新月,

探す光を慈いつくしんだだけの
ここで生き辛づらいだけの

ちっちゃな　ちっちゃな僕だった

彼等かれらは言った

「あなたは太陽のよう」と

“私”は言った

「やっぱり私は月が好き」と

たった　それだけ

それだけが

僕と彼等を少しずつ
少しずつ繋いでく

消えてゆく記憶を
取り戻したいと
同時刻どうじこく
この身ごと
無くなってしまえとも願う僕

月見散歩が叶わない
私の瞳に
蟲むしは住みつき

人と真に触れ合うこと
叶わず朽ちる生を
人知れず
悟るしかなく

涙したのも

人知らず

ひたすら誰かと
少しで良いんだ

出会えたなら

言の葉を

たった一文字

送りあえたら

そうだ僕は

会いたかった

「会いたい」

会いたい

会いたい

会いたい顔は縁側景色えんがわけしきの朧月夜おぼろつきよと溶け合って
忘れないとかつて誓った人の記憶をやっと
僕に授さずけたの

ああ　やっぱり

月が好き

月がいい

月夜だけが僕の嘘を暴あばくから

雫しずくごと抱きしめた体は
かつて僕を泣き止ませようとした
あの子が好きだと
認めろと
水面みなもからも
訴うったえるように揺らめいた

　あきらめよう

忘れる事を

あの子から

　　　　　　　　逃げる事を

この記憶がまたしても亡くなろうとも
どうか
どうか
僕が想うこの気持ちを感じる人生を

届けて

あの子に

　　　　　　僕の愛しい闇夜の衛星