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「カリオストロの城」の元ネタになった東映アニメを知ってる?
今回は、東映アニメーションの前身、東映動画について少し書いてみたい。
まずここを語るには、「映画業界」ってものを知っとく必要がある。
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現時点、興行収入で東宝に大きく引き離されてるよね。
だけど昔は、そうでもなかったんだ。
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むしろ昔は、東映が業界NO.1 だったのよ。
チャンバラで黄金期を築いた東映
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東映以外では、黒澤明がブレイク
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しかし東映は業界NO.1 だった時代から、大映が黒澤明監督作「羅生門」でヴェネツィア国際映画祭グランプリを獲ったことをかなり意識してたっぽいんだよね。
ぶっちゃけ、当時の東映映画は仮に客が入ろうとも、そういう賞を獲る系のやつでは全然なかったから・・。
一説に、東映動画を立ち上げた大川博プロデューサー(東映社長)の狙いは<アニメで国際映画祭の賞を獲ること>だったかも?という見方もあるほどさ。
よって、東映動画初期のアニメって、妙に国際市場ウケしそうなやつばかりなんだよ。
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<クオリティ重視>、さらにディズニーと張り合える<日本(東洋)路線>でいく必要があったのかもなぁ・・。
多分、この時点の大川社長は、国内市場以上に国際市場の方を意識してたんじゃない?
事実、東映動画初期のアニメはいずれも国際映画祭に出品され、幾つか賞も獲っている。
ただ、こういう路線を「面白くない」という社内の声も多かったらしくて、テコ入れとして東映が招聘したのが、皮肉にも手塚治虫なんだね。
手塚治虫参加作品「西遊記」(1960年)
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手塚治虫参加作品「わんわん忠臣蔵」(1963年)
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う~む、よく考えたら1963年に虫プロは「鉄腕アトム」のTV放送をスタートしてるわけで、それとカブった時期に手塚先生が東映「わんわん忠臣蔵」に参加してるのも変な話なんだよなぁ・・。
一体どゆこと?
聞けば、この頃は東映/虫プロの二股をかけてたアニメーターも結構多かったらしく、業界全体がカオスだったんだろう(笑)。
・・あ、でもね、たとえば「わんわん忠臣蔵」、正直これは虫プロのアニメよりも全然クオリティ高くて、面白いですよ。
やっぱりこの時期、虫プロと東映とでは、そのチカラに圧倒的な差があったのでは?
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ところで、この東映アニメーションを象徴するロゴのこと。
これは皆さんも普段よく目にしてると思うんだけど、この猫が何者なのかをご存じですか?
というか、この猫こそが東映のエンタメ路線を完全に決定づけた、めっちゃ重要なキャラクターなんですよ。
「長靴をはいた猫」(1969年)
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おそらくこの作品をもって、ようやく東映も迷いが吹っ切れたんじゃないかな?
よし、エンタメでいこう、と。
はっきり言って、これ不朽の名作なんです。
あの「カリオストロの城」は、まんまこの映画のパクリで構成されてますからね(笑)
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というか、パクるも何も、この「長靴をはいた猫」には思いっきり宮崎駿が主力として参加してますから・・。
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宮崎さんはまだこの当時若手だが、とにかくこの頃から、めっちゃたくさんアイデア出す人だったみたいなのよ。
で、「あいつイイねぇ」ということになったのか、宮崎さんはこれの2年後に手掛ける「どうぶつ宝島」で、「アイデア構成」というワケ分からん肩書になってました。
というか、「アイデア構成」って役割、一体何なのよ(笑)。
「どうぶつ宝島」(1971年)
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はい、この作品、ぶっちゃけ宮崎駿成分100%です(笑)
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仮に「長靴をはいた猫」が「カリオストロの城」の原型だとするなら、この「どうぶつ宝島」は「未来少年コナン」「ナウシカ」「ラピュタ」、そっちのアドベンチャー系の原型という感じですね。
ヒロインがもう、めちゃくちゃイケてるんだわ。
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でね、「長靴をはいた猫」にせよ、また「どうぶつ宝島」にせよ、作画監督は日本アニメの神様こと、森康二さんなんですよ。
そう、これは<森康二×宮崎駿>という夢の競演であり、多分宮崎さん的にめちゃくちゃ勉強になったんじゃないかな?
日本アニメの神様/森康二
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この森さんをモデルにした「杉江さん」が出てくる作品が「SHIROBAKO」なんだけど、ほら、あれの作中で
「今の日本には、馬の走ってる姿をちゃんと脚を含めて描けるアニメーターはあまり多くない」
って話があったじゃん?
その稀少なアニメーターが「杉江さん」だったわけで、つまりそれは森さんのことよね?
でさ、そこをポイントにして「長靴をはいた猫」を是非見てほしいのよ。
白馬が駆けるシーンの長尺とか、ちょっと私、感動しちゃって・・。
私が思うに、宮崎駿の異様なまでの「画のコダワリ」って、多分森さん譲りなんじゃないかな、と。
宮崎さんは学生漫画家だったから画はもともと巧いんだけど、でもその作画スキルはあくまで我流じゃん?
その点、美大出身で絵画の学術的ノウハウがある森さんの作画は、絶対宮崎さん的に目からウロコだったと思うんだ。
特にレイアウトとか。
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ちなみにその後、森さんと宮崎さんは同じタイミングで東映を辞め(高畑勲も共に)、瑞鷹エンタープライズ(後の日本アニメーション)に移ったわけだが、ただこれが宮崎さん的にはよくとも、森さん的にはしんどかったかもしれないなぁ・・。
だって、主戦場がじっくり作れる映画から、スピード勝負のテレビに変わるんだから。
というのも、日本アニメの神様にも致命的な弱点があり、ぶっちゃけると
森さんは描くスピードが異様に遅かったらしい
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いや、それはノロマとかいう意味じゃなく、異様なほど画にコダワリがあるもんで、本人が納得しない限り、提出しようとしないんだってさ。
まぁ、確かにそれはテレビアニメ向きのスタンスじゃないかも。
で、そこから森さんの名は急速にフェイドアウトしていき、それとは対照的に宮崎駿はどんどん出世していくようになったんだが・・。
いや、だからこそ、そういう森さんのコダワリと宮崎さんのアイデアが融合した、「長靴をはいた猫」、「どうぶつ宝島」、この奇跡の邂逅というべき2大名作をしっかりと記憶に刻んでおくべきなんだよ。
そしてできることなら、お子さんに見せてあげてほしい。
なんせ、神様は「子ども向け」というスタンスを最後まで崩さなかったからね。
彼は、必ずといっていいほど、かわいい動物を作品の中に描く人だったのよ。
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なんか癒されるわ~
でね、この神様は92年に肝臓癌で亡くなったわけだが(享年67歳)、なぜかその翌93年、森康二監督作品として一本の短編映画がリリースされました。
というか、生涯で唯一の監督作品では?
タイトルは「おおかみと7ひきのこやぎ」。
よくよく話を聞くと、これを制作したのが91年だったらしく、その時点で森さんはもう末期癌、余命が幾ばくも無いことをご本人もよく分かってたそうだ。
だから「最後の仕事」として、生涯初めて監督作を作るという流れになったんだろう。
いや、百聞は一見にしかず、である。
とりあえずは、その本編を見ていただきましょうか。
ぶっちゃけ、これが森さんが最後に遺したかったものと考えた時、私はマジで涙が出てきましたけど・・↓↓
「おおかみと7ひきのこやぎ」(1993年)時間13分
なんという、優しい世界観。
たとえ子ヤギたちは狼に捕食されようとも、ちゃんとお母さんが助けてくれるんだね。
母は強し・・。
で、これが彼の拠点だった日本アニメーションの制作だったのはまだ分かるとして、なぜか共同制作がSTUDIO4℃となっている。
プロデューサーに、田中栄子さんの名前があるし。
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何でだろ?と思ったら、田中さんってジブリにくる前は日本アニメーションにいたらしく、80年代には森さんと一緒に仕事をしてたんだそうだ。
というか、田中さん、あんた一体何歳やねん(笑)?
でも、あれだわ。
わざわざSTUDIO4℃がこうして森さんの監督作品に協力するのって、きっと商売としては一銭にもならないものだろうに、それでも最後に、どうしても森さんと仕事をご一緒したかったんだろう。
なんだか森さんの人望が伺える話だわ~。
でさ、彼は遺作であっても、全く「自分語り」をしない人なんだね?
そこには優しさと家族愛があるだけで、「僕自身のことはどうでもいいんですよ」的な朴訥としたスタンス。
これ、まさに「杉江さん」まんまじゃん?
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田中さんと森さんの関係って、おそらく「SHIROBAKO」宮森と杉江さんみたいな関係だったんだろう。
実際、田中さんも宮森と同じ制作進行が仕事だったみたいだし・・。
じゃ、ここで森さんの素晴らしい仕事の数々を皆さんにも少しご覧いただきましょうか↓↓
もうね、これ見て最後の方は涙が出てきた・・。
おそらく森さんって、動物の擬人化に絞れば、ウォルトディズニーを完全に凌駕してると思うぞ。
いや、動物だけでなく、人物の作画においても彼の能力は突出している。
最も有名なところは、「太陽の王子ホルスの大冒険」のヒロイン・ヒルダのキャラデザ。
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これ、当時若手でイケイケだった宮崎駿がキャラデザを狙ってたんですわ。
宮崎駿のヒルダ案
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彼は色んなパターンのヒルダ案を作って監督だった高畑勲に出したんだが、なぜか高畑さんはこれに納得しない。
で、結局高畑さんが「これだ!」と言って決めたのが森案だったわけね。
森康二のヒルダ案
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さすがに宮崎さんもこれを見て、完敗を認めたそうだ。
いやホント、あの宮崎駿をもってしても絶対に勝てないほどの天才が、あの時代にいたわけですよ!
そこを皆さんに分かってほしい。
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そして、これらの東映初期作品群、森さんの画に触れられるという意味だけでも、その視聴には十分価値があることを皆さんに分かってほしいなぁ。
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