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サザエさん一家は、忍者の末裔であるという裏設定(笑)

日本が誇る国民的アニメ「サザエさん」。
これを知らない人はほとんどいないと思うけど、その一方で

「サザエさん」を作っている、制作会社はどこなのか?


という問いには答えられる人は逆に少ないんじゃないだろうか?

その答えは、「エイケン」である。

エイケン、あまり聞かない制作会社だよね。
でも、「サザエさん」を作ってるだけあって老舗である。
そもそも、この作品はいつから放送してるか知ってる?

1969年からだよ。


「サザエさん」は、半世紀以上も昔から放送してるということ。
その頃から、一貫してエイケンが手掛けているらしい。

日本初のテレビアニメが「鉄腕アトム」だということは、皆さんも知ってるでしょ?
1963年のことである。
しかし同年、虫プロとは別の会社が

「日本初の深夜アニメ」


というのを作っていたことは、割と皆さん知らないだろう。
それを作ったのがエイケンで、その「深夜アニメ」というやつがこれです↓↓

「仙人部落」(1963年)

なるほど、確かに深夜っぽい・・。
「黄桜」の河童でお馴染み、小島功先生のキャラデザだね。

セクシーやなぁ・・。
これに興味あるというエロい人は、YouTubeに無料動画がアーカイブされてますので、検索してみてください。
私はエロくない人ゆえ、検索しませんけどね。

さて、この「仙人部落」の放送に遅れること1ヶ月、続けてエイケンが公開したアニメがこれである↓↓

「鉄人28号」(1963年)

こっちの方が有名だね。
実際、当時は結構人気あったそうだ。

しかし、よく考えたら凄い話である。
テレビアニメ開幕の1963年に、アンドロイド(鉄腕アトム)、巨大ロボット(鉄人28号)、エロいオネーチャン(仙人部落)という、何ともオタク心をくすぐる3大アイテムが早くも出揃っていたんだから。
・・うむ、1963年を日本のオタク元年と制定しましょう。
というか、その3大アイテムのうちの2つを占めていたエイケンってさ、地味に凄くね?

ちなみに、このエイケンって名前は創業者・村田英憲さんの英憲からきてるらしく、自分の名前を社名にするとか、めっちゃナルシストだと思うが。
だけど、この会社の凄さが分かったでしょ?

ところで、現在エイケンが「サザエさん」以外に何を手掛けてるかというと、これですわ↓↓

「ぼのぼの」(2016年~)

案外、ほのぼの路線を攻めてるってこと。

でもね、今回私が皆さんにご紹介したいと思ってるのは、そういうほのぼのしたエイケンじゃなく、もっとエッジがきいたエイケンの方である。

そもそも、皆さんは「サザエさん」が放送開始される前、その枠(日曜18:30)で放送されていたアニメを知ってますか?


実は、そのアニメを作っていたのもエイケンなんです。
正解は、これ↓↓

「忍風カムイ外伝」(1969年)

はい、言わずと知れた白土三平先生の名作ですね。
・・ただ、よく考えてみてくれ。
これ、めっちゃ人が死ぬやつじゃん?
しかも皆、かなり凄惨な殺され方をする。
というか、人が死なない回はゼロだと思うし。
そんな作品が、日曜18:30の団欒のひと時のお茶の間にオンエアされるのはOKなのか?

・・いいわけないじゃん(笑)

で、「カムイ外伝」は順当に半年で打ち切られることになったわけだけど、というかスポンサーの東芝さん、まず放送を始める前に気付けって(笑)。

いや、これでも原作に比べればマイルドにはなってるんだが、元々プロットが残酷なので、どうしてもそこは消せないのよ。
ストーリーは、抜け忍の主人公・カムイが忍の掟で粛清対象となり、次々と刺客に襲われていく、ただそれだけのシンプルな構造なんだよね。
毎回、敵が来る⇒カムイが敵を撃退(主に殺す)という1話完結スタイルで、どうやらカムイは業界屈指の天才忍者という設定らしく、まぁとにかくデキる奴なんですわ。
そのへんはいまどきの異世界ファンタジーにも通じる、俺Tueee系の主人公である。

これがカムイの必殺技・飯綱落とし

でもね、カムイは忍といえど冷徹な人間というわけじゃなく、むしろ「無駄な殺生は避けたい」とさえ考えている男さ。
で、ある日、刺客の姉弟忍者2人組に襲われ、殺すのは不憫だからと弟の方を倒す時に手加減して、必殺技「飯綱落とし」80%手加減バージョンで気絶させたわけね。
で、姉の方も身動きできないようにして、帰り際、カムイは
弟は殺してはいない。これからは姉弟2人で達者に暮らせよ
みたいなこと言って、かっこよく去っていくのよ。
・・あぁ、今回はひょっとしてイイ話系?と思ってたら、やっぱ白土先生、それほど甘くはありません。
なぜなら、「飯綱落とし」80%バージョン食らった弟は

馬鹿になってしまったから・・

馬鹿になった弟

カムイよ、たかだか80%程度の手加減では、並の忍者だとこうなってしまうことを知らなかったのか?
・・多分、知らなかったんだろう。
次回から情けをかけて手加減する時は、せめて50%ぐらいでよろしく。
結局、姉の方は馬鹿の世話をする為にめちゃくちゃ苦労する始末・・。
それでも非情な忍の頭領は、姉に単独でのカムイ暗殺任務続行を命じ、

姉「私がカムイに殺された場合、馬鹿な弟はどうなるんですか?」
頭領「馬鹿は馬鹿なりに、ひとりで生きていくものだ」
弟「うひょひょひょひょ~」


というシュールなやり取りを経て、結局のところ姉は案の定、任務には失敗して死にます。

任務に失敗した姉

そして、馬鹿な弟が姉の死体を発見するわけなんだが、この弟は馬鹿ゆえ、その死体が自分の姉だと認識できないんだよね・・。

変わり果てた姉を見て「この人、誰?うひょ~」とか言ってる馬鹿

なんつーか、めちゃくちゃ後味悪いでしょ?
「カムイ外伝」は、大体こんなのばっかりなんですよ。
・・いや、これを「仙人部落」みたく深夜枠でやってれば逆に大成功したのかもしれんが、でも日曜18:30にこれはキツすぎるって!

とにかく、カムイは「殺したくない」と言う割には容赦なく殺していくし、その奥義の数々はもはや人間の域を超えてるといっていい。
精神操作系の忍術というものまで操り、憑依のようなことまで出来ちゃうんだから。
こんな忍術のあらゆる奥義を見た上で「カムイ外伝」後番組「サザエさん」を見てると、

磯野一家の<不老不死>は一種の忍術で、彼らは忍の末裔である


という裏設定に誰でも気付いちゃうよね・・。

という冗談はさておき、そもそもエイケン、何でこんなエゲツないアニメを作ってしまったのかというと、実はその前年に作ってたのがこれなのさ↓↓

「サスケ」(1968年)

うむ、これも白土先生の名作アニメ化である。
「カムイ外伝」が徹底したハードボイルド路線だとしたら、この「サスケ」は忍者初心者向け路線といったところかな。
ナレーションが、いちいち今使った忍術の解説をしてくれたりするのよ。
だから、見てて非常に勉強になる。

NARUTO」の原点は、この「サスケ」にあるだろうね。
たとえば、「NARUTO」ではお馴染みの極端な前傾姿勢で走る<忍者走り>とか、多分「サスケ」からの引用だろう。

忍者走り

あと、忍者系作品ではお馴染みの「変わり身の術」↓↓

大体、使われるのは丸太なんですわ。
それは「サスケ」でも同様だった。
問題は、あの丸太をどのように隠し持ってたか?なんだが、残念なことに「サスケ」のナレーションもそこまでの解説はしてくれていない。
まぁ私の推測では、アニメだと死角になってるものの、忍者というのは常に丸太を携帯してるのが基本、ということなんじゃないか?

<意外と知られていない、忍者の基本戦闘スタイル>

いや、こういうところに気付かせてくれる「サスケ」は素晴らしいアニメだよ。

あと、60年代アニメだというのに「サスケ」も「カムイ外伝」も意外なほど作画がいいのには驚く。
これらを未見の方は、YouTubeで「サスケ1968」「カムイ外伝1969」と検索をすれば、どっちも全話無料動画を見れるので是非お試しください。

いやね、澱んだ色彩の出し方であるとか、これがホントめちゃくちゃいいんですよ。

あと、これらは3コマ打ちで作画枚数が決して多くはない作品だと思うんだけど、戦闘シーンなどそのメリハリの付け方がなかなか巧くて、逆にいうと<リミテッドアニメゆえのカッコよさ>みたいなものがあるんだよなぁ。

ある意味、日本で最も早くリミテッドアニメのカッコよさを示したのは、東映でも虫プロでもなく、実はエイケンだったという可能性もあるんだ。


奇しくも、これの約10年前に東映は「少年猿飛佐助」という忍者系の映画を制作してたわけで、これはフルアニメだから非常に美麗で完成度が高いものの、カッコいいかといわれりゃ、少し違うのかと。

「少年猿飛佐助」

「佐助」の画のクオリティに比べりゃ「サスケ」「カムイ外伝」は劣るんだが、でもその粗さも含めて、カッコよさでは明らかに後者の方が上回ってるんだから、アニメってつくづく不思議なコンテンツだよねぇ。

で、「カムイ外伝」打ち切りになって大半のスタッフは「サザエさん」制作に回ったらしいんだが、中には「サザエさん」の平穏な世界観にどうしても馴染めず、悩んだ末に辞めていったスタッフも実際いたらしいよ。
これ、多分あれだよな。
ベトナム戦争から帰還して平穏な生活に戻れたのに、どうしてもその平和な社会には馴染めなかった「ランボー」ってところだね?

シルベスター・スタローン主演「ランボー」

・・そうか。
思えば「サスケ」も「カムイ外伝」も「サザエさん」も、そのベトナム戦争の真っ只中に放送されてたんだっけ。
そういう背景を考えると、これらアニメも結構重いよなぁ・・。

「サザエさん」なんて、いかにも虫も殺さないような顔をしておきながら、実はそのDNAががっつりと血塗られてるんだから。
なんせ、前身だった番組がこれですからね↓↓

皆さん、くれぐれも「サザエさん」をナメないでください。



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