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今宵この曲、夜明け前

刑事といえば、テレビドラマの「夜明けの刑事」。
1974年から1977年まで、TBS系列で放映されていた。
主演は坂上二郎で、石橋正次、石立鉄男、鈴木ヒロミツ、藤木敬士などが脇を固めてていた。 のちに石橋正次が抜け、そのポジションに水谷豊がついた。

坂上二郎の起用からわかるように、人情物の刑事ドラマであった。
私が熱心に観ていたのは、中学一年となる。ちょうど50年前。
このドラマが好きだったからか?
いや。
印象に残った回などないし、好きな役者もいない。
ではなぜ、このドラマを観続けていたのか?

劇中の挿入曲に、ぐっと来たのだ。

エンディングのクレジットにて、その挿入曲は、ポール・ロジャーズの「YOAKE NO KEIJI 」なるものだとわかった。
けれどこちらは13歳。名前も、加入していたバンドのことも知らない。
彼と彼のいたバンド、バッド・カンパニーを聴くようになったのは、後のことである。
ともかくそのリードボーカルが、日本の刑事ドラマの挿入曲を歌っていたのだ。

挿入曲を担当するに至った経緯はわからない。ただ、ポール・ロジャース夫人が日本人だったことが関係していたらしい。ともあれ今となれば、よくぞ受けてくれたという感謝しかない。


歌詞では、刑事の仕事を抽象的に語っていた。
乱暴に意訳してみる。

どこかで犯罪が行われている、
内面を探り、騙そうとする男を追い詰める、
彼らには太陽も月も必要ではない、
トワイライトゾーンにいるのだ、
彼らは夜明けの刑事だ、

といった内容。
つまり刑事ドラマの挿入曲であることを、きちんと意識して創られている。

ともかく挿入曲が聴きたいという理由だけで、私は「夜明けの刑事」を観ていた。
今思えば、こてこての昭和のドラマだったように思う。
なのにその曲が流れると、そのシーンだけ別の物語のように感じられた。
私は肌がゾゾっとし、これはなんというジャンルの曲なのだと、耳をそばだてた。そして、寂しいような嬉しいような、なんともいえない気分を味わったものだ。
もしかしたら、これが今に続く、ブルース好きの始まりだったのかもしれない。

けれど、である。
私の記憶では、この挿入曲はハーモニカが絡んでいたはずなのだ。
ネットで調べると、「ハープが入っていた」なる書き込みを見つけた。やはり間違いない。けれどハープ入りの映像は、YouTubeでは見つからなかった。
いつか、きちんとした音源を聴いてみたいものである。

とにかく、私をブルースという万力に固定した一曲だったことは間違いない。今聴いても、ぐっと来る。
この曲で、13歳の私はなにかの夜が明けたのかもしれない。

そういえば、夜明け前の闇が一番暗いという。
そうかもしれない。
いや、そうであってほしい。

2025年が、明けようとしている。


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山田深夜
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