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山崎与次兵衛アーカイブ:三輪眞弘

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これまでWebページ、Blog記事などの形で20年に亘って公開してきた三輪眞弘さんについての文章をアーカイブ。
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#演奏会感想

モノローグ・オペラ「新しい時代」の再演に接して(前半)

モノローグ・オペラ「新しい時代」 作曲・脚本・音楽監督:三輪眞弘 演出・映像:前田真二郎 フォルマント音声合成:佐近田展康 14歳の少年信者:さかいれいしう 儀式を司る4人の巫女(キーボード):岩野ちあき、木下瑞、日笠弓、盛岡佳子 信者1(映像オペレーター):古舘健 信者2(音響オペレーター):ウエヤマトモコ 信者3(ミキシングオペレーター):大石桂誉 2017年12月9日(土)、愛知県芸術劇場小ホール このところ三輪さんの旧作の再演が続いていて、私もそのうち「歌えよ

「赤ずきんちゃん伴奏器」「東の唄」の再演を聴いて

2016年11月6日 アーツ千代田3331 2階体育館 「メディアパフォーマンスとは何か?IAMAS20周年から考える」 三輪眞弘:メゾソプラノとコンピュータ制御による自動ピアノのための「赤ずきんちゃん伴奏器」(1988) ソプラノ:太田真紀 三輪眞弘:2台のピアノと1人のピアニストのための「東の唄」(1922) ピアノ:寒川晶子 テクニカル・サポート:松本祐一 音響エンジニア:ウエヤマトモコ ステージ・マネージャ;後藤天 司会:松井茂 三輪さんの「赤ずきんちゃん伴奏

「舞楽 算命楽」日本初演を聴いて

聲明付「舞楽 算命楽」 日独交流150周年<創造する伝統>委嘱作品(日本初演) 雅楽:東京楽所 舞人 <東の舞人> 笠井 聖秀 <西の舞人> 小原 完基 鞨鼓 松井 北斗 太鼓 高多 祥司 鉦鼓 金澤 裕比子 笙 野津 輝男 中村 容子 篳篥 山田 文彦 四條 丞慈 笛 片山 寛美 植原 宏樹 声明:真言宗法響会・天台聲明音律研究会 2011年6月19日:東京オペラシティー コンサートホール (…)ここでもまた、日付の跨ぎ越しが起きていることに気付かざるを得ない。3月11

NEO都々逸シリーズ「せんだいドドンパ節」初演の感想

フォルマント兄弟(三輪眞弘・佐近田展康):NEO都々逸シリーズ「せんだいドドンパ節」(世界初演) MIDIキーボード:岡野勇仁 2010年8月28日サントリーホール・ブルーローズ(小ホール) 前日の管弦楽のガラ・コンサートに続いて、この日は室内楽のコンサート、全体は15:00からの第1部と 17:00からの第2部の2部構成で、総計20人の作曲家の20作品を10作品ずつ演奏していくというもの。 フォルマント兄弟の新作初演が含まれる第2部の開始にあわせてホールに着くと、昨日のコ

「弦楽のための369 B氏へのオマージュ」再演を聴いて

「弦楽のための369 B氏へのオマージュ」 秋山和慶指揮東京交響楽団 2010年8月27日サントリーホール・大ホール 芥川作曲賞20周年記念のガラ・コンサートは8月27日夜の管弦楽のコンサートと、8月28日の2部よりなる室内楽のコンサートより構成され、 室内楽のコンサートではこれまでの19回20人の受賞者全員の作品が1曲ずつ演奏されるのに対し、管弦楽の方はどのような選定基準によるものかは 杳として知れないが、受賞者への委嘱作の4曲が演奏されると予告されていた。三輪さんは管弦

「夢のガラクタ市」システム改訂版初演を聴いて

篠崎史子 ハープの個展XI ハープとエレクトロニクスの作品を集めて 2009年11月10日 サントリーホール ブルーローズ(小ホール) 三輪眞弘:「夢のガラクタ市」前奏曲とリート(1990/2009)システム改訂版 Trödelmarkt der Träume - Vorspiel und Lied - ハープ:篠崎史子、エレクトロニクス:有馬純寿 「夢のガラクタ市」が作曲されてからもう20年近い時間が経過しているけれど、この作品はCD「赤ずきんちゃん伴奏器」に収録されて

虹機械第2番「七つの照射」再演を聴いて

MUSIC DOCUMENTS 09 #4 あたらしいメディアが見せてくれる夢(企画:nothing but music) 2009年6月6日門仲天井ホール 三輪眞弘:虹機械第2番「七つの照射」(2008)Rainbow Machine #2 'Seven Radiations' ピアノ:井上郷子 虹機械第2番「七つの照射」の初演は今年(2009年)の1月24日に既に行われているのだが、残念ながら都合がつかず聴きに行くことができなかった。 井上郷子さんの演奏で再演されると

「愛の賛歌 4ビット・ガムラン」東日本初演を聴いて

「アート・コンプレックス2008 第2夜 三輪眞弘プロデュース 愛の賛歌 4ビット・ガムラン」 2008年11月24日神奈川県民ホールギャラリー 三輪眞弘「愛の賛歌 4ビット・ガムラン」(東日本初演) 演奏:マルガ・サリ、美術:小金沢健人、解説:三輪眞弘 ガムラン・アンサンブルのための作品「愛の賛歌」は初演以来これまで何度か再演されているにも関わらず、その場所が私の在所からは 遠隔であったため、これまで聴く機会を得なかった。それがいよいよ横浜で演奏されるということで、神奈

「シリーズ音の洪水 vol.1 現代音楽の冒険 三輪眞弘の世界」を聴いて

「シリーズ音の洪水 vol.1 現代音楽の冒険 三輪眞弘の世界」(主催:洪水企画) 2008年10月11日新宿文化センター小ホール ステージ鼎談 「音楽は三輪眞弘にどんな冒険を命じたか」 西村朗/小沼純一/三輪眞弘 三輪眞弘「虹機械 ふたりの奏者のための単旋律」(世界初演) 演奏:ROSCO (ピアノ:大須賀かおり ヴァイオリン:甲斐史子)、作品解説:三輪眞弘 「洪水」誌を主催されている池田康さんが三輪さんのコンサートを企画され、そこで新調性主義による新作が発表されるとい

「蝉の法」を4種類のアングルハープで聴き比べる

ブリヂストン美術館レクチャーコンサート「古代ギリシアのアングルハープ 復元と演奏」 レクチャー:木戸敏郎、演奏:西陽子 2008年5月30日(ブリヂストン美術館ホール) 三輪さんの「蝉の法」は、昨年台風の中で決行された三宅島での「手順派合同祭」の記録を通して聴くことができていて、 その音楽の素晴らしさとともに、西陽子さんの演奏の群を抜いた素晴らしさに深い感銘を受けていた。別のところで繰り返し書いているように、 私は「逆シミュレーション音楽」に納得し切れていない部分があり、そ

「Musica ex Machina ―機械じかけの音楽 記念コンサート 自動ピアノ演奏会」を聴いて

「Musica ex Machina ―機械じかけの音楽 記念コンサート 自動ピアノ演奏会」 2007年10月31日東京大学駒場博物館 三輪眞弘/入鹿山剛堂、ヒンデミット、トッホ、ナンカロウ、ゴチェフスキ、古川聖、山本純ノ介/土佐尚子の作品 自動ピアノというものの存在を初めて認識したのは、私の場合、マーラーがヴェルテ・ミニョンに残した幾つかの演奏記録によってだった。 1911年に没したマーラーは、時代を代表する指揮者であったにも関わらず、残念ながら指揮者としての演奏記録が

弦楽四重奏曲「皇帝」を聴いて

弦楽四重奏曲「皇帝」 クァルテット・エクセルシオ(西野ゆか、山田百子、吉田有紀子、大友肇) 2007年2月24日紀尾井ホール「日本の作曲・21世紀へのあゆみ シリーズ第3期(1976年~2000年)・III[最終年]第37回 室内楽の諸相V ~1990年代」 [おことわり]:この文章で扱う上記作品には、(「驚愕」交響曲の作曲者ハイドンの精神に則り!?)ある「仕掛け」が施されています。以下の文章は事実上、 その「仕掛け」の「種明かし」になってしまっていますので、予めご了承くだ

「再現芸術における幽霊、またはラジオとマルチチャンネル・スピーカーシステムのための、新しい時代」を聴いて

「再現芸術における幽霊、またはラジオとマルチチャンネル・スピーカーシステムのための、新しい時代」(世界初演) 2007年2月18日東京日仏学院エスパス・イマージュ(CCMC2007) CCMC2007というのは、アクースモニウムと呼ばれるマルチ・チャンネルスピーカーシステムで再生される作品の演奏会で、 流れとしてはシェフェールやアンリ等のミュージック・コンクレートの系統のようだが、ここで三輪眞弘の新作が発表される ということで、東京日仏学院に出かけた。 会場は日仏学院の2階

「弦楽のための369 B氏へのオマージュ」を聴いて

「弦楽のための369 B氏へのオマージュ」(世界初演) 小松一彦指揮新日本フィルハーモニー交響楽団 2006年8月27日サントリーホール 今回のコンサートに行く前に、前作にあたる「弦楽六重奏のための 369 Harmonia II」―その初演に立ち会うことは残念ながら出来なかった―の 作曲者自身によるプログラムノートを読んだ私の心の中には、その文章の以下の部分がひっかかっていた。 上の発言は私にとって非常に刺激的で重要なもので、実はこの新作初演に先立って、それに関して思っ