劇場版「ハイキュー‼」を見て、ムラムラしたという話
今回は、劇場版「ハイキュー‼ゴミ捨て場の決戦」について書いてみたいと思う。
これ、興行収入的にめっちゃヒットしたんだよね。
しかし、これの内容は「TVアニメ4期の続き」となっており、つまりどっちかというと、<一見さんお断り>に近いニュアンスがあるんだよ。
つまり観客はTVアニメを見てること前提で、そのへんは「ドラえもん」や「名探偵コナン」や「ドラゴンボール」や「ワンピース」などの劇場版とは少し趣きが違う。
当然、集客には不利な条件だったと思う。
ところが、なんと興収、まさかの116億!
・・これ、どゆこと?
「ハイキュー‼」って、そこまで人気あったんか?
・・あった、ということだろう。
特に、女子人気が高かったかも。
イケてる男子の品評会みたいなアニメだし。
男性声優もイケてる人たちがズラリ勢ぞろいで、女子にはタマらないものがあるのかもしれない。
といっても「腐った描写」がほぼゼロなので、当然男子にもウケがいい。
欲を言わせてもらうなら、もう少しカワイイ系の女子キャラがいてもいいと思うんだが・・。
そして、「ハイキュー‼」でよく聞くのが、異様なほど海外で人気が高いという話である。
それをよく理解できるのが、海外のリアクション動画だね。
めっちゃ面白いので、ちょっと見てください↓↓
・・こいつら、うるさすぎ(笑)!
外国人って、皆こんなハイテンションでアニメ見てるのかよ?
まぁ、上記の興収に海外は関係ないと思うけど、とにかく国内外を問わず、人気があるのは確かなようだ。
そして、その人気を支えてるものは
この作品がもつ<圧倒的な普遍性>
だろう。
実際、人種、国籍、年齢、性別、バレーボール経験の有無を問わず、みんな熱狂している。
誰にでも通じる分かりやすさ、誰にでも共感できるストーリー、まぁ率直にいえば<スポ根の王道>か。
スポ根、古くは「巨人の星」「アタックNo1」「あしたのジョー」「エースをねらえ」「ドカベン」「キャプテン翼」「スラムダンク」、いつの時代でもスポーツを題材にしたアニメは人気を博したものである。
ただ、このジャンルは<先人たちがやり尽くした>感があり、いまどきのはどうしても「変化球」に走るクセがあるかと。
たとえば「ブルーロック」とか。
幸い、野球やサッカーと違ってバレーボールはそれほど手垢がついてないというところもあり、そこは「ハイキュー‼」が王道を貫けた大きな要因。
ただ、ひとつだけ難を言うなら、スポーツ系アニメには<緊張感>における課題というものがあるよね。
題材がスポーツだから、当然そこには<勝った/負けた>があるんだが、もし仮に負けたところで、別にそこで命を落とすわけではない。
そういう意味では、常に死との背中合わせの緊張にある他のアニメ群と比較すりゃ、スポーツはどうしても<ヌルい>という印象になっちゃうわけさ。
で、そこを敢えて逆手にとり、劇場版「ハイキュー‼」の中では、こういうセリフがあったよ。
「俺達が負けたところで、勝ったところで、誰も死なないし、生き返らないし、悪は栄えないし、世界は滅びない」
これは明らかに一種のアイロニーで、言うなれば「異世界ファンタジー」が全盛の今のアニメ界における「ハイキュー‼」のポジショニングを、敢えて自虐的に表現したのかもしれない。
これを、上の画の少年、孤爪研磨が劇中の終盤で語るのよ。
この研磨というのは異世界系のゲームが大好きな少年で、どっちかというと彼の中では【ゲーム>バレーボール】という認識。
現実よりゲームの方が世界観として面白い、という価値観なんだろう。
ただ、彼はバレーボールにおいて正真正銘の天才であり、こういうキャラ、確か「ブルーロック」にも全く同じ系統のがいたよね(笑)。
・・でもさ、今回の研磨は試合を終えて、上のモノローグを語った後、
「あぁ~、(試合)面白かったぁ~!」
と言って、コートで満足気な笑顔になるんだ。
「ハイキュー‼」ファンとしては、もうこれを見られただけで大満足だったんじゃないだろうか?
それと同時に、これは「異世界ファンタジー」全盛のアニメ界に対し、
どや?スポ根の「ハイキュー‼」、面白かっただろ?
という揺るぎない自信の表明にも思えた。
この劇場版、もはや研磨が主人公といって過言ではなかったと思う。
・・だってさ、ゲームセット前の約2分間、まぁ、その2分がクライマックスだったんだけど、そこはもう完全に<研磨主観カメラ>の映像だったもんね。
あの主観映像、ビックリしたわ~。
その約2分間だけはBGMも消されて、研磨の(*´Д`)ハァハァという息使いだけが延々と続く展開。
こういう<主観カメラ>、私はアダルトビデオの専売特許かと思ってたので、なんか少しあれ見てムラムラしたのは私だけ?
・・いやいや、でもあの2分間って、アニメーション的にはもう<アニメ史に残る伝説>の領域だった気がするよ。
マジで、今まで見たことないような感じの質感だったもん。
・・ちょっと私、主人公じゃない方のキャラに感情移入しすぎ(笑)?
いや、だってさ、作中の登場人物の中で、結局は研磨が一番<我々>に近い思考回路だと思わない?
他のキャラ、あそこまで熱くバレーに狂える体育会系の彼ら、逆にちょっと頭おかしいって。
そういう意味じゃ、研磨こそが<我々>視聴者の代表なのさ。
さて、少し話題を変えるが、「ハイキュー‼」はこの劇場版制作にあたり、当然だけど意識したのが、この「THE FIRST SLAM DUNK」↓↓であることは間違いないだろう。
・・まぁね、この作品は日本アニメ史全体から見てもトンデモない水準の3DCGだったわけで、これと同じく「ひとつの映画で、ひとつの試合を全て描き切る」という企画を「ハイキュー‼」側が立てたという時点で、もうProduction I.Gにとっての<勝負>だったと思うのよ。
東映アニメーションに負けてたまるか!と。
確か、「THE FIRST SLAM DUNK」は興収164億だったので少し及ばなかったが、いや、まだ勝負はついてない。
世界興収が、あっちは390億。
こっちは海外人気が異様に高い「ハイキュー‼」だけに、今後の海外展開によっては逆転も狙えなくはないだろう。
確か、この映画はまだ国外に配給(ハイキュー)されてないよね?
じゃ、次はこの作品の映像について。
本作は、「SLAMDUNK」を意識してというわけじゃないにせよ、かなり3DCGをフル活用してたと思う。
やっぱり球技だからね、試合の描写は<カメラ>を縦横無尽に、より立体的に動かしていってこそナンボだし、そういうのは手描きよりも3DCGの方が圧倒的に強みがある。
ただ、本作が「SLAMDUNK」と違うのは、それでもインパクトとしては2Dとしての印象が強く残るのよ。
つまり、画にはアナログっぽさもきっちりあったということ。
私は「ハイキュー‼」の愛読者というわけじゃないから詳しくは分からないんだけど、多分この作品って、「漫画」として非常に巧く作られてると思うのね。
私のようなシロウトがパッと見ても、「うわっ、レイアウト巧いな!」とか理解できるぐらいだもん。
あと効果線や擬音の使い方も絶妙で、静止画だというのにコート内の躍動感がひしひしとこっちに伝わってくる。
これぞ、<漫画としての魅力>。
当然アニメ化の際にも、この<漫画としての魅力>をできる限り再現しようと制作スタッフが必死に頑張ってるんだろうけど、私は<漫画>と3DCGはどうしても相性が悪いものだと解釈してるんだ。
それを強く感じたのは、他でもなく「THE FIRST SLAM DUNK」なんです。
あの映画はアニメとして間違いなく最高水準だったのに、一部の原作ファンからは、そこそこのブーイングが出てたと思うのよ。
・・まぁね、その原作ファンの気持ちは分からんでもないわ。
やっぱ、がっつり3DCGにしたことにより、リアルさが出た分、原作が持つ<漫画としての魅力>がごっそり削りとられてたのは一応の事実だったからさ。
なんか、正直<上質な別のモノ>になっちゃってたと思う。
で、「ハイキュー‼」の制作スタッフも、そこは十分に分かってたと思うのよ。
だからこそ、できる限り<漫画らしさ>を残そうと努力してたんじゃないかな?
イコール、それは3DCG感をできる限り感じさせないことへの努力だったと思う。
3DCGをがっつり使いつつも、できる限り2D感を全面に出していくという、ちょっと矛盾した感じ?
試合中、過去エピソード(コート外での描写)をくどいほど挿入してたのも、ひとつに<3DCG感のリセット>という狙いがあったんじゃないかな?
一部、試合の展開をダイジェストっぽく省略してまでも、過去エピソードにがっつり尺をとった演出。
あれには賛否両論あるだろうが、私は「あり」だと思った。
だってこの映画、制作側がホントに描きたかったのは試合の勝ち負けなんかじゃなく、<研磨の心情の揺れ⇒成長>だもん。
そこを描き切るには、どうしても過去エピソードの挿入が必要だっただろうよ。
そういう意味じゃ、なかばドキュメンタリータッチだった「SLAM DUNK」とは全然別モノの仕上がりだったね。
<画>に重きを置いた「 SLAM DUNK」
VS
<演出>に重きを置いた「ハイキュー‼」
総括すれば、そんな感じだろう。
Production I.G vs 東映アニメーションの球技対決、結果はドローということでOK?
いや、こうして制作会社を競わせといて、結局甘い汁を吸うのは集英社なんだよなぁ・・。