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言葉の宝箱 0344【いいじゃん、失敗しても。やりたいことがあるんだったらやった方がいい】

鉄道旅01

『夢より短い旅の果て(鉄道旅ミステリ 1)』柴田よしき
(角川文庫 2015/9/25)

『夢より短い旅に出る【横浜高速鉄道こどもの国線】』
『夜を走る【急行能登】』『非行少女の時をゆく【北陸鉄道浅野川線】』『絶景へと走りこむ【氷見線】』『いつか終わる旅【JR日光線】』
『長い、長い、長い想い【飯田線】』
『新しい路【沖縄都市モノレールゆいレール】』
『旅の果て、空のかなた【JR常磐線】』八話連作短編集。

この解説を有栖川有栖がとても明解に記し、本文へと誘う。
読めば読むほど、鉄道旅に出たくなった。

・二〇〇九年の春。
ヒロインの四十九院香澄はある目的を持って広島から上京し、
鉄道好きでもないのに西神奈川大学の鉄道旅同好会の入会を希望した。
名称から推測されるとおり、
そのサークルは鉄道での<旅>を愛するサークルで、
香澄は正会員になるため
webサイト向けの記事を書くという課題を与えられてしまう。
「学校からそんなに遠くなくて路線が短い」という理由で
横浜高速鉄道こどもの国線を選んだものの、
たった三駅しかないから短すぎてレポートのまとめようがない、
と困っていた……。
始発駅と終着駅を何度も行ったり来たりするだけで
改札口から出ようとしない乗客を見掛け、
その謎めいた行動の裏に隠されたドラマを知る。
この短くも印象的な旅を皮切りに、香澄は八つの路線への旅に出る(略)
行き先々で謎がまとわりついてくるのだが、
旅の空の下で香澄の視界は次第に広がっていく。
鉄道旅を満喫するために入会したわけではなかったのに、
少しずつその面白さに目覚め、
鉄道への愛しさと旅する喜びが彼女のなかで育つ P338

・電車には人が乗る。
人が乗れば、乗った人の数だけ、出来事があるもんです P29

・列車に乗って旅をすることそのものが、夢なのだ。
出かけて戻って来る旅の間の出来事は、本当は起こっていないこと。
列車で遠くに運ばれているのはからだではなく、
夢の世界にさまよいこんだ、こころだけ P53

・丁寧に喋った方が楽なんです。ずるいんだろうなあ、俺。いや、僕。
誰に対しても ………… 世の中すべてに対して距離をおく。
その方が楽なんです。よくないことなんだろうな。
他人行儀とか慇懃無礼って、相手に失礼ですよね。確かにそうだ。
不愉快だったら申し訳ない P80

・何かに夢中になっている人間を軽蔑する風潮って、
いつの時代でもあるんじゃないかな。
まあ誰しも、自分に理解できない世界に生きている人には、
理由のない恐怖を感じるものなんでしょう P103

・旅、というのは、戻るから旅なんです。帰るから、旅なんです。
戻らないでどこまでも旅を続けてしまうのは、放浪なんです P114

・いじめってさ、結局、みんなで群がってるからできるんだよね。
一対一なら喧嘩だから、自分が負けることだってある。
でもさ、いじめだと、
自分は大勢の方にいるから絶対に負けない、安全なんだよね。
 卑怯だよね P143

・いいじゃん、失敗しても。したいことしないと損だよ(略)
やりたいことがあるんだったらやった方がいいと思うよ P146

・旅は休息でもあるんだね P157

・仲の良さそうな初老の夫婦が、手を繋ぎながらホームに降りて行った。
羨ましい、と思った。
ああして人生の終盤にさしかかった時、
自分には、手を繋いで旅をしてくれる人がいるのだろうか P230

また、あとがきに、こう記されている
・今、この時は、二度とない時。
人生の瞬間、瞬間が唯一無二なのです P331

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