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禁断の兄妹愛を描く「魔法科高校の劣等生」
主人公最強系のアニメは数多くあれど、その中でも別格とされている作品が「魔法科高校の劣等生」である。
書籍のシリーズ累計発行部数が2500万部を突破してるという。
アニメも1期、2期、劇場版、スピンオフ、前日譚と色々ある。
この作品は兄の司波達也と妹の深雪という魔法師兄妹が主人公なんだけど、達也役をイケメンボイス中村悠一、深雪役を美少女ボイス早見沙織が演じており、もう全く隙がない完璧なキャスティングである。
理想の兄と理想の妹、もはやこのふたりを見てるだけで満足してしまうほどさ。
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物語の舞台は、魔法が存在するという西暦2095年の架空の日本。
強大な魔力を持つ10のファミリーが、十師族として権勢を誇ってるという世界観らしい。
司波兄妹は十師族筆頭・四葉家の出身でめっちゃハイスペックなんだけど、兄の方は少しイビツな資質ゆえ、劣等クラスの2科生として国立魔法科高校に入学したわけね。
妹の方は、入試首席で優等クラスの1科生として入学。
しかし、この高校は伝統的に階級意識が強く、1科生が2科生を見下す風潮がある。
よって達也が1科生に見下されるところから話がスタートするんだが、彼はハイスペックゆえ、ことごとくそれを跳ね返していく。
これが、見てて痛快なんだよね。
今まで達也を見下してた1科生が、2科の達也に手も足も出ずに圧倒されていくんだから。
スカッとする。
正直この作品は、1科生が達也を見下す⇒達也に返り討ちにされる、というエピソード満載の入学編が一番楽しい。
また、達也のクラスメイトのレオやエリカ、美月や幹彦も1科生に全くヒケをとらないポテンシャルというのもいいね。
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この作品のユニークなところは、魔法をファンタジーとして扱わずに、物理科学として扱ってるところさ。
これほど魔法メカニズムに科学的設定を付与した作品も他にないだろうし、ここまでくるとファンタジーでなくSFの範疇に入ると思う。
ESP研究から魔法式を体系化したテクノロジーが現代魔法で、それとは別に古来から存在する陰陽道系が古式魔法。
こういう設定は「とある魔術の禁書目録」に近いものがあるかな。
で、このての物語ではお馴染みのパターンだけど、魔法師の家系というのはどうも倫理観がヤバくて、人権を無視した人体実験をすることには何の躊躇もない。
こういうの、TYPE-MOON作品なんかでお馴染みだよね。
「Fate」の間桐家なんがいい例だが、あそこなんて養子の桜に幼い頃から蟲を植え付けてたわけで、そういった虐待も魔術開発を目的とした行為として普通に正当化されている。
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「魔法科」の四葉家もそれに近いものがあるようで、一般的な良識など通用しない家系のようだ。
兄妹の13歳時点を描いた「追憶編」では、達也にはなぜ感情の起伏がないのかという謎が解明されていた。
どうやら、彼は幼少の頃に「人工魔法演算領域」というのを移植実験されてるらしく、その移植領域確保の為に既存の感情領域をほとんど切除された、というのが真相らしいのね。
唯一残せた既存感情領域が妹への愛情であり、それ以外の感情を現在の彼は持っていない。
共感性などの感情が欠如した人のことを医学的にサイコパスというらしいが、おそらく達也はそのサイコパスに該当するだろう。
といっても、別に猟奇的なわけじゃない。
猟奇的になるだけの情動すら持ち合わせていないんだから。
もし深雪の存在がなければ、この人は人ではなく、魔法演算の器にすぎないAIのようなものになっていただろう・・。
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原作のネタバレをすれば、やがて達也と深雪は婚約するという流れになる。
えっ?兄妹で結婚はできんやろ?とは思うが、このへんは深雪の出自が色々とワケアリで、結論をいうと結婚できなくもないのよ。
ただ、出来る出来ないと、するしないは別物だよね。
今まで兄妹として過ごしてきたふたりが、あるタイミングから夫婦となるというのはいささか抵抗がある。
多分だけど、ここをアニメ化するのは制作スタッフも抵抗があるんじゃないだろうか?
その論拠は、「うさぎドロップ」である。
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「うさぎドロップ」はノイタミナでも好評を博した人気作で、松山ケンイチ&芦田愛菜で実写映画化までされたよね。
これは、祖父の隠し子を引き取ることになった独身サラリーマンが主人公のハートウォーミングなホームドラマである。
ちょっと泣けるやつ。
かなりヒットしたから2期の制作もあるかと思いきや、10年以上経過してもいまだないところを見るに、多分もうないんだと思う。
おそらくその理由は、物語の展開に問題があるんだ。
壮大にネタバレをすると、主人公に引き取られた祖父の隠し子はやがて成長し、主人公と結婚するというオチなのね。
原作がそうなってるんだからそれはそれでしようがないとして、人によってはこの展開に嫌悪感を覚えるだろう。
これは疑似親子の親子愛を描いた物語なのに、何でオチがラブストーリーになるんだよ?と。
まあ、確かに。
ノイタミナもそのへんを考慮した結果、2期制作を断念したんじゃないだろうか。
法律がどうとか血縁がどうとかいう問題をクリアしていたとしても、やっぱ疑似親子だった関係が夫婦になるのは印象としてインモラルでしょ、と。
これ、「魔法科」でも同じことがいえない?
多分、「魔法科」制作スタッフは「どうする?」と悩んでると思うなぁ。
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まぁ、私の個人的見解をいわせてもらうなら、「魔法科」は今後もアニメ化を継続すべきだと思う。
「うさぎドロップ」はアットホームな親子愛の世界観を壊したくなくて2期制作を断念したんだろうが、「魔法科」は別にアットホームな兄妹愛が売りじゃないからね。
むしろ兄に恋する妹の可愛さが売りであり、もはやこれはラブコメの一種として、ふたりが結ばれるところまでやっちゃっていいんじゃないだろうか。
多分、その流れに嫌悪感を示す視聴者は少ないと思うよ。
それよりも私が心配なのは、情動のほとんどを持っていないという達也に
性欲があるのか?ということの方である。
多分、ないよね。
必然として、勃たないよね。
そこは、魔法で何とかするんだろうか?
深雪が凍結魔法とか使いそうだね・・。
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