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能ある鷹は爪を隠す

 本当に有能な人間は、偉そうなことを言ったり、むやみに能力をひけらかしたりしないという例え。裏を返せば、大した能力のない人間ほど、いつも偉そうにしたり、弱い者には力を誇示するものです。優れた能力を持つ人物が日常生活では慎み深くふるまうことを称賛する一方で、空いばりする人物を暗に批判する表現と言えます。
 孫子の兵法(第一章 始計篇)に同じ意味合いの表現が出て来ます。

兵は詭道なり。故に能なるもこれに不能を示し、用なるもこれに不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓し、卑にしてこれを驕らせ、佚にしてこれを労し、親にしてこれを離す。その無備を攻め、その不意に出ず。これ兵家の勝にして、先には伝えべからざるなり。


以下の解説はこの本の内容とは異なります。いくつかの解説を合わせて換骨奪胎しています。

兵は詭道なり(戦争とは敵を欺くこと)
能なるもこれに不能を示し(自分に能力があっても、敵には能力がないように見せかける。できるのにできないふりをする)
用なるもこれに不用を示し(使ったことがある作戦を、敵にはそれを用いないように見せかける)
近くともこれに遠きを示し(近くにいても、遠くにいるように見せかける)
遠くともこれに近きを示し(遠くにいても、近くにいるように見せかける)
利にしてこれを誘い(敵に有利と見せかけて誘い出す)
乱にしてこれを取り(敵が混乱しているところを狙って奪い取る)
実にしてこれに備え(本当は備えが万全なのに、備えがないように見せかけて敵に備える)
強にしてこれを避け(本当は強いのに、わざと敵の攻撃を避ける)
怒にしてこれを撓し(本当は冷静であるのに、わざと感情的に見せかけて敵を翻弄する)
卑にしてこれを驕らせ(敵が謙虚である時は、こちらが卑しい態度に見せかけて、驕り高ぶるように仕向ける)
佚にしてこれを労し(敵に余力があれば疲弊させる)
親にしてこれを離す(敵国に与する他国と親しくして、敵国と他国の関係を不和へと導く)
その無備を攻め、その不意に出ず(敵が無防備な所を攻め、敵が想定していないような所に現れる)
これ兵家の勝にして(これは兵法の極意であるから)
先には伝えべからざるなり(予めどのような方法で勝つかは周りにも伝えることができない)

 敵の裏をかく。敵を欺くにはまず味方から。こういった教訓は上記のような兵法の考え方から来ているのだろうと思われます。戦国時代を描くドラマや小説にも出てくるような戦い方の裏技。直球勝負ではなく意表を突く攻撃、予想の斜め上をいく戦略と言えるでしょう。

こういった考え方は、別に戦争やスポーツに限らず、日常の人づき合いに当てはめても意外と使えることかも知れません。

 相手の疲れるペースに従うのではなく、相手を自分のマイペースに引き込む。そうすると、人生は少し楽になる。そんなことを考える兵法。



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ヨコ爺
<(ↀωↀ)> May the Force be with you.