言葉の宝箱 0538【たとえ明日の希望がなくとも、人は生きてゆかねばならない】
『緋友禅 旗師・冬狐堂』北森鴻(文藝春秋2003/1/30)
旗師とは店舗を持たない古物商のこと。
旗師・冬狐堂こと宇佐見陶子は銀座の画廊で見たタペストリーに魅せられ、現金で全作品を買う約束をするが、期日になっても作品は届かず、それどころか作者は死に、作品は消えていた。
騙し合いと駆けひきの骨董業界を生き抜く
美貌の一匹狼を描く古美術ミステリ。
『陶鬼』『「永久笑み」の少女』『緋友禅』『奇縁円空』4話連作短編集
・愛情の形が一様である必要は、どこにもない。
むしろ簡単に天秤にかけられる愛ならば、
あるいは簡単にどちらかに針を振らしてしまえるような愛ならば、
誰も苦しむことはなかったのではないか P41
・創造を生業とする人間にはあまり常識人はいない。
日常と理性とでは抑えきれない激しい感情、エネルギーを有するからこそ、創造者は創造者たり得るともいえる P92
・ウブじゃ、生き抜いてはいけないもの P120
・生きてゆく。
たとえ明日の希望がなくとも、人は生きてゆかねばならない。
手に職もなく、非力なちっぽけな存在であっても、
生きることを考えなければならない P178