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「ルッキズムは嫌」と言いながら、ナンパで自己肯定感を上げている私。

/違和感ポイント/
容姿だけで評価されることに辟易しているのに、落ち込んだ時に自己肯定感を上げてくれるのは、ナンパされる時の容姿に対する評価だった。

写真キャプション:イメージ図。スポットライト。画像は写真ACより

先日、友達が所属する大学のダンスサークルの引退公演を見に行った。普段の明るさを舞台上でも発揮して、楽しそうに踊っている友達の姿に心が癒された。

その公演を期に引退するメンバーを見ているとふと涙が出てきた。大学4年間という短い期間、人間関係や就活などで悩むことは沢山あっただろう。それでも、自分の好きなダンスに没頭している姿や最後の公演を全力でやり切った姿に心から拍手を送りたくなった。

しかし、そのサークルのパンフレットを見たときに私は別の意味で泣きたくなった。

メンバー紹介のページがあり、引退メンバー約30人分の写真と共に紹介文が載せてあった。その内容で悲しい気持ちになったのである。

「〇〇(サークル名)1の美少女で、竹下通りで4回もスカウトされた」「アイドルにしたいランキングNo. 1」「可愛いと言われすぎてて、ナンパのスルー力半端ない」「どの現場でも絶対にアプローチされる度No.1」「どんなに忙しくても、いつもまつ毛はクルンと上向き」

など、外見に対するコメントが非常に多かった。

舞台で見られる立場である以上、見た目に気を使う気持ちはわかる。鍛え上げられ、引き締まった腹筋は彼女たちの努力の賜物だ。一生懸命に自分を成長させている不屈さや健気さに心を打たれたのも事実である。

しかし、パンフレットを見ながらどうしても「お前らにはかわいい以外の魅力ないんか!!!」と叫びたくなってしまった。

彼女達の魅力は、容姿だけではないはずだ。例えば、メンバーの1人である私の友人も、魅力は容姿以外にもたくさんある。優しい面、努力家な面、負けず嫌いな面、パートナーの前だと少しふにゃふにゃしていて愛らしい面、表情豊かな面、挙げきれないくらいの沢山の魅力がある。

それにも関わらず、メンバーの外見にしか言及されていない状況にとても悲しくなった。男性メンバーだけのダンスサークルやスポーツの情報誌で男性メンバーが同じように紹介されていることは、圧倒的に少ないとも思う。

最初は、メンバー自身が作っているパンフレットなのにメンバーの容姿にしか言及のない点にひっかかりを覚えたが、もしかしたら容姿を評価されることが多く、彼女たちもそれを無意識のうちに受け入れてしまっているのではないかと考えるようになった。

彼女たちが書いているのは、自分達の容姿自慢ではなくて、悲痛な叫びなのかもしれない。

いつまで女性に対する評価軸に「外見」が入ってくるのだろうか。
いつまで女性は「見られる立場」でいなくてはならないのだろうか。

残念賞が溜まると...

そんなことを言いながらも、私自身、自己肯定感が下がると、なんとなく渋谷のスクランブル交差点か表参道あたりを歩いて、声をかけられるのを待っていることがある。

例えば、勇気を出して告白した子が、既にサークルの別の子と付き合っているとわかったとき。初めて男女4人でご飯に行ったら、男子2人が私ではなくもう1人ばかりに話しかけていたとき。「おしゃべりなのに意見は全然出さないんだね」と憧れの男性の先輩に言われたとき。

ちょっとした残念賞が心に溜まって、何となく沈んだ気持ちになるとき、私は渋谷や表参道を歩く。

写真キャプション:イメージ図。渋谷スクランブル交差点。画像は写真ACより

すると、稀にナンパに声をかけられる。

「お姉さんに一目惚れしちゃってー」「見た目がタイプでー」「今声かけなかったら一生後悔する気がしてー」

私のことを1ミリもわかっていない、おそらくその他大勢にも発されている、外見だけを評価する言葉。そんな言葉でも嬉しく感じてしまう。

「自分はまだ市場価値があるかもしれない」
「自分の外見に魅力を感じてくれる人がいるかもしれない」
そう思えるからだ。

結局、自分の内面にも外面にも、100%の自信を持つことが出来ない私は、分かりやすい誉め言葉が嬉しくて溜まらない。周りからの承認が、自分は価値ある存在だと思わせてくれる。

そんな風にきっと私は、これからもルッキズムに辟易しながらも、ルッキズムの恩恵のおこぼれを受けて、生きていく。

「かわいい」「かわいくない」
周囲からの評価に収まらない大きな自分にいつかなれるのだろうか。


執筆者:中川茜/Akane Nakagawa (外部ライター。東京都内在住の大学生。大学では経済学を専攻。興味分野は、ルッキズムやジェンダー、環境問題。)
編集者:清水和華子/Wakako Shimizu、原野百々恵/Momoe Harano


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