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言葉の宝箱 0146【欲しいからではなく必要だからだ】
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陸上選手から自転車競技に転じた
白石誓はプロのロードレースチームに所属。
各地を転戦していたヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。
アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。
かつての恋人との再会、胸に刻印された死。
青春小説とサスペンスが融合を遂げた大藪春彦賞受賞作。
・教えてほしい。
どこからやりなおせば、この結果を避けられるのだろう。
後悔せずに済むのだろう P7
・嫌いだよ(略)
嫌いだからやるんだよ P32
・欲しいからではなく、必要だからだ P34
・ぼくは、口に出して言ってみた。
口に出してみると、そのことばは急に嘘の気配を帯びた。
それが嘘なら、どんなによかっただろう。
ぼくの心の一部は、あの日から動くことを止めている P48
・負けたって失うものはない。
ならば、やってみるしかない P159
・今、ぼくの心を埋め尽しているのが、悲しみかどうかすらもわからない。たった一滴の涙すら流さなかった。悲しみではないのかもしれない。
だが、この暗く深い喪失感をどうすればいいのだろう。
悲しみなら、まだ泣き叫ぶことで表現できる。
悲しみですらない感情を、人はどうやって処理できるのだろう P197
・「やっぱり止めとけよ。憎む相手なんかいない方がいいんだよ」
そうかもしれない。
たとえば、憎しみが喪失感を少し軽くするのだとしても、
憎しみなどない方がいいのだ。
どちらにせよ、彼はもう戻らないのだから P226