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宵々小灯~2000字以下の掌編小説~

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「宵々小灯」(よいよいこあかり)と称した、自作の2000字以下小説のまとめです。ツイッターでは「#宵々小灯」で公開しています。フリー朗読台本として公開している作品もありますので、…
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2022年4月の記事一覧

真夜中インク【短編小説・フリー朗読台本】

 深夜の二時に、明かりを消してベッドに入る。  すると暗闇がまるで呼び水のようになって、胸の奥で何かが疼く。  それを具体的に何と言ったらいいか、わからないけれど、一言で言えば「もやもや」だった。音はしないがひどくうるさくて、本当に気持ちが悪いわけではないものの吐き出したくて、とにかく何か悪いもので、熱にうなされるように、私は何度も寝返りを打つ。  ついに息が詰まりそうになって、起き上がる。  こういう時は注射器がいい。  注射器を手にとって、胸に刺す。ちくりとした痛み

R.I.P. Star【短編小説】

 紺碧の帳に、一筋の光が流れる。  緩く弧を描くように駆けていくそれを見て、僕は目を瞑り、手を握り合わせて祈る。 「ひどいよなぁ、こんな俺に、願いをかけようなんて」  聞こえたのは、流れ星の声だった。 「どうして俺達に願い事をするんだ? 俺達に願いを叶える力なんてない。俺達は死にゆく不幸な光なのに」  考えて、僕は星に答える。 「幸せって、不幸の上に成り立つじゃないか。それなら、君に願うのは正しいよ。君の不幸が、僕の幸せになるよう、願うんだ」  次の瞬間、流れ星が