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「オタク第一世代」が選んだ、歴代アニメBEST10

最近、ちょっと話題になってることとして、庵野秀明が次は「シン宇宙戦艦ヤマト」をやるとやら?
・・なるほど。
庵野さんの懐古路線は徹底しとるな~。

2016年「シンゴジラ
2022年「シンウルトラマン
2023年「シン仮面ライダー

庵野さんは1960年生まれで、ちょうどこのての作品群を見て育った世代なんだろう。

じゃ、こういう世代論の話をひとつさせてもらうなら、私はこの庵野さんの世代を「オタク第一世代」と定義付けてるんです。
庵野さんがいたガイナックスのメンバーがそうだし、あとはスタジオぬえ河森正治さんも同じく1960年生まれなんだよね。
というか、他にも60年代生まれは細田守湯浅政明新房昭之幾原邦彦等錚々たるメンツが揃ってるわけで。
日本サッカーでいうところの「黄金世代(シドニー五輪世代)」をイメージしてもらえばいいと思う。

サッカー日本代表シドニー五輪組

で、このへんの世代ぐらいから日本サッカーの質がぐ~っと伸びていくわけなんだが、でもこの世代の上には、中山雅史とか名波浩とか井原正巳とか、初めて日本をワールドカップに導いてくれた英雄世代がド~ンといるわけさ。
これらの英雄たちをアニメ業界でたとえると、宮崎駿出崎統富野由悠季らを中心にした、1940年代生まれ組ということになるよね?

サッカー日本代表フランスワールドカップ組

でさ、ちょっと感覚的な話になっちゃうが、この1940年代生まれ組ってやつは、俗にいう「オタク」というのとは少し違うニュアンスなのよ。
このへんうまく言語化できないけど、とにかく庵野さんらの世代の感覚とはちょっと違う。
全共闘世代だし、もうちょっと政治的な熱さみたいなものがあるというか、哲学的思想が濃いというか・・。

・・で、こういう世代論の中で実は扱いが難しいのが押井守の存在であり、彼って1951年生まれなんだわ。
つまり、「英雄世代」と「黄金世代」のちょうど中間。
当然、彼はどっちだ?となるんだけど、彼は「飛び級」だったから英雄たちのチームでプレーを経験済みである一方、プレースタイルは黄金世代っぽいという認識も私にはあり、このへんが何とも捉え方は難しい。
とりあえず、彼だけは中田英寿みたいな特別枠と解釈してください。

宮崎駿(1941年生まれ)と庵野秀明(1960年生まれ)

さて、「オタク第一世代」に話を戻すと、やはり90年代オタク文化総本山、ガイナックスの存在を無視することはできんわな?
このガイナックスのことについては、この会社の初代社長、岡田斗司夫さんの話を聞くのが一番手っ取り早い。
この人は、何でもかんでもペラペラ喋ってくれるクチの軽い人であり、またオタキングという異名すらある人ゆえ、非常にありがたい最高の情報ソースである。

そういえば、この岡田さんも確か以前に、「『宇宙戦艦ヤマト』というのは僕たちの世代にとって特別」みたいなことを言ってたわ。

じゃ、ここで岡田さんが2017年に発表した、「歴代アニメベスト10」というのをご紹介しよう。

<岡田斗司夫が選んだ歴代アニメベスト10>


【10位】宇宙戦艦ヤマト(1974年)

【9位】ガンバの冒険(1975年)

【8位】母をたずねて三千里(1976年)

【7位】機動戦士ガンダム(1979年)

【6位】DAICONⅣ(1984年)

【5位】ビューティフルドリーマー(1984年)

【4位】天空の城ラピュタ(1986年)

【3位】モーレツ!オトナ帝国の逆襲(2001年)

【2位】魔法少女まどかマギカ(2011年)

【1位】ピンポン(2014年)/おそ松さん(2015年)

「宇宙戦艦ヤマト」

で、やっぱり「ヤマト」は堂々ベスト10入りしてるわけです。

しかし、このランキング、6位の「DAICONⅣ」とか完全に身内の贔屓だし、あと1位に「おそ松さん」が入ってるのも正直よく分からん(笑)。
まぁ、少なくとも2017年時点の岡田さんは、こういう「気分」だったということだろう。
というのも、これとはまた別の発言機会では

・機動戦士ガンダム(富野由悠季監督)
・未来少年コナン(宮崎駿監督)
・ガンバの冒険(出崎統監督)

「この3作品だけは、死んでも見ろ!」

と言ってたから。
・・「未来少年コナン」、上記ベスト10に入ってないじゃん(笑)。

でも私は基本、アニメ黎明期を支えてくれた宮崎駿世代をリスペクトするのと同様、オタクカルチャー黎明期を支えてくれた「オタク第一世代」のことも同じく尊敬しており、そこの中核メンバーである岡田さんに「見ろ!」と言われりゃ、そりゃやっぱり見ちゃうんですけどね・・。

「ガンバの冒険」(1975年)

上記作品群の中で、皆さんが意外とマークしてないのが「ガンバの冒険」だと思う。
で、やたら前置きが長くなってしまったけど、今回はこの作品のことを取り上げてみたいんですよ。

「ガンバの冒険」、監督は出崎統
となると当然、作画は杉野昭夫だと思うでしょ?
いや、違います。
これは出崎作品にしては珍しい、杉野抜き体制なのよ。
でも、代わりの原画メンバーが

・近藤喜文(もはやレジェンド、ジブリのNO1アニメーター)
・川尻善昭(この人もレジェンド、いまだ米国ではカリスマ扱い)
・大塚康生(皆さんご存じ、宮崎駿の師匠)etc

といった層の厚さで、ハッキリいって作画は歴代最高水準。
で、cvは主役のガンバが悟空役でお馴染み野沢雅子さんで、「野沢さんは75年の時点でもう主役張ってたのか~!」とビビったね。
声は今と全く変わってないし、やはり彼女のあの独特の声があるだけで物語のアドベンチャー感がグイグイきます。
そしてガンバのキャラ設定、あとストーリー展開、どっちにしても鳥山明的というか、尾田栄一郎的というか、かなり少年ジャンプっぽい。

友情!努力!勝利!


ひょっとして「ジャンプ三原則」って、「ガンバ」から来てるの?と思ってしまうほどだった。

7匹のネズミということで、多分出崎さん的には黒澤明「七人の侍」を意識してたと思うんだわ。
全26話のうち19話までが敵地に乗り込むまでのロードムービーで、残り7話で敵軍団との直接バトル。
でさ、その敵のノロイ(←巨大イタチ)というのがまたエゲツないのよ。

ノロイ

これ、児童向けアニメのはずなんだけど、こんなの見たら子供のトラウマになるって(笑)。
いやはや、巨大イタチ軍団vsネズミ軍団の闘いだから、そりゃもう圧倒的な戦力差であることは言うまでもない。
これはルフィがカイドウと最初に闘った時みたいな絶望感、いや、あれ以上かな?
だって少年ジャンプ的世界観なら

・「修行」をしたら強くなる
・「聖剣」のようなチートアイテムが存在する
・「覚醒」でチート化するパターンがある

というのがお約束でしょ。
でも「ガンバ」には、そういうのが一切なし。
これね、動物キャラだからまだ辛うじて見られるけど、とにかくネズミ軍団はバッサバッサ殺戮されていくし、こんなのを仮に人間キャラでやってたらもう確実にR18指定さ。
絶望の果てには味方の裏切りもあり、それでまたネズミたちがたくさん死に追いやられていく様を見せつけられる・・。

・・おいおい、「オタク第一世代」って、    こんなエゲツないもの見て育った人たちのことなのか?

どうやら、そうらしい。
で、「聖剣」も「覚醒」もないガンバたちはその後どうやって闘っていくかというと、もうね、「作戦を立てる」「皆が各々やるべき役割をこなす」、ただそれだけである。
出崎さんはそこをホント丁寧に描いてて、これまで張られてた伏線がぐ~っと回収されていく最終回クライマックスなんて、もうマジで鳥肌ですよ!
これ、未見の方は是非見てほしい。

「ガンバの冒険」最終回

多分庵野さんをはじめ「第一世代」の人たちは、こういうアニメを通ってきているわけで、こういうのを彼らの「基礎」と捉えるべきなんだろう。


そして、我々がそういう「基礎」をちゃんと押さえてるか否かにより、彼らが作る作品の見え方はまた変わってくるものなのさ。
だから、「70年代アニメに見る価値なし」とか寂しいことは言わず、できる限りで構わないので、見れる機会があれば見るべきだと思うぞ。

前述の岡田さんのベスト10なんて、なかなかいい指標でしょ?
ちゃんと「宇宙戦艦ヤマト」が入ってて、尚かつ庵野さんがそれをリメイクしようとしてるわけで。
70年代作品を発掘するには、今がいいタイミングかも。


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