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ドキュメンタリー映画「私たちの青春、台湾」(2017年製作、台湾)



2014年に台湾で起きた学生たちによる社会運動「ひまわり運動」のリーダーと、中国人留学生の人気ブロガーの活動を通し、台湾民主化の歩みを記録したドキュメンタリー。2014年3月18日、台湾学生運動の中心人物・陳為廷(チェン・ウェイティン)は、林飛帆(リン・フェイファン)とともに立法院に突入し、ひまわり運動のリーダーとなった。一方、中国からの留学生で人気ブロガーの蔡博芸(ツァイ・ボーイー)は、台湾における“民主”のあり方をブログで伝え、書籍化されて大反響を呼ぶ。傅楡(フー・ユー)監督はそんな彼らの姿に期待を膨らませるが、ひまわり運動後、彼らの運命は失速していく。さらにカメラは、香港の雨傘運動前の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、周庭(アグネス・チョウ)との交流を追い、台湾・香港・中国が抱える問題、海を越えた相互理解の難しさ、民主主義の持つ一種の残酷さを浮かび上がらせていく。2018年・第55回金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。
2017年製作/116分/G/台湾
原題:我們的青春,在台灣 Our Youth in Taiwan
配給:太秦

映画.comより)


ひまわり学生運動の背景

 2014年当時の総統は馬英九その人です。この政権が委員会審議をすっ飛ばして議決しようとしたのは、「海峡両岸サービス貿易協定」でした。
(馬英九政権については、過去noteをチェック!)


 この協定は、平たく言えば、台湾と中国でのサービス貿易の自由化を実現するための協定ですが、中国のサービスが台湾で自由化されることで国内の中小企業などが危機にさらされるなどの懸念がありました。深い議論が必要な協定に対して、馬英九政権が強引に推し進めたことで、野党である民進党や国民から強い反対が起き、結果として学生運動が起こり、学生による立法院(日本でいえば国会)が占拠される事件に至りました。
 
 事件の経緯などは、東京外国語大学の文章がわかりやすいので、お読みください。


学生運動の結果

 結果として学生たちは3週間に及び立法院を占拠し、最終的には撤退することとなりますが、立法院長の判断によりサービス協定は発効されないまま現在に至ります。
 学生運動としては、世界で稀に見る成功として捉えられておりますが、では、この映画が学生運動の成功を最後に締められるかというと、そんなことはありません。


ドキュメンタリー映画「私たちの青春、台湾」の面白さ

 ドキュメンタリー映画でなければ、学生運動の成功を持って映画を締めることができますが、学生運動の首謀者として動き回ったチェン・ウェイティンに新たな事実が発覚します。そうして、フー・ユー監督は撮影をやめられなくなります。
 チェン・ウェイティンを含む撮影対象である主人公二人に、「世界を変えてくれるかもしれない。世界を変えてくれる瞬間を撮れるかもしれない。」と期待して映画の撮影を始めたフー・ユーは、段々とこの映画の出口を見失ってしまいます。


 ドキュメンタリー映画は、その撮影対象は定まっているものの、対象が動いていくストーリーについて監督はまったくコントロールすることができません。それがドキュメンタリーの良さであり、怖さであり、そしてドキュメンタリー映画の監督は結局のところ、撮影対象のあるがままを撮影することしかできないのです。
映画をみて、以下の3つを考えていただきたいです。



・監督が撮影したかった、世界が変わる瞬間は訪れるのか。

・主人公2人はどんな風に変化していくのか。

・「私たちの青春」は、結局誰の青春のだったのか。



で、やっぱりドキュメンタリー映画は面白い!!!
ひまわり学生運動の勉強になる以上に、ドキュメンタリー映画の面白さを再発見したのでした。

今回はここまで!
ちなみに、アマゾンプライムでこの映画見れますのでね。(有料)



ちなみに、「映画を見たぜ!!!」って方はハフポストのインタビュー記事をお読みください。→(ハフポスト、フー・ユー監督インタビュー記事)


この監督には好感しか持たないなぁ。

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