記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

最近、中華系アニメがキテる!「時光代理人」

皆さんは、「中華風ファンタジー」というジャンルを知ってますか?
分かりやすくいえば、昨年ヒットしたアニメ「薬屋のひとりごと」みたいなやつ。
こういう系統は、今までも「十二国記」「彩雲国物語」「精霊の守り人」「後宮の烏」など傑作は数多くあった。
ちなみに今列挙した作品は、「後宮の烏」以外全てNHKアニメだね。
・・そう、「中華風ファンタジー」は、NHKにとって伝家の宝刀なんですよ。
ファンタジーとは少しテイストが異なるけど、「キングダム」もNHKだったかと。
なぜ、NHKがこのジャンルにばかり固執するのか、そのへんの意味は私にもよく分からないけど。
どちらかというと、かなりニッチなジャンルだと思うんだが・・。

あともうひとついうと、この「中華風ファンタジー」というのは<女子向けコンテンツ>ともいえるかもしれない。
古くは「ふしぎ遊戯」「暁のヨナ」など、確かこれって少女漫画原作だったよね。
つまり、こういうことだろう。

オンナノコは<中華>が好き!

・・いやね、これはオトコノコの「三国志が好き!」とは少し違うベクトルなんですよ。
「三国志」、「キングダム」、その系統をオトコノコが好むのは<戦記>であるからなのに対し、オンナノコたちが好むのはあくまで<ファンタジー>である。
このニュアンスの違い、お分かりいただけるだろうか?
・・何なら、周りにいる女子と「最近見てるTVドラマ」の話題でもしてみてほしい。
以下は、実際に私が某女史と以前にかわした会話の内容である。

自分「最近、見てるTVドラマとかある?」
女史「あ~、最近はもっぱら、サブスクで海外のやつかな」
自分「たとえばウォーキングデッドとか、ゲームオブスローンズとか、そっち系?」
女史「いや、そっちじゃなくて、扶揺とか、夢華録とか、陳情令とか、そっち系」
自分「・・あぁ~、そっち系ね。うんうん、なるほどなるほど」

正直いうと私は、女史が何を言ってるのか、さっぱり意味不明だった。
家に帰ってからその会話内容を思い出し、少し調べて見ると、それらが全て「中国ドラマ」だということが判明したんだ。
なるほど、やっぱオンナノコは中華が好きなのね。
しかもこれは<中華風>でなく、<ホンモノの中華>じゃないか・・。

うむ、しかし面白いというなら私も見てみようかな、と思ったんだが、ただよく見ると「全66話」とか表記されてるし、あぁ、これ無理やわ・・と。
で、ひとつ「陳情玲」というやつがアニメ化もされてるというので、そっちの方を見てみることにした。
それが、これね↓↓

「魔道祖師」(2018年)

制作/視美影業 監督/熊可

この中国制作のやつ、見たことある人いる?
その筋では、かなり評価の高いアニメらしいけど。
確かにその映像美たるや、凄まじいレベルだった。
あと、主人公がネクロマンサーという設定なんだが、我々がよく知る異世界系のネクロマンサーとはだいぶ趣きが異なってて、そういう独自のアジアンテイストが妙に新鮮だったね。

だけど本作を見た私の感想をひと言いわせていただくと

もう、しんどかったわ~!


いやホント、こんなしんどいの、久々である。
自分はある程度アニメを見慣れてるという自負もあったんだが、その慢心が吹っ飛ぶぐらい、私は「魔道祖師」に全くついていけなかった(一応、完走はしたんだけど・・)。
ついていけなかった理由は、以下の通りである。

①登場人物がみんな中国名であり、各キャラの名前を覚えるのに手間取った
②登場人物がみんな美形男子ばかりで、その見分けをつけるのに手間取った
③吹き替え版で見たんだが、声優の演技がキモチ悪かった
④どうやら原作がBL系らしく、その腐った描写がキモチ悪かった

①と②は、単に私の理解力のなさだけに、そこはよしとしよう。
でも③については、これどういったらいいのかなぁ、声優の皆さんの演技がどれも「乙女ゲーム」テイストなのよ。
④も含めて、つくづく女子向けコンテンツだと思ったわ~。

思うに、これは「中華ファンタジー」上級者向けのコンテンツである。
私のようなシロウトごときが、手を出すにはあまりにも早すぎたのかもしれない。
それこそ、童貞が峰不二子と対峙したようなもんである。
私も自身のスペック不足を自覚したので、また修行を積んで、粘膜が皮膚化した頃にまた再び「魔道祖師」にチャレンジしようと思った。
とりあえず、一時撤退・・。

という上記のような挫折を私は既に経験していたので、正直いうと中国制作アニメには少し苦手意識があるのよ。
でも今回は、「そんな私でも意外とイケた!」という中華系アニメをひとつご紹介してみたい。

「時光代理人」(2021年)

制作/澜映画 監督/李豪凌

これは、見たことある人多いかもしれない。
そこそこ話題作だもんね。
ただ↑↑のビジュアルイメージからは、相変わらずちょっと腐った匂いがするのは気のせいだろうか?
でも、ご安心ください。
これはBLではないです。
とハッキリ断言まではできないけど、まぁ許容範囲です。


あと、私はこれを日本語吹き替え版で見たので、日本語版では主人公2人が「トキ」「ヒカル」と非常に分かりやすい名前になっており、少なくとも「魔道祖師」の時のように「ウェイウーシエン」とか「ランワンジー」とか「ジングアンヤオ」とか、ややこしい名称になってないだけでも大助かり。

さて、作品の内容についてだが、これは<SF+サスペンス>です。

主人公が「写真の中にダイブできる」という異能力を有していて、この設定は確か「サクラダリセット」にも出てきたものなんだが、まぁそれと同様、タイムリープ系作品といえるだろう。
僕だけがいない街」にも近い。
かなり、おいしいジャンルである。
だけど、根っこはヒューマンドラマだね。
特に第1期は1話完結スタイルが多くて、その全てが「家族」をテーマにしたヒューマンドラマだった。

もうね、これが過剰なほどにウェットなんですよ。
正直言うとあまりにウェットすぎて、日本人の感覚としては「うざっ!」となるかもしれん。
でも、これは演出の問題というより、きっと中国という土壌がそういうものなんだろう。
現実に中国は「一人っ子政策」が2014年まで実施されてたわけで、1人しかいない子供に対して親の愛情の注ぎ方は尋常じゃないものがあるという。

あと、中国の土壌といえる「貧富の格差」。
カネ持ちは都会に住めて、貧乏人は田舎にしか住めないという分かりやすい階級構造があり、そのへんは昔の<貴族⇔農民>を見てるかのようである。
構造そのものとしては、「キングダム」の時代とあまり変わってないのかもしれない。
だからこそ、中国国民は「貴族」「王族」に憧れ、あそこまで過剰に王朝系<中華ファンタジー>を量産するのかもしれないよね?
そんなニーズがあること自体、そのバックボーンは「格差」からの現実逃避だろう。

いや、だからこそ、ちゃんとそこには「ウェットなドラマ」が成立してるのよ。
正直今の日本の土壌では、中国ほどウェットなヒューマンドラマを描くことはできない。
日本の格差って、どこか薄っぺらいからさ・・。
しかし、こういう中国の空気感を感じるだけでも、「時光代理人」は十分に見るべき価値のあるアニメだと思うぞ。

でね、実をいうと第2期からは、1期までの「1話完結」から一転し、突如「長編シリーズ」に移行するのよ。
こういう組み立て方、日本のアニメじゃなかなかない。
で、異能力者vs異能力者のバトル展開、つまり犯罪を企てる側vsそれを食い止める側の攻防を描く、クライムサスペンスに転じていく。
・・おぉ~っ、キタキタ~!

実をいうと私、<中華ファンタジー>ドラマはほとんど見ないけど、<中華サスペンス>ドラマは昔からめっちゃ見てるのよ。

上の作品群はマジで面白かったし、おそらく日本のサスペンスドラマの3倍は面白いのは間違いない。
・・でね、「時光代理人」2期を見てると、まさにプロットの構成が<中華サスペンス>ドラマの踏襲なんだよね。

①捜査により、容疑者浮かび上がる
②容疑者追跡
③逃げられる
④逆に人質をとられる
⑤救出に向かう
⑥クライマックスは肉弾バトル


このサスペンスドラマのテンプレパターンってやつを、「時光代理人」では忠実になぞっていた。
だから、私はアニメ見てるというよりは、ドラマ見てる感覚だったよ。

でも、これは断じてディスる意味でいってるわけではない。
なんていうかさ、中国ではドラマ(および映画)で培ってきた演出スキルがまんまアニメに応用されてる感じ?
明らかに根っこが繋がっている。
このへんが、日本とは違うな、と思った。
日本の場合、アニメ、ドラマ、映画、各々が文化土壌として全く別個という感じがしない?
特にアニメは、アニメの中だけで完結したドメスティック性を感じるんだわ。
でもこれって、ホントにいいことなのかな、と思って・・。

思えば、<中華系サスペンス>は昔から「猟奇」が大の得意分野であり、「時光代理人」の作劇はまさにその系譜。
ぶっちゃけると「あ、この演出、前にドラマで見た」というのが結構あったわ。
でもいいんですよ、それで。
綺麗に演出がハマってたし。

総じて、「時光代理人」の演出水準は高かったと思う。

私が思うに、数多くの日本アニメが今この水準に達していない。


・・だからさ、中国アニメを最初から<下>に見るのはやめようよ。
正直いうと、「映画」「ドラマ」の実写部門において、日本はとっくの昔に中/韓に大差をつけられて負けてるんだぞ?
「アニメ」という牙城はまだ大丈夫なものの、それでも油断できる状況にはないこと、この「時光代理人」見てても明らかである。

もしもエフェクトの切り口で攻めてこられたら、そのうち結構ヤバい状況になるかも?
2期のOPとか、正直ヤバかったもん↓↓

怖いなぁ、中国の14億というマンパワー
そして中国マネー


ヒトとカネ、これは日本アニメ界が苦しんでいる2大要素である。


いいなと思ったら応援しよう!