昭和の暖、「豆炭あんか」ってなあに。
子どもの冬休みの宿題に「昔のくらしを調べよう」というテーマがあった。
なにかないかなあ……と思いながら、年末年始に夫の実家に帰省した機会に、義父(=おじいちゃん)と義母(=おばあちゃん)に聞いてみることにした。
昔の道具をたずねる
「おばあちゃん、むかしの道具でなにかない?」
「う〜ん、そやね」
しばらく考えこみながら出てきたのが、「豆炭あんか」だった。
「なにそれ?マメタン?アンカ?」
炭をケースにいれ、夜寝るときにおふとんの中にいれてあたためるもの、とおばあちゃんは説明してくれた。
つづけて、おばあちゃんはこう言った。
「畑にある倉庫に、たしか◯◯おじさんがほかしてたのがあったはず」
「そうなの?本物があるの?」
それはぜひみにいってみようと、宝探しのようにワクワクしながら、みんなで畑の倉庫へ行った。
トタンの倉庫へはいると、農機具のほか、なぜだか家庭の不用品まであった。その中から、おばあちゃんは探す。
「あったあった」
段ボールから出してきたのが、こちら。
「わ〜すごい」
「お弁当箱みたいだね」
かなり使い込まれているというか、使用感満載のままこの倉庫へ捨てられていて……。わたしはこの状況に軽く衝撃をうけた。夫の実家のことなのでそっとしておく。
最後にお使いになったのは、いったい何十年前なのか。
さておき「豆炭あんか」とは、いったいなんぞや。ちょっと調べでみました。
豆炭あんか
豆炭あんかってなあに
NHKアーカイブスにわかりやすい説明があった。豆炭を使用する芝居動画もあっておもしろい。
湯たんぽとか、電気あんかとおなじ役割だ。電気あんかといえば、我が実家で使っていたタイプは、こちら。うちもこのピンクだったなあ。
夫が小さかったころは、まだ豆炭あんかを使っていたそうだ。母親がコンロの上に網をのせて豆炭に火をつけていたこと、豆炭あんかを布でつつんでふとんの中にいれてくれたこと、いまでも覚えているそうだ。
夫の実家では、古いものでも大切に使っている。地域性や文化も関係しているかもしれない。
しかし、豆炭あんかは、利便性や安全性から問題もあるのだろう。さすがにいまは使っていない。
衰退した理由
時代と技術の進化により、豆炭あんかは徐々に使われなくなっていった。その理由は、いくつか考えられる。
電気毛布やホットカーペットの普及
電気を使った暖房器具は、より安全で温度管理がしやすいため人気が高まってきた。燃料入手の難しさ
豆炭そのものを扱う店が減り、燃料の調達がむずかしくなってきた。メンテナンスの手間
豆炭の火起こしや火消しの手間がかかるため、便利な電気製品に取って代わられた。
脱炭素・カーボンニュートラルな社会
豆炭が使われなくなったころにはこの考え方はなかったと思うが、いまは脱炭素やカーボンニュートラルの意識が高まっている。
豆炭は、炭を圧縮して作った燃料で、燃焼時にCO₂を排出する。豆炭自体は効率的な燃料ではあるが、現代の脱炭素社会では、CO₂排出を抑えることが求められるため、環境負荷の高い燃料となる。
まとめ
今回の帰省で出会った「豆炭あんか」は、少ない燃料で最大限のあたたかさを得るという、昔のくらしの知恵がつまった道具だった。炭のぬくもりでふとんをあたためる姿は、家族のあたたかさを感じさせるものである。
便利な電気製品が普及した現代では見かけなくなったが、古い道具にふれると、時代の移り変わりや人々の工夫にあらためて気づかされる。
環境への配慮が求められる今、道具そのものの役割は変わっても、「大切に使う心」は受け継いでいきたいものです。
最後までお読みくださりありがとうございました。