言葉の宝箱 0962【どうせ死ぬなら、跡をきれいにしよう】
印刷工場を経営していた
笠井武は友人の連帯保証人になったことから莫大な借金を抱えてしまった。
苛烈な取り立てから逃げた先の無人の寺で一夜を過ごし、
首をくくろうかと考えていた
彼は町の老人たちに新しい住職と勘違いされる。
「ポックリ逝かせてほしい」と懇願された笠井が事情を尋ねると、
彼らはシャッター商店街の老店主たちで、
もう生きていても仕方ないと言う。
老店主たちに頼られたニセ坊主の思いつきで町と人々を再生、
希望が湧いてくるエンターテインメント。
・人間は、
誰もが誰かのために役に立ちたいと思っているのでございます(略)
たとえどれだけ儲かろうとも、
他人が喜んでくれなければ意味はありません。
お客様が笑顔になるような仕事がしたいのです P274
・店を開けていても開けていなくても客は来ない。それが実情だった。
みんな、それが嫌だったのだ。
生きているのか死んでいるのかわからないような日々が何年も続き、
ポックリ死んでいくのが唯一の望みだったところに俺の提案があった。
どうせ死ぬなら、跡をきれいにしよう。
みんなそう考えたのかもしれない P275