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言葉の宝箱 0949【大切なのは、身体の回復力さ。毎日のきちんとした食事、適度な運動、そして何があっても大丈夫と思う心。そういうものを養うことによって生まれるものさ】


『イエロー・サブマリン 東京バンドワゴン⑮』小路幸也(集英社2020/4/30)



四世代が同居する堀田家には今日も不思議な事件が舞い込む。
伝説の作家のアトリエに潜む秘密、紺に届いた盗作を訴える手紙、
古本を定期的に買っては店に置いていくミステリアスな少女、
藤島とパートナーになった美登里につきまとう過去の亡霊。
バンドワゴンの面々は「LOVE」という強い絆を持って立ち向かう。
〈東京バンドワゴン〉シリーズ第15弾
『夏 絵も言われぬ縁結び』
建築会社を経営する篠原新一郎が堀田家に相談を持ち掛けてくる。変わった家の解体を依頼されたが、本当に壊していいものか悩んでいるという。どうやら小説家か画家のアトリエに使われていたらしい。調べに入ったところ、屋内から血の付いた本が見つかり……。
『秋 元のあなたの空遠く』
増谷裕太と会沢夏樹が今の借家を取り壊し、来年着工予定で家を新築する準備に入る。一方、小説家として名の知れてきた紺の元に盗作を訴える手紙が届く。戸惑いの隠せない堀田家だったが、それに加えて青の妻、すずみの子宮筋腫摘出手術の日取りが決まり……。
『冬 線が一本あったとさ』
かずみが堀田家の面々の米寿の祝いや成人式の祝いにやってくる。久しぶりに堀田家を訪れるかずみは、自身がいるホームの入居者の中に地方の古本屋がいて蔵書の引き取り手を探しているという話をする。その傍ら、古本を店に買い置きする中学生の女の子が現われ……。
『春 イエロー・サブマリン』
我南人のバンド「LOVE TIMER」がドラムス担当・ボンの死を乗り越え活動を再開。研人は高校を卒業したら進学はせずにプロのミュージシャンになることを表明。幼馴染で彼女の芽莉依は東京大学の入学試験を間近に控え……。


・たとえどんなに素晴らしいものでも、
それが認められずに時の流れの中に消えてしまうことはあります。
忘れたくない良い思い出になったとしても、
時が経てば経つほどその輪郭が薄れていき、
ぼんやりとしてしまうものです(略)
良いことも悪いことも、残したいもの消したいもの、
すべてを平等に押し流していきます。
その時の流れを押し留めて、良きものをきちんとした形にして残し、
後世に伝えられるというのが人間の知恵というものでしょう P107

・お金さえあれば何でもできる時代ですけど、
そんなにお金がなくても
熱意と創意工夫で何とかできることもたくさんありますよ P131

・身体を動かしてこそ頭も動くものなのよ P149

・人の縁とは本当に不思議なものです。
どこで出会いどこで別れて、
そしてその糸が繋がっていくのか切れていくのか誰にも分かりません(略)縁があり出会った人とよい関係を築けたのなら、
たとえそれから一生会わなくなったとしても、
良き思い出としてその人のことを思っていけます(略)
たくさんの人に出会える方が、良いとわたしは思います。
出会わなければ良かったと後で思ったとしても、
その思いもまた人生を彩ってくれますよ P196

・大切なのは、身体の回復力さ(略)
免疫力ってのもあるけれど、要するに生きる力だよね。
そういうものはね、毎日のきちんとした食事、適度な運動、
そして何があっても大丈夫と思う心。
そういうものを養うことによって生まれるものさ P209

・人が人を思いやる心というのは、いろいろあると思います。
好きとか嫌いとかという男女の云々とは似ているようでも、違いますよね。思いやる心、思いやる気持ちは、
もっと広かったり、大きかったり、深かったりするような気がします。
そしてその気持ちは必ず伝わりますよね P256

・家は、暮らすところです(略)
それは、単純に雨露をしのぐというだけのところではないですよね。
きっと、心の拠り所なのですね。支えとなるもの。
たとえどんなことが起ころうとも、そこに帰りさえすれば、
もう一度立ち直り歩きはじめることができる場所。
それが家なんだと思います(略)
それは、建物という意味だけでなく、人でもあるのかもしれません。
この人さえいてくれれば、この人さえ生きていてくれたら、
自分はどこへでも行ける。どこまでも歩いていける。
あるいは、この人のいるところに帰れれば、
どんなに傷ついてもまた傷を癒して飛び立っていける。そういう、場所。
幸せを求めるというのは、そういう場所を求めることなのかもしれません。今はまだ見つからなくても、そして消えてしまっているとしても、
それを求めるからこそ、人は強く生きていけるのかもしれませんね P308


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