R.I.P. Star【短編小説】
紺碧の帳に、一筋の光が流れる。
緩く弧を描くように駆けていくそれを見て、僕は目を瞑り、手を握り合わせて祈る。
「ひどいよなぁ、こんな俺に、願いをかけようなんて」
聞こえたのは、流れ星の声だった。
「どうして俺達に願い事をするんだ? 俺達に願いを叶える力なんてない。俺達は死にゆく不幸な光なのに」
考えて、僕は星に答える。
「幸せって、不幸の上に成り立つじゃないか。それなら、君に願うのは正しいよ。君の不幸が、僕の幸せになるよう、願うんだ」
次の瞬間、流れ星が断末魔を上げた。強い輝きを放って砕け散る。あとは闇に消えてなくなった。
その時僕は、少し星が可哀想に思えた。
彼は知らない。死の間際こそ、彼が一番輝き、また彼の命に意味があった瞬間だったと。
それを知らずに彼は死んだ。
けれども彼は、沢山の流れ星の、一つにすぎない。
ああ、次の流れ星がやってくる。また手を握り合わせて幸せを願おう。
今日も沢山の星が流れる。沢山の星が死ぬ。
沢山の不幸が生まれたのなら、沢山の幸せも生まれるはずだ。
その幸せを、拾い集めるのだ。
流れ星に祈るその様子は、姿だけは、彼らの安らかな眠りを祈っているように見えた。
【終】
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