帰りの里
少々距離のあるこのまっすぐな道のりを
自転車で往復することは多い
向こう前のめりには
実に建物があったか
それとも薄暗い林の一帯だったか
そうした時間の切れ切れは
今では思い返すことで占われていくのみ
そんなある暮れの頃
最後の傾斜を走る時
思わず夢中で音を立てるが
側から耳慣れない足が集う
狸、親子
そうした姿が辺りを灯し
記憶にはない森の行末を熱らせた
不思議なもので
頭から滑り出した映像でも
知識としての地図や図解でもなく
出会うごとにたびたび生えてゆく
一つの色彩のようなものだった
ここへ草葉を触る時
私はまるごと帰ることができるのか