アワードで「進撃」「鬼滅」「リコリコ」に競り勝った意外な作品
皆さんは、「Crunchyrollアニメアワード」って知ってる?
割と最近になってよく聞く名前のアニメ賞なんだが、Crunchyrollという米国のオンデマンドの会社が主催してるアワードらしいのよ。
じゃ、世界中のアニメが対象となるアワードかと思いきや、そうじゃなく、なぜか対象は日本のアニメ限定だという。
・・はぁ?
意味分からんないですけど。
なぜ、米国の法人が日本のアニメ賞の式典を主催してんの?
まぁ、いいんだけどさ。
これ、アワードといっても、誰か専門家の審査員が賞を選考する形じゃないみたいで、基本的にはネット投票で賞が決まるものらしい。
それも世界中から3400万票が集まった(第8回アワード数値)と報道されており、ならばこれ、ちょっとした総選挙じゃん?
で、そのアワードの表彰結果については、以下の通りである。
Crunchyrollアワード<アニメオブザイヤー>
【第1回】2017年開催
「ユーリ!!!on ICE」
【第2回】2018年開催
「メイドインアビス」
【第3回】2019年開催
「DEVILMAN crybaby」
【第4回】2020年開催
「鬼滅の刃」
【第5回】2021年開催
「呪術廻戦」
【第6回】2022年開催
「進撃の巨人」FAINALseason
【第7回】2023年開催
「サイバーパンク:エッジランナーズ」
【第8回】2024年開催
「呪術廻戦」2ndシーズン
うむ、これはこのアワードの特徴というべきか、残酷/グロ描写のある作品がやたらと選ばれている。
第1回の「ユーリ!!!on ICE」以外、全部そうじゃないか!
世界中のアニメファンの皆さん、やっぱり刺激的なのがお好きなのね・・。
で、個人的に「あれ?」と思ったのが第7回なんだよ。
オブザイヤーの「サイバーパンク:エッジランナーズ」というやつ、これ私見てないわ、と思ってさ。
聞けばこのアニメ、ネットフリックス制作のやつみたい。
どうりで、チェックから漏れてたわけか・・。
で、私も気になったもんで、この作品を見てみたんですわ。
・・あ、別にネットフリックスに入会したわけじゃありません。
相変わらずネットで動画検索して、中東のサイトで無料動画アップされてるのを見たんですけど(笑)。
で、見た感想を率直に言わせてもらうが、
何コレ?トンデモない大傑作じゃん!
ネットフリックス制作アニメというやつ、侮るべからず・・。
これは久々に震えましたね。
アニメオブザイヤーも、ダテではないな~と思った。
ちなみに、これの制作はTRIGGERで、監督は今石洋之さん。
今石監督といえば、「天元突破グレンラガン」「キルラキル」「プロメア」の実績があり、例によってハイテンションのカブいたアニメを想像しちゃうだろ?
でも「サイバーパンク:エッジランナーズ」は、ちょっとこれまでと路線が違うのよ。
なんていうかな、最もイメージ近いのは、ダニーボイル監督作品として有名な「トレインスポッティング」だね。
そのサイバーパンク版、というのが最も正しい表現だろう。
あまりにも従来と路線が違うのでどうしたんだ?と思ったら、どうやらこの企画、もともとは「サイバーパンク2077」という海外のゲームらしいね。
よって、原案・舞台設定考案などは外国人であり、プロデューサーの多くも外国人で占められてたようだ。
つまり、そのせいでTRIGGER色は半分ぐらいに薄められてしまった、ということだろう。
お気の毒に・・と言いたいのはやまやまだが、私は逆にこの「薄められた」のが功を奏したんじゃないか、と思ってるのよ。
だってこの作品、いつものTRIGGER独特のノリがない分、かなりカッコいいんだから。
いつもハイテンションの今石監督が、今回はめっちゃ硬質でCOOLな作風。
えっ?今石さんって、こういうこともできる人だったの?と驚いたほどである。
皆さんが抱く今石さんのイメージは
こういう感じでしょ(笑)。
いわゆる「天才・金田伊功の系譜」とされる筋の人であり、つまり売れセンというよりはマニアックなところで熱狂的に支持を受けてきたタイプかと。
なのに、今回は結構売れセンに近い表現をできてたと思う。
これ、あの時の感覚に似てるわ。
新海誠が「君の名は。」で作風を一変させて、鬱から脱却した時の感覚・・。
じゃ、作品の内容に触れていこう。
この作品は「攻殻」っぽい近未来が舞台で、義体化、電脳化もある世界なんですよ。
そして「攻殻」同様、これもドス黒いクライムサスペンスです。
主に非合法な活動をしてるギャングと、その街を取り仕切る企業との抗争がメイン。
主人公は、ギャングサイドの若者・デイビッド。
物語の序盤で彼の母親が亡くなり、その遺品の中から謎のインプラント(体に埋め込んで身体機能を拡張する装置)を見つけて、それを装着したところから話は大きく展開していく。
どうやら、このインプラントは軍が極秘開発していたヤバい物だったらしい。
性能はめちゃくちゃ凄いんだけど、使うほどに神経が摩耗し、だんだん自我を失い、狂人となり、最後は死んでしまうことが確約されてるシロモノ。
確か、「ガンダム鉄血のオルフェンズ」にも似たような設定があったよね。
「これ、絶対ハッピーエンドはないよな・・」と誰もが序盤で悟ってしまう物語の悲劇的構造。
デイビッドが助かる方法は唯一インプラントを肉体から除去することなんだが、彼は今まさに闇社会でどんどんのし上がってる真っ只中なんだよね。
身体機能の拡張は、今さらやめられない。
ならば、インプラント除去を最後までしない選択が誰の目にも明らかなわけで、ただ黙って、あとは彼の破滅を見守るしかないんですよ。
その流れは、見ててマジで辛い・・。
そして、デイビッドの恋人ルーシーはcv悠木碧。
悠木さんは、こういうクール系、アダルト系も案外イケるんだね?
めっちゃ良かったわ~。
相変わらず、彼女は泣かせの天才である。
あと、今石監督も泣かせの演出が巧い!
正直、サイバーパンクでここまで泣ける作品も珍しいと思う。
これ間違いなく、サイバーパンク史に残る傑作だよね。
今石さん、いっそこの路線を継続すればいいのに・・。
ちなみにだけど、Crunchyrollアワードでオブザイヤーの候補になった作品は本作以外にあと5つあったようで、それは以下の通りである。
「進撃の巨人」FAINALseason(Part2)
「鬼滅の刃」遊郭編
「リコリスリコイル」
「王様ランキング」
「SPY×FAMILY」
この年、めちゃくちゃ豊作だったのか・・。
よくもまぁ、これらを押しのけて「サイバーパンク:エッジランナーズ」がオブザイヤーをとれたもんだよな?
おそらく日本からの票より、外国からの票が集まったんじゃないだろうか。
それも、多分米国の票じゃない?
「攻殻」だって人気に火が点いたのは日本より米国の方が先だったし、あの国はこういうノリのアニメが大好物なんですよ。
いわれてみれば、画の仕様もいつものTRIGGERっぽさを極力抑えた、米国人好みの雰囲気になっている。
これからの時代、ある程度海外マーケットも視野に入れていくべきなんだろう。
まぁとにかく、「サイバーパンク:エッジランナーズ」をまだ未見の方は、是非一度ご覧になってみてください。