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高度プロフェッショナル

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 今日は、高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働制)について簡単に説明します。

 先日のnoteで、従業員のダラダラ残業問題を軽く取り上げましたが、高度プロフェッショナル制度は、働く時間ではなく成果を重視しようという制度です。

 働き方改革関連法により創設されました。

 一定の年収があって職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者について、時間外労働・休日労働に関する協定の締結、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外する制度です。

この制度を導入するための手順は以下のとおりです。

労使委員会の設置

 まず労使委員会を設置しなければなりませんが、その委員会は次の要件を満たす必要があります(労働基準法41条の2第3項、38条の4第2項)。

① 委員の半数は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に厚生労働省令で定めるところにより任期を定めて指名されていること(※1)。
② 当該委員会の議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録が作成され、かつ、保存されるとともに、当該事業場の労働者に対する周知が図られていること(※2)。
③ 前二号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件(※3)

※1 管理監督者以外の者でなければならない(労働基準法施行規則24条の2の4第1項)
※2 使用者は、労使委員会の開催の都度その議事録を作成して、これをその開催の日(高度プロフェッショナル制度の決議については書面の完結の日)から起算して5年間保存しなければならない(労働基準法施行規則24条の2の4第2項)。
 議事録の周知については、使用者は、労使委員会の議事録を、次に掲げるいずれかの方法によつて、当該事業場の労働者に周知させなければならない(労働基準法施行規則24条の2の4第3項)。
一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
二 書面を労働者に交付すること。
三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
※3 労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項に関する規程が定められていること(労働基準法施行規則24条の2の4第4項)。

労使委員会の決議

 設立した労使委員会で以下の事項を決議します。

1 対象業務

 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務(※)のうち、労働者に就かせることとする業務を決議します(労働基準法41条の2第1項1号)。

※ 労働基準法施行規則34条の2第3項
一 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
二 資産運用(指図を含む)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
三 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
四 顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
五 新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

2 対象労働者の範囲

 以下のいずれにも該当する労働者のうち、対象業務に就かせようとするものの範囲を決めます(労働基準法41条の2第1項2号)。

① 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意(※)に基づき職務が明確に定められていること。

※ 労働基準法施行規則34条の2第4項
使用者が、次に掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあつては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)。
一 業務の内容
二 責任の程度
三 職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準

② 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(※1)(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額(※2)以上であること。

※1 厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額の1月分から12月分までの各月分の合計額(労働基準法施行規則34条の2第5項)

※2 1075万円(労働基準法施行規則34条の2第6項)

3 健康管理時間の把握

 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(労使委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間(※1)を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(健康管理時間)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法(※2)に限る)を決めます(労働基準法41条の2第1項3号)。

※1 休憩時間その他対象労働者が労働していない時間(労働基準法施行規則34条の2第7項)
※2 タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法とする。ただし、事業場外において労働した場合であって、やむを得ない理由があるときは、自己申告によることができる(労働基準法施行規則34条の2第8項)。

4 休日の確保

 1年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えることを決めます(労働基準法41条の2第1項4号)。

5 選択的健康確保措置

 次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずることを決めます(労働基準法41条の2第1項5号)。

① 厚生労働省令で定める時間以上のインターバル確保+厚生労働省令で定める回数以内とする深夜業の制限(1か月当たり)

② 健康管理時間の上限措置(1か月又は3か月当たり)

③ 1年に1回以上、2週間連続の休日を与えること(本人が請求した場合は1週間連続×2回以上)

④ 厚生労働省令で定める臨時の健康診断

6 健康管理時間の状況に応じた健康確保措置

 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であって、当該対象労働者に対する有給休暇(年次有給休暇を除く)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定める措置(※)のうち当該決議で定めるものを使用者が講ずることを決めます(労働基準法41条の2第1項5号)。 

※ 労働基準法施行規則34条の2第14項
一 選択的健康確保措置以外のもの
二 健康管理時間が一定時間を超える対象労働者に対し、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと)を行うこと。
三 対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。
四 対象労働者の心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
五 対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。
六 産業医等による助言若しくは指導を受け、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。

7 同意の撤回

  対象労働者の同意の撤回に関する手続きを決めます(労働基準法41条の2第1項7号)。

8 苦情処理措置

 対象労働者からの苦情の処理に関する措置を使用者が実施すること及びその具体的内容を決めます(労働基準法41条の2第1項8号)。

9 不利益取扱いの禁止

 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことを決めます(労働基準法41条の2第1項9号)。

10 その他厚生労働省令で定める事項

 その他、以下の事項を決めることが必要です(労働基準法41条の2第1項10号、労働基準法施行規則第34条の2第15条)。

一 法第41条の2第1項の決議の有効期間の定め及び当該決議は再度同項の決議をしない限り更新されない旨
二 法第41条の2第1項に規定する委員会の開催頻度及び開催時期
三 常時50人未満の労働者を使用する事業場である場合には、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師を選任すること。
四 使用者は、イからチまでに掲げる事項に関する対象労働者ごとの記録及びリに掲げる事項に関する記録を第1号の有効期間中及び当該有効期間の満了後5年間保存すること。
イ 法第41条の2第1項の規定による同意及びその撤回
ロ 法第41条の2第1項第2号イの合意に基づき定められた職務の内容
ハ 法第41条の2第1項第2号ロの支払われると見込まれる賃金の額
ニ 健康管理時間の状況
ホ 法第41条の2第1項第4号に規定する措置の実施状況
ヘ 法第41条の2第1項第5号に規定する措置の実施状況
ト 法第41条の2第1項第6号に規定する措置の実施状況
チ 法第41条の2第1項第8号に規定する措置の実施状況
リ 前号の規定による医師の選任

届出

 労使委員会の決議は、労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法41条の2第1項本文)。

対象労働者の同意

 また、書面その他の厚生労働省令で定める方法(※)により、対象労働者の同意を得る必要があります(労働基準法41条の2第1項本文)。

※ 労働基準法施行規則第34条の2第2項
 次に掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあつては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)とする。
一 対象労働者が法第41条の2第1項の同意をした場合には、同項の規定により、法第四章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されないこととなる旨
二 法第41条の2第1項の同意の対象となる期間
三 前号の期間中に支払われると見込まれる賃金の額

実施状況の報告

 使用者は、厚生労働省令で定めるところ(※)により、「決議事項4:休日の確保」「決議事項5:選択的健康確保措置」「決議事項6:健康管理時間の状況に応じた健康確保措置」の実施状況を労働基準監督署に報告しなければなりません(労働基準法41の2第2項)。

※ 労働基準法施行規則34条の2の2
① 決議が行われた日から起算して6箇月以内ごとに、様式第14号の3により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。
② 法第41条の2第2項の規定による報告は、健康管理時間の状況並びに同条第1項第4号に規定する措置、同項第5号に規定する措置及び同項第6号に規定する措置の実施状況について行うものとする。

是非利用してみては?

 結構、大変な手続きが必要ですが、一旦決めてしまえば、柔軟な働き方ができる可能性がある高度プロフェッショナル制度。

 是非利用を検討してみてください。

 

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