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【掌編小説】ちんもく

 ラムネの瓶を透かして見る空は青色が揺れて夢の中にでもいるようで、隣ではしゃぐコイツの声にも少しだけ素直になれる気がした。

 雫が瓶を伝って頬に落ちる冷たい感触に、ふと我に返って隣を見やる。さっきまで賑やかに喋っていた口を閉ざし、じっと注がれる視線とかち合い慌てて目を逸らした。
「暑いな」なんて、分かりきったことをわざとらしく言ったのはオレとおまえ、どっちだったのか。

 熱風が二人の間に積もった沈黙をゆるく吹き流し、ようやく呼吸を忘れていたことに気がついた。







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