言葉の宝箱 0373【困ったなあ、言いたいことも自由に言えないなんて】
仏像めぐりが趣味の編集者阿部美果は京都・大覚寺で行方不明になった娘を探す男と出会う。数日後、その娘らしい女が変死体となって発見され、美果は行き合わせたフリーライター浅見光彦と事件の真相を追い始める。
やがて半世紀前に起きた新薬師寺の香薬師像盗難事件との意外な接点が浮かび上がる。
・「ミステリー」と銘打つからには、
あたかも必要悪のごとく殺人事件が起きなければならないのですが、
この物語はそんなものがなくても十分に面白い。
この本の中で奈良や京都を旅して、仏像や寺院を拝観し、
会津八一の歌ごころに酔いながら平城山を越えれば、
あなたは浄瑠璃寺あたりで行き惑い、いつの間にか、
浅見クンと一緒にミステリーの世界を彷徨っていることでしょう
*講談社ノベルス版『平城山を越えた女』に「著者のことば」
・困ったなあ、言いたいことも自由に言えないなんて P89
・ひとつのことに取りつかれたときの人間のひたむきさには、
たしかに魅力があるし、美しくもある。
しかし、何かにのめり込むということは、
平常心を失う危険性をつねに内包している P103