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読めない本と、息子の熱

本が読めなくなった。

図書館でうつに関わる本をいくつか借りて来たが、文が頭の中に入って来ない。文字がふよふよと散っていき、何度も文章を読み返す。

何もかも出来なくなってしまった。悔しい。
てんちむのように悔しい悔しいと涙を流してみたいが、見苦しいので出来ない。

もう一度、文章がきちんと読めたら、いろんな作家の本が読みたい。もう一度、もう一度、それだけを願う。そして、いつの日か自分の書いた本を出版したい。それだけが、夢だ。

息子が熱で保育園を休んだ。
身体は動けず、午前中は寝ているだけ。ため息を吐く妻の声を聴きながら、ただ寝ている。

神様。どうか見ているのなら、普通に生きていくだけの力をもう一度ください。普通に朝起きて、普通に生活し、普通に仕事をする力をください。ただ、それだけでいいんです。

息子の熱は、お薬を飲んで良くなった。明日からは保育園に行けるだろう。
自分の病気も、子どもの起こす熱のように、薬を飲んだら治ってくれたらいいのに。

熱なんかまるでなかったように、プラレールを遊ぶその横顔は、じつに美しかった。

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