「不滅のあなたへ」の読解には、やっぱ「エヴァ」の理解が必要?
今、NHKで「チ。-地球の運動について-」というのをやってるでしょ。
これ見て思ったんだけど、こういうドラマの重さ、NHKアニメにおける一貫したコンセプトなの?
「進撃の巨人」、「キングダム」、「ヴィンランドサガ」、最近では「烏は主を選ばない」、やたらと重いのばかりが目につくようになってきた。
権力闘争、陰謀、弾圧など。
ここにきてNHKは、我々に何かを訴えようとしてるんだろうか?
「国」に最も近いところにいる局だけに、何か気になってさ・・。
で、今回はそういうNHK「重いアニメ」シリーズの中でも特に印象に残った作品として、「不滅のあなたへ」を取り上げてみたいと思う。
ていうかさ、これ、2期の最終回で「3期制作決定」とアナウンスされてたのに、その後まるで音沙汰なし。
はよ作ってくれや!
楽しみにしてるんだから。
で、これの原作は週刊少年マガジンの連載漫画だという。
ビックリした。
今の少年マガジンって、こんな凄いのをやってるのか?
てっきり月刊アフタヌーンとか、そっち系だとばかり・・。
さらに驚いたのは、これの原作者・大今良時先生が女性で、しかもあの名作「聲の形」を描いた人らしいじゃないか。
ちょっと待て。
「聲の形」と「不滅のあなたへ」じゃ、どうしても作風が繋がらないんだが?
・・あぁ、そういえば「不滅のあなたへ」にも喋れない感じのオンナノコが出てきてたっけ。
エコという「土器人」の娘。
エコは別に聾啞者というわけでなく、ただ「土器人」ってのは言葉じゃなく土器を介して意思伝達をする部族らしく、部族はみんな土器を持ち歩いてるらしい。
・・土器って(笑)。
この設定を知った時、「これ考えた作者は天才!」と思ったね。
ファンタジーとしての発想がナナメ上いってる独特の作家性!
只者じゃないですよ、この大今先生って。
なるほど、見るからに天才のオーラがある先生だね。
これは御本人には失礼にあたるだろうが、雰囲気がややエコに近い(笑)。
まさか、先生は土器を持ち歩いてないよね?
どっちかというとリア充タイプでなく孤高系っぽく見えるし、きっと常人には理解の及ばない御自身のワールドを持ってる人だと思う。
だって、「不滅のあなたへ」って彼女が高校生の時に考案した物語らしいじゃん?
こんな世界観を創造できる女子高生なんて、まともにキャッキャウフフ♡の青春を送ってるわけがない。
聞けば、やはり一時期不登校だったらしい。
思うに、彼女はそのへんのケータイばっかイジってるJKとは全く別のものが見えてたに違いない。
スマホでSNSに繋がる暇があるなら、むしろ土器で「何か」と繋がりたいと考えちゃうタイプさ(笑)。
この先生、まだ若いけど確実にホンモノの天才だと思うので、講談社は絶対に彼女を変な風に(たとえば、少年ジャンプっぽいベクトルに)イジらないでね。
で、大今先生の作家性についてだが、彼女の原点とは小学生の頃から夢中になってた漫画、「3×3EYES」らしい。
この漫画は、昔ヤンマガで連載されてた伝奇系アクション作品である。
アニメとしては、OVAが7巻ほど出ている。
この作品も「不滅のあなたへ」同様、主人公が不老不死なんですわ。
妖怪と「融合」したことによって不老不死になった系の物語で、こういうのに夢中になる小学生女子って正直どうかと思う。
先生は89年生まれだから小学時代は90年代後半なんだろうし、そのあたりの小学生女子は「セーラームーン」か「CCさくら」と大体相場が決まってるというのに、まさか「3×3EYES」とはなぁ・・。
ちなみに、これのOVAは林原めぐみが中国訛りのヒロインをやっており、これが結構イイですけど。
多分、この作品の不老不死の着想が「不滅のあなたへ」の核になってるんだろう。
ただ、「3×3EYES」がコッテコテの「月刊ムー」的オカルトなのに対して、大今先生の作った世界観はもう少し洗練されてるんだよ。
まず、
初登場時の主人公が球という時点で超イケてる!
この球の性質は「刺激を与えたものをコピーする」というものであり、このスタート形態の球から何年もかけて石⇒苔⇒狼と姿を変え、やがては人間の少年の姿へと至る。
一種の「記憶装置」として「観察者」に創造されたっぽい。
この「観察者」が一体何者なのかはよく分からないし、そもそも主人公に「記憶」させることの目的もハッキリしない。
多分だが、かなり「創造主」に近い立ち位置だと思う。
この世界を創った系のやつ。
私が想像するに、「観察者」がやりたいことは地球そのものの「生殖」じゃないの?
主人公・フシ=地球の遺伝子(DNA)
命あるものは動物でも植物でも生殖という形をもって記憶/情報を引き継いでいくものだけど、地球そのものは活動限界があるくせに、なぜか生殖機能を持たない。
よって、主人公・フシのような大容量のメモリー装置が必要なのでは?
たとえ地球が滅んでも、太陽系が滅んでも、宇宙が滅んでも、次の代でフシのメモリーから世界をまた再現すればいいという、そういう形の生殖。
ただ、頑張って記憶/情報を集積するフシから、それらメモリーを奪い取っていく、謎の敵勢力が存在している。
それがノッカーだ。
こいつも核になってるのは球であり、正直いうと、モトは球だったフシとの類似性を感じさせるものがある・・。
で、当初は何の為にフシを襲うのかもよく分からなかったんだけど、2期になってようやく、その正体は「ファイ(我々が持つ魂/幽体)」だということが判明。
・・ん?どゆこと?
<フシ=器> 役割は集積すること
<ノッカー=魂> 役割は解放すること
詳しいところは分からんにせよ、とりあえず相反する立場というのは間違いなさそうだ。
だからこの物語は基本、フシvsノッカーの戦いが主軸といっていいだろう。
ただ、ノッカーの言い分で気になるところが幾つかあるんだよね。
2期第8話、初めてノッカーと筆談で意思疎通ができた回、あの時にノッカーはフシに「お前たちの目的は何だ?」と聞かれ、「みんなを助ける」と答えている。
さらに続けて、こう言った。
「あなたを作った黒い人(観察者)は、仲間(魂)を閉じ込めている(人間の体の中に)」
・・なるほど。
確かに、人間には魂が宿っている。
それが「観察者(創造主?)」の仕業であり、本来人間と魂は別個の生命体である、という意味か?
つまり、
猿(?)+ノッカー(魂)=人間
というロジックなのか?
ひょっとして、ノッカーとはエデンの園における禁断の果実、「知恵の実」だったんだろうか。
ならば観察者は、アダム&イヴにそれを食べるよう仕向けた「蛇(悪魔)」なのか?
そのへんは分からない。
ただ、単純にノッカー=悪、観察者=善、とは言い切れなくなったと思う。
といっても、ノッカーのいう「解放」はすなわち人類虐殺でもあるわけで、やっぱりそれを許すわけにもいかんのだが・・。
多分、このへんの妙なややこしいロジックは、やっぱ「エヴァンゲリオン」からきてるんじゃないかなぁ?
「3×3EYES」好きの大今先生が、そこを通ってないわけがないんだし。
確か、「エヴァ」旧作では
・アダム=生命の実をもつ生命体
・リリス=知恵の実をもつ生命体⇒人類へ
だったよね?
この<アダム⇔リリス>の関係そのまんまというわけではないにせよ、大今先生は<観察者⇔ノッカー>の関係をそれに近いものとして設定してるのではないだろうか?
「エヴァ」における、理由もよく分からないまま使徒(アダム)に繰り返し攻撃されるイメージ、大今先生はあれを再現したかったんだと思う。
ならば、ひょっとして「観察者」=碇ゲンドウ?
あいつ、まだ核心的な部分を何か隠してるよね。
まるでフシとノッカーをぶつけること自体に目的があるように見えるし・・。
それこそ、「サードインパクト」的な真の狙いがあるのかも?
そもそも、cv津田健次郎という時点で「普通にいい人」であるはずがないんだ。
確か「エヴァ」では、アダムもリリスも善や悪で語れるものじゃなかったと思うし、多分「不滅のあなたへ」の構造もまた、突き詰めればそういうことになるんだろうね。
・・私は「不滅のあなたへ」原作を読んでないから、これらも全てが想像でしかないんだが、いずれ3期でこのへんが見えてくることを期待しよう。
次は現代編になるようだ。
楽しみである。
あと思うんだけど、「不滅のあなたへ」2期の影響力としては、やっぱ日本国内の土器の売上が圧倒的に伸びたと思うんだ。
ぶっちゃけ、私だって欲しくなったよ。
Amazonとかで売ってるんですかね?