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生理が止まって「痩せた」とうれしくなった。過剰なダイエットの先で出会った “ボディーニュートラル”

/違和感ポイント/
自分の「体」がコンプレックスだった。コンプレックスに打ち勝つために決心したダイエットだったが...なぜイタチごっこをしている気分になるのだろうか?

※この記事は摂食障害、ダイエットの描写が含まれています。

イメージ画像。Photo ACより

それでも、痩せたい。

大学二年生の・Izumiさんは、自分の身体がコンプレックスだった。

友達と一緒に写っている写真を見返しながら「自分は太っている」と思ってしまう。

友達が「可愛いね〜」と言いながら自分に例えてくる動物は、どう考えても可愛くない...「それって可愛いの...?」と遠回しにディスられている気分になった。

数年前に仲のいい男友達から言われた「身体」に関する冗談が耳にこびりついて離れなかった。

小学生の頃からダイエットを決心してはうまくいかずを繰り返し、段々と「ダイエットをできない自分」もコンプレックスになり始めた。

コンプレックスを解消したいーー。

大学に入学してすぐにコロナの影響で外出ができなくなった。「暇だし、本気でやってみよう」と始めたダイエットがどんどん楽しくなった。

痩せていく身体、周りからの「痩せたねぇ」という言葉が拍車をかけた。4月から始めたダイエットが6ヶ月を過ぎようとしていた時には、生理が来なくなっていた。

「痩せすぎて生理が来なくなる、みたいなのもをSNS で目にしていたので来なかった時に『自分は痩せたんだ』って思いました。来ないことは体に異常が起きてるってことなのに、逆にちょっと嬉しくなってしまったんです。」

生理が来ないまま2ヶ月間が経った頃、母親に生理が来ていないことを伝えた。産婦人科に行ってピルを飲むように勧められたが、「ピルの副作用でむくみ、体重が増える」と聞いていたので躊躇った。

「3ヶ月経ったらピルを飲もう」と自分と約束し、ダイエットをスタートさせて9ヶ月経った頃に産婦人科に行って薬を処方してもらった。

その後、無事に生理は来たが、副作用とむくみが辛かった。重い体へのストレスを感じ、痩せたままでいたいと思った。

イメージ画像。Photo ACより

あれ...我慢してた?

小さな変化が訪れたのはお正月だった。

「『お正月だから』と言って元旦から美味しいものをいっぱい食べたんです。そしたら、自分がこれまで食べることを我慢していたことに気がついちゃったんです。それからは食べることが快感に変わりました。過食症のような症状になり、食べることしか頭にないようになりました」。

「食べること」しか頭にない一方で、「痩せていたい」という要求はなくならなかった。家族が寝静まった夜に家にあるものをひたすら食べ、罪悪感で朝食を抜くという生活を送るようになった。

過食になりながらも痩せたいという気持ちあることがすごく辛い。

こんな辛い思いをするくらいなら、全てがどうでもいい...

生きている意味が分からなくなり始めた頃に、精神科に行くことにした。

「周りの友達に相談したこともあったんですが、自分ほどストイックなダイエットをしたり過食に陥ったりしている人がいなかったので。自分の症状を話しても『自分と全然違う...』と感じてしまい逆効果の時がありました。精神科に行ったのは、思ったよりも良かったです。薬をもらうこともですが、専門家の先生に話を聞いてもらえるのが良かったと思います」。

ある言葉との出会い。

ダイエット開始から一年後の翌年の4月から、痩せることへの脅迫概念から少しづつ距離を保つことができるようになった。

きっかけは「ボディーニュートラル」という言葉を知ったことだった。

ボディーポジティブは痩せている太っているなどの体型やスタイルに関わらず、誰もがポジティブなボディーイメージを持とうという考えで、「外見や体型へのコンプレックスを受け入れ、自分の体を愛す」というメッセージを発信しています。一方、ボディーニュートラルとは、自分の外見や体型に対する感じ方をそのまま受け入れることだ。自分の体に対して「ポジティブに慣れなくても大丈夫」「自分の体を愛せないときもある」という考えを提唱しています。

「ボディポジティブによって、『自分の体を愛せない人はダメ』というように圧力を感じてしまう人もいらっしゃるかもしれません。そこで、まずは自分の体と向き合うための第一歩としてボディニュートラルというのがあると思います。みんながみんなポジティブになるのはやっぱり無理だと思うので、向き合う第一歩としてのボディーニュートラルが広まればいいなって思います」

Izumiさんは、ボディーニュートラルに出会い「自分のままで別にいいんだ」と受け入れられるようになった。周りから「きれい」「痩せた」と言われるよりも自分の健康が大事だと思えるようになった。

「痩せていなくても良い」という考えを最初は受け入れるのが大変だったが、自分で鏡を見て「大丈夫。今日も可愛い」と口に出し続けた。

「ボディーニュートラルに出会った後でもダイエットをしたくなったことはあります。今でも栄養分表示をふと見てしまい食べるか迷ってしまうこともありますし、カロリーを気にすることもしてしまいます。でも、一番大きかったのは体重計に乗ることを辞めたことです。数字に囚われなくなりました、体重計はもう一年ぐらい乗っていないです」。

コンプレックスを解消しようとして、始めたダイエット。Izumiさんは自分のコンプレックスとの向き合い方をこう振り返る。

「ダイエットで痩せても、コンプレックスだった体はコンプレックスのままでした。イタチごっこみたいにどんどん追求しちゃって、ダイエットでコンプレックスは解消できないなっていうのは思いました。今は自分の体がコンプレックスではありません。他人からの承認欲求では一生満たされないと思います。自分で自分に自信を持たせる、それが本当に大事なのかなと思います。難しいんですけどね」。

「なので自分の体に悩んでいる人は、まずはなんで悩んでるのかを1回考えてみて欲しいです。この世にダメな体もないしダメな人もいないし、ダイエットできないからといって怠け者ってわけでもないし。一番快適に生活できる心と体を手に入れてほしいなと思います」。

Izumiさんからのメッセージ:ピルを飲んでいる人が増えて、周りから安易にお勧めされる機会も多いと思います。でも、私は「みんなが飲んでるから自分も飲まなきゃ」って始めて欲しくないと思っています。やっぱりお薬である以上、ある程度体に負担がかかるもので、もちろん副作用とかも出てきます。だから、しっかりほんとに自分に必要なのかっていうのも考えてから始めてほしいなと思います。

メンタルヘルスに悩む方、不安や悩みを抱えている人へ
厚生労働省は「こころの健康相談統一ダイヤル」として、0570-064-556(おこなおう・まもろうよ・こころ)を推奨しています。
生活する中で悩みや不安を抱えて困っている時には、こちらの相談窓口から相談できます。


執筆者:原野百々恵/Momoe Harano
編集者:清水和華子/Wakako Shimizu、森青花/Aoka Mori

インタビューを受けてくれた人:Izumiさん。大学2年生、大学では政治を専攻。大学一年生の時に経験したダイエットからメンタルヘルスの重要性を学び、自身のインスタでメンタルヘルス、ジェンダー社会問題に関する発信を行う。IG: hope_myself_7


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