなか難しいものだと思います。
本当に大事なのは「考えを調節できるか」
でも、見方を変えてみると、こうした「大人の話」は、遅かれ早かれいつかお子さんが知ることになるものです。
そんな中で、本当に怖いのは「最初にふれた情報に引っ張られ続けてしまうこと」ではないでしょうか。
「たばこ」の話をイメージして考えてみましょう。
お子さんが初めて、たばこを吸う大人が出てくる本を読んだとします。本の中でたばこを吸う大人がとてもかっこいいものとして描かれていたら……当然、お子さんは「かっこいい!」とワクワクすると思います。
ワクワクすること自体は問題なくても、この「かっこいい!」という最初の受け取り方のままに、たばこの良さだけを信じてしまうのは危険です。健康への被害などのデメリットに考えが及ばず、ものごとの裏表のうち一方だけしか考えられなくなってしまいます。
一方で、新しい情報に出会ったとき、自分の考えを柔軟に改められれば、こうした問題は防げます。
先ほどの例であれば、「たばこは肺の病気を引き起こしやすくなる」という情報を後から知ったときに「あ、そうなんだ。かっこいいだけじゃないんだな」と、自分の考えを調節することができればOKです。
反対に「肺に悪くても、かっこいいから」と、最初のイメージを信じ続けて、健康への影響を軽く見てしまうと……結果的には正しい判断ができなくなってしまい、お子さんの幸せにつながらないかもしれません。
こうした姿勢は当たり前のようでいて、意外と大人でも難しいものなんです。
日々目にするニュースのなかには、賛否両論が分かれる報道テーマも多くありますよね。
さまざまにある意見のうち「そうだよね!」と最初に共感できたほうからなかなか動けず、「向こうが間違っている」と決めつけてしまうようなパターンは少なくないでしょう。これが悪い方向へ進むと、SNSやリアルでの対立、トラブルにつながってしまいます。
異なる見方に出会ったときに、一歩立ち止まって、柔軟に考えを変えられる姿勢こそが大事です。
そうすれば、お子さんが成長するにつれて「大人の話」にふれたり、新しいトピックに出会ったりしても、心配しすぎる必要はなくなります。
本で「みとめる」練習を繰り返す
こうした柔軟な姿勢はすぐに実現できるわけではなく、少しずつ積み重ねることで育まれるものです。
先ほどあげたように、考え方を柔軟に変えていくのは大人でもなかなか難しいもの。繰り返し、さまざまな見方にふれて、考える機会をつくることで、柔軟さの土台ができていきます。
そして、読書はその練習のひとつになるんです。
ヨンデミーでは、読書を楽しむための読書家の7つのワザのうちのひとつとして「みとめる」というワザをお子さんに伝えています。
「みとめる」とは、自分の正しさや間違いを見つけて考えを深めることです。
本を読んでいれば必ず、新しいことを知ったり、新しい発見があったりします。それらを、これまで知っていたことと照らし合わせて、柔軟に考えをあらためていくのが一人前の読書家です。
今までの考えと何が変わったか、をお子さん自身が意識して自然と振り返れるように、このワザが役立つわけです。
▽読書家のワザについては、第57回の「見過ごされがちな『読むプロセス』こそ、深く読むためのカギ」でお届けしています!
さらに補足すると、ヨンデミーが掲げている「楽しく・たくさん・幅広く読む」のうち「幅広く読む」が大切な理由もここにあります。
楽しく・たくさん読むだけでは、ふれる情報が偏ってしまうこともあります。考え方を変えるチャンスが少なく、ものの見方を広げたり深めたりするのが比較的難しくなってしまうんです。
もちろん、読書が必ず学びに繋がらなければならない、ということではありません。ただ、「こんな考え方、したことなかった!」「こんなこと知らなかった!」という考えが変わる喜びも、読書の大きな楽しさのひとつだと思います。
さまざまなものの見方にふれて、偏ることなく自然と自分の世界を広げてほしい。それが、読書教育の理想として「楽しく・たくさん・幅広く」を掲げている理由のひとつでもあるわけです。
▽第48回「ヨンデミーの法則『楽しく、たくさん、幅広く』は子育て全てに応用できる!?」でも詳しくお届けしているのでチェックしてみてください。
ですから、冒頭のお悩みへの答えとしては、ヨンデミーからは「基本的には制限をしすぎることなく、幅広く読む」ことをおすすめしています。
お子さんが成長につれて幅広く本を読めることを目指していけば、徐々にさまざまな見方にふれて考えを変えていく癖がつきますし、ずっと鵜呑みにしてしまうことはないはずです。
ご家庭での読書内容が心配な場合は、少し、お子さんと本についてお話ししてみるのもいいかもしれません。
「何か新しく知ったことあった?」「どのページで驚いた?」と聞いてみたり、お子さんが本から何を感じ取っているのか、日々話すうえで少しずつ見えてきます。
お子さんが読書にチャレンジしていくのを見守りながら、いずれは幅広く読める状態を目指していけば、自分の考えの変化をみとめる柔軟さが自然と身につくはずです。
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