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令和の御時世、永井豪作品はOKなのか?アニメ「キューティーハニー」

今回は、永井豪先生について書きたいと思う。
まぁ、偉大な漫画家だよね。

・デビルマン
・デビルマンレディー
・マジンガーZ
・グレートマジンガー
・キューティーハニー
・けっこう仮面
・ハレンチ学園
・バイオレンスジャックetc

ギャグから伝奇、SFに至るまで作風のバリエーションが多彩で、特に
エロ・グロ・ナンセンス
三位一体の表現をするその作風は、漫画界に革命を起こしたといっていい。

・講談社漫画賞少年部門
・日本映画批評家対象アニメ部門ダイヤモンド大賞
・日本漫画家協会賞文部科学大臣賞
・フランス芸術文化勲章シュヴァリエetc

こうして非常にメジャーでありつつ、一方でカルト作家でもある。
極めて珍しいタイプの漫画家だと思う。

「デビルマン」
「キューティーハニー」

先生は、一体何が目的でここまで過剰な残酷さやエロを描くんだろう?
「表現の自由」と倫理規定、つまり検閲する体制側との闘い?
先生も1945年生まれで、確かに全共闘などの反権力の空気の中で育った人だと思う。
そう考えると、この作風の過激さも少しは理解できるかも・・。
とはいえ、それが先生にとって全盛期だった70年代当時ならばまだしも、令和のイマにおいては受け取る側としても少し戸惑うよね。
誤解のないように。
私は、過激な表現を嫌うタイプでは決してない。
たとえば、エロ表現。
ちなみに私がお気に入りの18禁アニメに、「ずっと好きだった」というのがある。

「ずっと好きだった」(2017年)原作・柚木N’

ただ消耗品として消費されていく18禁コンテンツの中で、この作品だけは定期的に再視聴するほど、自分の中では「不朽の名作」。
それはなぜか?
そこに、文学性があるからだよ。
それこそ、谷崎潤一郎渡辺淳一と同じ。
この作品のヒロインは、ずっと想いを寄せてる幼馴染みの男子といい関係を継続しつつも、なぜ一方で中年教師とただれた肉体関係を継続するのか?
そこはめっちゃ文学的世界観であり、エロ表現に必然性とに深みを与えてるんだ。
しかも、エロ描写には出崎統的演出まで施されてるというクオリティ・・。

で、永井先生に話を戻すと、そこにあるエロ表現には文学性も何もない
ただ、脈絡もなくオッパイとかお尻とかが出てくるばかり。
いや、その程度ならまだいい。
酷いところでは、「へんちんポコイダー」というのがあった。

「へんちんポコイダー」(1976年)

多分、これが永井先生なりのマーケティングなんだろう。

「エロにせよバイオレンスにせよ、人間の本能に訴求する表現は確実に売れる」


まぁ、確かにそうなんだけどさ・・。
そもそも永井先生は、そのデビューのキッカケからして少し下ネタなのよ。

①大学受験を控えた予備校生時代、下痢が3週間続いた。

②もうダメだ。これは大腸癌だ。

③せめて、自分が生きた証として何かを残そう。そうだ、漫画を描こう。

これが、永井豪先生が漫画家を志すことになったキッカケだそうだ。
ちなみに、下痢はしばらくして治ったらしい。
・・まぁ、結果オーライですね。

アニメ「デビルマン」(1972年)

上の画は、「デビルマン」主人公の不動明。
私がどうしても気になってしまうのは、髪型のギザギザした突起部分である。
あと、Tシャツの「A」のロゴ。
確か「サザエさん」のカツオは「K」のロゴを愛用してたし、不動明は「A」だけに、昔はイニシャルのロゴTシャツを着るルールでもあったのか?
なんていうかな~、こういうところに時代を感じてしまうよ。

私の解釈として、漫画のキャラデザには3つの時代区分があると思う。

①黎明期のカートゥーン的キャラデザ

②高度成長期の劇画的キャラデザ

③成熟期の現在に至るキャラデザ


①は手塚治虫先生などに代表されるところで、やや頭身は低くて、丸っこいデザインが特徴。
②は①より頭身が高く、ややリアルに寄せた画風となる。
大体のパターン、男子は眉毛が太いのが特徴。
そして③は、総じて「大友克洋以降」と称されることが多い。
もっと厳密にいうと、女子のキャラデザなら大友さんより江口寿史が開祖だと思うし、デッサンのニュアンスでは鳥山明が開祖かもしれん。
とにかく、80年代の時点でキャラデザはもう成熟したのよ。
問題は、①の60年代と②の70年代。
ぶっちゃけ、①はあまりにも古すぎるがゆえ、1周回って逆に「あり」なんだよね。
「レトロ」というのは「かわいい」という価値観。

①の代表的キャラデザ

で、①の「レトロ」と③の「現在」に挟まれ、妙に中途半端な扱いになってしまったのが②。
ファッションでもそうだと思うが、中途半端というのが結局は一番ダサい。

②の代表的キャラデザ

う~む、ダサい!
私は個人的に、②のことを「キャラデザの思春期」と名付けている。
こういうのは永井先生のみならず、本宮ひろ志先生、さらに車田正美先生、このへんのキャラデザは今の感覚だと結構キツいのよ。
聖闘士星矢」なんて、コスチュームはいまどきの異世界ファンタジーにも通じるキラキラした感じなのに、キャラの顔が70年代熱血をひきずってるからね。

このアンバランスさが、逆にタマらん・・という人もいる

で、前置きが長くなってしまったけど、今回私がお薦めをしたいアニメは、OVA「Re:キューティーハニー」である。

Re:キューティーハニー(2004年)

これ、歴代「キューティーハニー」の中でも一番好きなんだよね~。
制作はガイナックス。総監督は庵野秀明
監督は今石洋之摩砂雪などが務め、脚本は中島かずき(劇団☆新感線)が務めている。
かなりTRIGGER色の強い作風といっていい。
ギャグに極振りしてて、キャラデザはどちらかというとカートゥーン寄りにアレンジされている。

そう、敢えて①の「レトロ」に振ってるんだよね。
このへんを見て、「ガイナックス、センスいいな~」と感心してしまった。
本来の「キューティーハニー」が持つ、②の臭みを除去してるわけさ。
コアなファンは「この臭さこそがいいんじゃないか(怒)!」と不満だったに違いないが、まぁ、私みたいなライトファンへの配慮だと堪えてください。
あと、エロ要素や残酷要素もマイルドに。
何より、全3話と簡潔にまとめられてるのがいい。
作中、個人的にウケたのがモブの警官たちである。

このモブたちは特に何の役割も果たさないんだけど、とにかくかわいい。
主要キャラに抱きついていてもモブだから一切無視され、そのまま話が進行していくところもいい。
あと、ヒロイン・如月ハニー役を務める堀江由衣さんの声質がいい。
堀江さん天性というべき柔らかい声質は、柔和なハニーの個性によく合ってたと思う。
あと、主題歌、倖田來未が唄う曲がいい。
もともとこのアニメは、庵野監督の実写映画「キューティーハニー」と連動しており、確かリリースも映画公開とカブってたと思う。
つまり、このアニメキャラは佐藤江梨子市川実日子を模してるともいえるわけで、原作漫画というより庵野映画のアニメ化といったテイストかと。

この実写映画では市川さんが常にいい味出してて、後に「シンゴジラ」主要キャストとなったのね

思うに、ここまで好き勝手に「キューティーハニー」を解体しても永井先生から特にクレームがついた話がないんだから、永井先生はかなり器のデカい人なんだよ。
考えてみりゃ、「デビルマン」だって漫画とアニメとでは全くといっていいほどの別物だよな?
オールOKだなんて、これは永井先生がご存命だから許されることだろう。
もし先生が亡くなってしまえば、あとを託されたプロダクションの幹部たちはきっと保守的になるだろうし、アニメ化の話もハードルが上がって色々と難しくなるはずだ。
逆にいうと、今がチャンスなんだよ。

というわけで、私が個人的に永井作品の中でアニメ化を見たいのは、やはり「へんちんポコイダー」だ。
これは、まだ映像化されてないはず。
実写化はさすがに難しいと思うので、やはりアニメだろう。
倫理規定で無理?
・・そんなことはない。
だってこれ、講談社の児童雑誌に掲載されたやつだぞ?
姉妹編に「へんき~んタマイダー」というのがあるほどだ。
問題は誰がこれをやるかだが、さすがに宮崎駿押井守あたりは無理だろうし、新海誠細田守も無理だろうし、やるとすればTRIGGER(今石洋之)、もしくは今川奏宏あたりだろう。
あるいは大穴として、最近「デビルマン」を手掛けた湯浅政明というセンもあるか?

いっそ誰でもいいから、「ポコイダー」作ってくれないかな~。

最悪、「タマイダー」でもいいです。



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